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3月21日

その頃、軀はといえば自室の玉座に腰掛け、ガックリと項垂れ溜め息を漏らしていた。

「一週間、経ってしまった…」

今日は3月21日。一週間前といえば3月14日、つまりホワイトデーだった。

今年は、直属達に義理チョコをやるついでに黄泉にもチョコをやった。義理よりちょっといいやつを。なのに黄泉ときたらホワイトデーを見事にスルーした。

その日は丁度癌陀羅で会議があった。軀が会議室に向かって歩いていると、向こうから黄泉が歩いて来た。いつもならこういう時、黄泉の方から声をかけてくる。すれ違い様に「久しぶりだな」などと言いつつ、彼女の頭をグリグリ撫でたりクリアファイルで軽くポンと叩いたりなどという、不躾な挨拶をしてくるのが常である。ところが先週に限っては、黄泉は携帯で誰かと話し中で、軀には一瞥もくれず彼女の脇をすり抜けて足早に去ってしまった。

すれ違いついでに、「これバレンタインのお礼」などとプレゼントを渡されるのを、期待していなかったといえば嘘になるが、そこまで求めていた訳でもない。しかし、まさか何の一言も無しに無視されてしまうとは。

落胆、怒り、悲しみ……こんな惨めな気分になるのはいつ以来か?多分痴皇の城を追い出された時以来だろう。

たかが飴一つ貰えなかったくらいで此処まで凹む自分がなさけなくもある。

あの時黄泉は電話中であったのだし、単に忙しくて彼女に気づかなかっただけなのだろう、きっとそうだと彼女も思いたかった。が、そうは思えない事情もあった。

この一週間、黄泉からは何の音沙汰もない。電話も無ければメールもない。まあ普段から電話もメールもする程の仲ではないのだが。次に会える機会、つまり来月の定例会議まではあと三週間以上あった。

どうしても気になるならば此方から連絡を取ればよいのだが、事情が事情だけに気安く連絡出来ない。それに催促しているみたいだし。

「あああやっぱり嫌われたのかなああ!」

軀は頭を抱え、玉座の上をゴロゴロ転げ回った。
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