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俺が上だ。

軀の奴が遊びに付き合って欲しそうにしていたので、付き合ってやった。

"どっちが指を上に乗せるか選手権"

だそうだ。

軀が俺の指の上に指を乗せる。そうしたら俺は、軀の指の下から指を抜いて、それを軀の指の上に乗せる。簡単に言えば「マウントの取り合い」の一種だ。

先手はじゃんけんで決めた。俺はグーで、軀はパー。軀の勝ちだ。いいさ、先手ぐらいくれてやる。俺はこう見えて寛大なんだ。

勝負開始。軀が俺の指上に指を乗せた。俺はすかさず指を抜き、軀の指の上に乗せた。次に軀、そして俺。

軀、俺、軀、俺、軀、俺、軀、俺……。

静かな攻防戦が続く。

軀、俺、軀、俺、軀、俺、軀、俺、軀、俺……。

指の触れ合う高さは常に一定に保つ。気がせいてどんどん触れ合う位置が高くなってしまうのは、いかにも素人のやり方だ。

俺達の下に敷かれた毛布から一センチほどの高さをキープしつつ競い合う俺達は、優秀な戦士だった。

だがお互い優秀過ぎて、勝負は果てしなく続いていく。徐々にイライラが募り、俺は尻尾を左右に鋭く振った。軀は何やら変な声を出し始めた。どうやら軀の持久力は俺ほどではないらしい。

ひたすら滑らかに同じ動きを繰り返す指を凝視していると、軀の指先を肉球で叩き落としたいという欲望が鎌首をもたげ始めた。だが今が正念場だ。軀は口の端をひくひくと動かしている。それは奴の精神力の限界が近づいていることを示している。

そして遂にその時は来た。

「ぷっ、ぷくくくく、あははははは!!」

軀はそう鳴くと仰向けに寝転がった。

「オレの敗けだ、飛影!!お前は強いなー」

軀は敗北を宣言し、仰向けのまま俺の脇に両前足を差し入れ、俺を高く持ち上げてから、胸の上に下ろした。

「あーなんて可愛いヤツ。最高の猫だよ、お前は」

ふん、それほどでもある。

俺は軀の上に立ち、軀のもちもちとした胸肉を前足で交互に踏んだ。



(おわり)
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