来るなって言っただろ!
一体、何でこの女は俺の言うことがわからないのだろう。
飛影は机上を掃くように長い尻尾をシュッシュッっと左右に動かして、苛立ちを顕にした。それなのに軀は、両手を広げて近寄り、彼を追い詰めて来るのだ。
「おーい飛影、来いよ、抱っこしてやるからさぁ」
『うるさい、あっち行け!』
とうとう飛影はプワァッと息を吐き出した。いわゆる最後通牒というやつだ。
この女、普段はさも猫の理解者ヅラをして、実際人間よりもよほど猫に近い面構えをしていて、上等な雌猫のようなしなやかな体躯を持っているくせに、どうして時々、
こう!
こう!!
こう!!!
分からず屋なのか!!!!!
外は雨。どんよりと湿気っぽい空気が飛影の毛並みをべたつかせ、気持ちをイライラさせていた。誰にも触られたくない気分。なのにこんな日に限って、夕方早くに部屋に戻って来た軀は、ベッドの下に隠れていた飛影を目敏く発見すると、彼の尻尾を掴んで引摺り出したのだった。
これ以上近付いて来たら肉球でパンチを食らわせてや……、
と、軀はおよそヒト族とは思えない身のこなしで、
「捕まえた」
飛影を素早く腕の中に抱きかかえ、ギュッと抱き締めた。軀は飛影の耳の付け根の辺りの窪みに鼻を埋め、すんすんと匂いを嗅いだ。
「……ッ、プシュン!あー、鼻に毛が入ったぜ」
鼻水で耳を汚されてはたまらない。飛影は両足を突っ張り、軀の鳩尾辺りにドスドスと蹴りを入れた。爪を剥き、彼女の薄いタンクトップごしに肋骨の出っ張っているところを全力で推す。しかし飛影の反撃虚しく、軀は彼を締め付けたまま、ベッドの上にダイブした。
タオルケットから、軀の甘い体臭がふんわりと香った。軀自身からももちろん、フレッシュな匂いが立ち上っている。
『ふんあっ』
反射的に、飛影は鼻面にシワを寄せ、前歯を剥き出した。臭いからでも嫌いなにおいだからでもない。むしろ彼女の匂いは飛影ら雄猫にとっては大層魅力的な匂いなのであるが、こうも間近で浴びせられると、溺れてしまいそうなのである。特に今夜は湿気のせいで臭気がこもるのだった。
『おい、お前……なんでこんな、普通のメスならすっかり落ち着いているシーズンにこんな匂い、させやがっ』
軀は飛影をしっかり抱いたまま、首の上までタオルケットを被った。布地に外気が遮断され、しかも飛影の鼻は軀の胸の谷間に埋もれてしまった。息が出来ずに苦しくて、飛影は前足で軀の胸を強く押し返した。
「あ、悪い。息が苦しかったか?」
上掛けは取り払われたものの、こんどは腹の底から込み上げてくる本能的欲求で、飛影は気が狂いそうになっていた。
『にゃ、にゃあああん!にゃあああん!』
堪え切れずに飛影は喘ぎ声をあげた。
足の、踏み踏みが止まらないッ……!
飛影の前足と後ろ足は、彼の意思に背いて軀の胸や腹を激しく揉みしだいていた。
『くそッ、だからお前と寝るのは嫌なんだー!!』
という彼の叫びはしかし、軀の耳には喉の奥で鈴を転がすような甘え鳴きにしか、聴こえないのである。
(おわり)
***
私は6RTされたら、襖の飛軀の「来るなって言っただろ」で始まる小説を書きます(o・ω・o)
https://t.co/WgQZsCfR6h
きっと書かないと思いつつ_:(´ཀ`」 ∠):_
***
6RTはされなかったので、コッソーリ公開。
飛影は机上を掃くように長い尻尾をシュッシュッっと左右に動かして、苛立ちを顕にした。それなのに軀は、両手を広げて近寄り、彼を追い詰めて来るのだ。
「おーい飛影、来いよ、抱っこしてやるからさぁ」
『うるさい、あっち行け!』
とうとう飛影はプワァッと息を吐き出した。いわゆる最後通牒というやつだ。
この女、普段はさも猫の理解者ヅラをして、実際人間よりもよほど猫に近い面構えをしていて、上等な雌猫のようなしなやかな体躯を持っているくせに、どうして時々、
こう!
こう!!
こう!!!
分からず屋なのか!!!!!
外は雨。どんよりと湿気っぽい空気が飛影の毛並みをべたつかせ、気持ちをイライラさせていた。誰にも触られたくない気分。なのにこんな日に限って、夕方早くに部屋に戻って来た軀は、ベッドの下に隠れていた飛影を目敏く発見すると、彼の尻尾を掴んで引摺り出したのだった。
これ以上近付いて来たら肉球でパンチを食らわせてや……、
と、軀はおよそヒト族とは思えない身のこなしで、
「捕まえた」
飛影を素早く腕の中に抱きかかえ、ギュッと抱き締めた。軀は飛影の耳の付け根の辺りの窪みに鼻を埋め、すんすんと匂いを嗅いだ。
「……ッ、プシュン!あー、鼻に毛が入ったぜ」
鼻水で耳を汚されてはたまらない。飛影は両足を突っ張り、軀の鳩尾辺りにドスドスと蹴りを入れた。爪を剥き、彼女の薄いタンクトップごしに肋骨の出っ張っているところを全力で推す。しかし飛影の反撃虚しく、軀は彼を締め付けたまま、ベッドの上にダイブした。
タオルケットから、軀の甘い体臭がふんわりと香った。軀自身からももちろん、フレッシュな匂いが立ち上っている。
『ふんあっ』
反射的に、飛影は鼻面にシワを寄せ、前歯を剥き出した。臭いからでも嫌いなにおいだからでもない。むしろ彼女の匂いは飛影ら雄猫にとっては大層魅力的な匂いなのであるが、こうも間近で浴びせられると、溺れてしまいそうなのである。特に今夜は湿気のせいで臭気がこもるのだった。
『おい、お前……なんでこんな、普通のメスならすっかり落ち着いているシーズンにこんな匂い、させやがっ』
軀は飛影をしっかり抱いたまま、首の上までタオルケットを被った。布地に外気が遮断され、しかも飛影の鼻は軀の胸の谷間に埋もれてしまった。息が出来ずに苦しくて、飛影は前足で軀の胸を強く押し返した。
「あ、悪い。息が苦しかったか?」
上掛けは取り払われたものの、こんどは腹の底から込み上げてくる本能的欲求で、飛影は気が狂いそうになっていた。
『にゃ、にゃあああん!にゃあああん!』
堪え切れずに飛影は喘ぎ声をあげた。
足の、踏み踏みが止まらないッ……!
飛影の前足と後ろ足は、彼の意思に背いて軀の胸や腹を激しく揉みしだいていた。
『くそッ、だからお前と寝るのは嫌なんだー!!』
という彼の叫びはしかし、軀の耳には喉の奥で鈴を転がすような甘え鳴きにしか、聴こえないのである。
(おわり)
***
私は6RTされたら、襖の飛軀の「来るなって言っただろ」で始まる小説を書きます(o・ω・o)
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きっと書かないと思いつつ_:(´ཀ`」 ∠):_
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6RTはされなかったので、コッソーリ公開。
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