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Talent of Love.

「あの二人はさしずめ、一つの蓮の花の上に生まれる仲、なんだろうねぇ」

と、坊さんが言ったのはいつの事だったか。もうずっとずっとずーっと昔の話だ。

それって腐れてない腐れ縁っていうの?よくわかんないけど、あの二人、あにきとみお姉は、何度生まれ変わっても出会い、結ばれるんだ。その時によってハッピーエンドだったりバッドエンドだったり、結末は違うんだけど、とにかく二人は恋に落ちるものなんだ。そしておいらはその顛末を側で傍観する係さ。二人が一蓮托生ってんなら、おいらはその花の茎に何とかしがみ付いているようなもんだ。

でも幸いにも、二人はまだ徳を積み終えてないらしく、極楽で同じ蓮の花の上に仲良く生まれて幸せに暮らしましたとさ、ハッピリィエバーアフター、とはまだなっていなくって、だから今回もこの世にそれぞれ人間として生まれて来た。勿論おいらもね。ま、ゴキに生まれ変わるよりはマシだ。マシか?マシだよな……。

今回の人生で、おいらが自分の運命ってヤツに気付いたのは、ついこの間、高校入学直前の春休みのある日、春雷轟く夕方だった。その時おいらはうちの隣の幼馴染ん家でテレビゲームをやっていた。

「おい、いいかげんよせ。マジで雷が落ちたらどうするんだ」

「へへへのへのへのへーっだ」

おいらは幼馴染の忠告を無視してゲームに熱中していた。

『YOU LOSE!』

「あーあ、負けちった」

コントローラーを投げ出し、ふと上を見上げたら、蛍光灯がジジジッっと虫の羽音みたいに鳴った。瞬間、辺りが真っ白な閃光に包まれた。遅れて物凄い轟音!家が激しく揺れる。

「な、な、な……!?戦争?核戦争!?ついに来やがったのか、その時がっ」

幼馴染は立ち上がってそう叫んでいた。思い返すと笑っちゃうけど、マジでミサイルが降って来たのかと思うほどだったんだよ。それくらいの威力だった。

「ギャーーーッ!何これなんなのこれ!こわいこわいこわいこわいよーーーーーっ!」

助けてよ、あにきーーーーっ!

叫んだ瞬間、おいらの記憶に魂の記憶とも言うべきビジョンが撃ち込まれ、ミックスされたんだ。

気が付くとおいらは、あにきの腰に固く腕を回してピーピー泣いていた。

「うっざ、うざいっ。おいどろろっ、離せっ!おれ、家の中見回んないと」

「へっ?」

「どうやらウチに雷が落ちたみたいだ。どこがやられたのか調べてくる。どろろ、お前はここにいろ」

そうじゃなくて!

あにき、あにきなのかい!?
おいらの約十六年にわたるそれこそ腐れ縁の幼馴染のお前が、あのあにきだったのかい!!?

やったーーーー!!!!!

停電で真っ暗になった部屋の中で、おいらは一人ガッツポーズをした。だって、初めてだったんだ、おいら達が同い年に生まれたの!何度も何度も何度も何度も転生を繰り返して来たのに、初めてだったんだよ!

そして生まれてから今までずっと一緒だったおいら達の人生に、まだみお姉は介在していないんだ。

屈折数百年、千載一遇のチャンス到来だ!

ところが。

「くっそ、電話がやられてた。受話器上げてもうんともすんとも言わねぇ」

あにきが部屋に戻ってくると、なんだかおいら、急に変な気分になって。なんか、居心地が悪いっていうか。

「あ、おいら、そろそろ家帰んないと」

「は?今外出るのは危ないぞ。もう少し落ち着くまでうちで待ってろって」

「大事な用事思い出したんだよ!じゃな!」

おいらは荷物をひっ掴むと豪雨の中に飛び出した。
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