今夜の蔵馬はかなりヤバい
蔵馬が珍しく、いやーな感じに酔っている。
幻海ばーさんの寺に皆で集まっての宴会中。まだ賑わってはいるが、一人、二人と、便所だとか一服点けたいとか風に当たりたいとかで中座するやつがチラホラ出てきた、そんな頃。
ふと、手酌で黙々と飲む蔵馬と目があったのだが、なんだか視線がすっげぇ冷てぇ。
「俺、何かした?」
「別に」
「その言い方、ぜってー何かあるだろオメー」
「ふっ、何でもないですよ。ただ」
「ただ?」
「その姿勢、人に話しかける時のものですか?」
「へ?あ、いやえっと……」
俺が言い淀んでいると、
「ちょっともう、いい加減どいてくれない?足が痺れたんだけど」
螢子がそう言った。
「わりぃわりぃ」
俺は螢子の膝から頭を上げた。
「まったく、どいつもこいつも……」
蔵馬はポン酒をくいっとあおると、吐き捨てるように言った。どいつもこいつも、とは。
そんで回りを見回してみたけど、あっなるほど!
「膝枕率たっっっか!」
かく言う俺だって、ついさっきまで螢子の膝に頭を載せていたわけで。
「まったく、けしからんですよ」
あっもしかしなくても蔵馬さん、かなり悪酔いしている感じ?そういえば、最近仕事が忙しくてろくに寝てないとか言ってたっけな。無理して飲んだせいでこれか。
「いーいなぁ、幽助も桑原くんも」
「お、おう」
「桑原くんなんかですねぇ、雪菜ちゃんがいながら、ぼたんにまで膝枕してもらったんですよ。あり得なくないですか?雪菜ちゃんという、かわい~彼女がありながら!あり得なくないですか!?」
「うん?それいつの話?」
「暗黒武術会」
「あぁ」
そんな事もあったかな。しかしもう何年前の話だよ。アンタ結構根に持ちますねぇ。
「それにっ!飛影だってっ」
「俺が何だ。」
気が付けば、飛影は俺たちの背後に立って、冷ややかに俺らを見下ろしていた。
「潰れ顔が浮気だと?」
「そんなことはどーでもいいんですっ!」
バンッ!と蔵馬はテーブルに拳を叩きつけた。
「どうでもよくないだろう。事と次第によっては、俺はあいつをミンチになるまで切り刻まなくてはならない」
「今俺は、あなたの話をしようとしているのっ!!」
「貴様、のませすぎだぞ」
「俺のせいじゃねーし」
「蔵馬さん大丈夫?お水飲む?」
「俺はこう見えて素面です」
嘘吐け!
「俺がねぇ、俺が言いたかったのはっ、飛影!お前もぼたんに膝枕してもらってた!!」
「記憶違いだろう。俺がそんな事、させる訳がない」
「記憶あるわけないでしょっ!だって飛影、海藤のタブーで魂取られてたんだもん!」
「面白そうな話だな。聴かせろよ」
げっ、魔界最強女子軀姐さんの登場だ!どっから話聴いてた?膝枕とか、大丈夫?お願いだから寺壊さないでねっ。
「む、軀、違うんだ!」
やべぇ、あの飛影が顔真っ赤で弁解している。すげぇ……すげぇとしか言い様がねぇ。軀姐さん、あんた、半端ねぇよ。
「俺は人間の能力者ごときに魂を盗られるようなヘマはしない!」
そっちか!
「うん、うん、知ってる」
案外暖かい反応である。さすが、飛影を側に置いているだけあって、懐が深い女性(ひと)だなぁ。
「で、膝枕とは。」
あっ、そうでもないわ。案外、普通の女子。
「そんなもんは知らん。記憶にない。コイツ、悪酔いして絡んで来やがるんだ。ぼたんに膝枕されたいんだと」
「ほぉ、ぼたんとかいう霊界人なら、さっき外で孤光らなんかとくっちゃべってたぞ。呼んできてやろうか?」
「いいですっ。来たってどうせ、俺にはしてくれないもん」
「意気地のない野郎だ」
飛影は鼻を鳴らした。
「ねぇ飛影ぃ~どうやったら膝枕って、してもらえるんですかねぇ」
「そんなもん……、おい軀」
「あん?」
「膝貸せ」
「あいよ」
飛影は胡座をかいている軀の膝に、ドスンと頭を載せた。
「合意を得ればいいだけだ」
そう言って飛影はニヤリと邪悪に笑った。
「むりぃ。おれとぼたんのあいだに、そんなりれーしょんしっぷ、ないもん」
蔵馬はまた、酒をお猪口にどくどくと注いだ。
「なんだよ飛影、今夜はずいぶん甘えたさんだなぁ」
軀がうっとりした顔で飛影の髪を手櫛ですきながら言うと、
「フン、眠いだけだ」
というやいなや、飛影はスカーッと寝息をたて始めた。
「はぜろ、飛影なんか……」
蔵馬はそう呟くと、テーブルに突っ伏し、動かなくなった。そこへ、
「たっだいまー!遅くなっちまった。なんだか話が弾んじまってねぇ、うふふ」
うふふじゃねえし。やっと戻ってきやがったよ、ぼたんのヤツ。
「あらぁ、飛影も蔵馬ももう寝ちゃったのかい?」
「あぁ、つい今さっきな。ぼたん、オメーのせいで蔵馬が荒れてて大変だったんだぞ」
「どして?あたし何かしたかい?」
ぼたんはキョロキョロと俺らを見回した。
「蔵馬だけ、お前に膝枕してもらってないんだとよ」
軀が答えた。
「え、膝枕?そんなのしたことあったっけ」
「あっただろうオメー、暗黒武術会の時とか、四次元屋敷とか」
「うーん、そんなこと、あったかねぇ」
「あったの。……ま、そういう訳なんでさ、オメー、蔵馬にちょっくら膝枕してやってくれよ」
「なんで」
「だから、蔵馬はオメーに膝枕して欲しいんだと!」
するとぼたんは笑い出した。
「あはは、そんなこと、あるわけないじゃないか!だって蔵馬だよ?あたしなんかに膝枕されて何が嬉しいのさ」
「おーい、ぼたんやー」
「ぼたんさーん」
「はいな、今行くよっ」
コエンマとジョルジュの呼び声に答えると、ぼたんは「そんじゃーね」と、お巡り風の敬礼をして、爽やかに去って行った。
(おわり)
***
お題箱に匿名様からいただいたお題で書きました(*´・ω・`)b
「膝枕する飛軀」
でした。
お題ありがとうございました!
幻海ばーさんの寺に皆で集まっての宴会中。まだ賑わってはいるが、一人、二人と、便所だとか一服点けたいとか風に当たりたいとかで中座するやつがチラホラ出てきた、そんな頃。
ふと、手酌で黙々と飲む蔵馬と目があったのだが、なんだか視線がすっげぇ冷てぇ。
「俺、何かした?」
「別に」
「その言い方、ぜってー何かあるだろオメー」
「ふっ、何でもないですよ。ただ」
「ただ?」
「その姿勢、人に話しかける時のものですか?」
「へ?あ、いやえっと……」
俺が言い淀んでいると、
「ちょっともう、いい加減どいてくれない?足が痺れたんだけど」
螢子がそう言った。
「わりぃわりぃ」
俺は螢子の膝から頭を上げた。
「まったく、どいつもこいつも……」
蔵馬はポン酒をくいっとあおると、吐き捨てるように言った。どいつもこいつも、とは。
そんで回りを見回してみたけど、あっなるほど!
「膝枕率たっっっか!」
かく言う俺だって、ついさっきまで螢子の膝に頭を載せていたわけで。
「まったく、けしからんですよ」
あっもしかしなくても蔵馬さん、かなり悪酔いしている感じ?そういえば、最近仕事が忙しくてろくに寝てないとか言ってたっけな。無理して飲んだせいでこれか。
「いーいなぁ、幽助も桑原くんも」
「お、おう」
「桑原くんなんかですねぇ、雪菜ちゃんがいながら、ぼたんにまで膝枕してもらったんですよ。あり得なくないですか?雪菜ちゃんという、かわい~彼女がありながら!あり得なくないですか!?」
「うん?それいつの話?」
「暗黒武術会」
「あぁ」
そんな事もあったかな。しかしもう何年前の話だよ。アンタ結構根に持ちますねぇ。
「それにっ!飛影だってっ」
「俺が何だ。」
気が付けば、飛影は俺たちの背後に立って、冷ややかに俺らを見下ろしていた。
「潰れ顔が浮気だと?」
「そんなことはどーでもいいんですっ!」
バンッ!と蔵馬はテーブルに拳を叩きつけた。
「どうでもよくないだろう。事と次第によっては、俺はあいつをミンチになるまで切り刻まなくてはならない」
「今俺は、あなたの話をしようとしているのっ!!」
「貴様、のませすぎだぞ」
「俺のせいじゃねーし」
「蔵馬さん大丈夫?お水飲む?」
「俺はこう見えて素面です」
嘘吐け!
「俺がねぇ、俺が言いたかったのはっ、飛影!お前もぼたんに膝枕してもらってた!!」
「記憶違いだろう。俺がそんな事、させる訳がない」
「記憶あるわけないでしょっ!だって飛影、海藤のタブーで魂取られてたんだもん!」
「面白そうな話だな。聴かせろよ」
げっ、魔界最強女子軀姐さんの登場だ!どっから話聴いてた?膝枕とか、大丈夫?お願いだから寺壊さないでねっ。
「む、軀、違うんだ!」
やべぇ、あの飛影が顔真っ赤で弁解している。すげぇ……すげぇとしか言い様がねぇ。軀姐さん、あんた、半端ねぇよ。
「俺は人間の能力者ごときに魂を盗られるようなヘマはしない!」
そっちか!
「うん、うん、知ってる」
案外暖かい反応である。さすが、飛影を側に置いているだけあって、懐が深い女性(ひと)だなぁ。
「で、膝枕とは。」
あっ、そうでもないわ。案外、普通の女子。
「そんなもんは知らん。記憶にない。コイツ、悪酔いして絡んで来やがるんだ。ぼたんに膝枕されたいんだと」
「ほぉ、ぼたんとかいう霊界人なら、さっき外で孤光らなんかとくっちゃべってたぞ。呼んできてやろうか?」
「いいですっ。来たってどうせ、俺にはしてくれないもん」
「意気地のない野郎だ」
飛影は鼻を鳴らした。
「ねぇ飛影ぃ~どうやったら膝枕って、してもらえるんですかねぇ」
「そんなもん……、おい軀」
「あん?」
「膝貸せ」
「あいよ」
飛影は胡座をかいている軀の膝に、ドスンと頭を載せた。
「合意を得ればいいだけだ」
そう言って飛影はニヤリと邪悪に笑った。
「むりぃ。おれとぼたんのあいだに、そんなりれーしょんしっぷ、ないもん」
蔵馬はまた、酒をお猪口にどくどくと注いだ。
「なんだよ飛影、今夜はずいぶん甘えたさんだなぁ」
軀がうっとりした顔で飛影の髪を手櫛ですきながら言うと、
「フン、眠いだけだ」
というやいなや、飛影はスカーッと寝息をたて始めた。
「はぜろ、飛影なんか……」
蔵馬はそう呟くと、テーブルに突っ伏し、動かなくなった。そこへ、
「たっだいまー!遅くなっちまった。なんだか話が弾んじまってねぇ、うふふ」
うふふじゃねえし。やっと戻ってきやがったよ、ぼたんのヤツ。
「あらぁ、飛影も蔵馬ももう寝ちゃったのかい?」
「あぁ、つい今さっきな。ぼたん、オメーのせいで蔵馬が荒れてて大変だったんだぞ」
「どして?あたし何かしたかい?」
ぼたんはキョロキョロと俺らを見回した。
「蔵馬だけ、お前に膝枕してもらってないんだとよ」
軀が答えた。
「え、膝枕?そんなのしたことあったっけ」
「あっただろうオメー、暗黒武術会の時とか、四次元屋敷とか」
「うーん、そんなこと、あったかねぇ」
「あったの。……ま、そういう訳なんでさ、オメー、蔵馬にちょっくら膝枕してやってくれよ」
「なんで」
「だから、蔵馬はオメーに膝枕して欲しいんだと!」
するとぼたんは笑い出した。
「あはは、そんなこと、あるわけないじゃないか!だって蔵馬だよ?あたしなんかに膝枕されて何が嬉しいのさ」
「おーい、ぼたんやー」
「ぼたんさーん」
「はいな、今行くよっ」
コエンマとジョルジュの呼び声に答えると、ぼたんは「そんじゃーね」と、お巡り風の敬礼をして、爽やかに去って行った。
(おわり)
***
お題箱に匿名様からいただいたお題で書きました(*´・ω・`)b
「膝枕する飛軀」
でした。
お題ありがとうございました!
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