このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

多宝丸から舶来の菓子が届きました


ーー時は戦国時代。しかしこの世界線には少し捻れが生じているのであって、昭和の名曲『赤い花白い花』が歌われるし、花嫁は文金高島田に綿帽子を被る。そんな、何でもありな時代なのであったーー


ある日、みおがいつも通りちびっ子達と畑仕事に精を出していると、多宝丸が二人の従者を伴いやって来た。みおは仕事の手を止めて住処のあばら家へ三人を迎え入れた。

「お久しぶりにございます、義姉あね上。お元気そうで何よりです」

多宝丸は深々とお辞儀をした。そして、後ろに控えている陸奥に目配せをした。

「今日はこちらの菓子をお裾分けに参りました」

陸奥が、風呂敷を解いて大きくて薄い桐の箱を取り出し、みおの眼前にスッと差し出した。そして蓋を開ける。中味は更に薄紙で丁重にくるまれていた。陸奥はその紙も音をたてずにそっと捲った。和紙の下には、細長い棒状の菓子が、整然と並んでいた。

「こちらは舶来の菓子にございまして、名を"ぽっきー"と申します」

「ぽっきい?」

「はくらいひん、て?」

みおの背後に隠れるように座っていたちびっ子達は、身を乗り出して桐箱を覗き込んだ。

「なんか、お線香みたいだね」

「でも途中から色が違うよ」

「ほんとだ、色がちがうね」

「ちがうね」

「いいにおいだね」

「おいしそうだね」

ちびっ子達は口々に言った。多宝丸はそんな彼らの様子を楽しげに眺めた。

「母の実家から沢山送られて来たので、兄上のところにもお裾分けにと」

「まあ、わざわざどうもありがとう。とても美味しそうだわ」

みおと多宝丸と二人の従者は、しばし茶を飲みながら世間話に花を咲かせた。そして、多宝丸はちびっ子達からせがまれて、かくれんぼや相撲取りなどで遊んだ。夕方、少し日が傾き始めた頃に、多宝丸達が帰ると言ったので、みおはお裾分けのお礼にと、いくつかの野菜を彼らに持たせた。



夜、ちびっ子達が寝静まった後、みおと百鬼丸は囲炉裏端で茶を飲みながら寛いでいた。みおは、戸棚の奥から紙包みを取り出して、そっと百鬼丸の前に置いた。

「これ、多宝丸がくれたお裾分けのお菓子。"ぽっきー"っていうのよ。舶来品なんですって」

桐箱に沢山詰まっていた菓子は、もう既に残すところあとこれだけになってしまっていた。食べ盛りのちびっ子達にかかればあっという間なのである。

「ぽっき?はくらいひん?」

「舶来品っていうのはね、海の向こうの国からやって来た品物のことよ」

「ふーむ……」

百鬼丸は唸ると、細長い菓子を一本つまみ上げ、すんすんと匂いを嗅いだ。ほんのりと甘い香りがした。先端を少し齧ってみると、外側は甘味の中に僅かに心地よい苦味があった。食べた事のない味である。そして、中は甘く味付けされた小麦粉の焼き菓子のようだ。せいぜいススキの茎くらいの太さしかないのに、こんなに複雑な味がするとは。彼は目を細め、勿体なさそうに少しずつ齧り進み、ついに根元まで食べきった。そしてまた、「ふーむ」と唸った。

「おいしい」

「でしょ?これ、百鬼丸のぶんだからね、全部食べていいのよ」

みおが言うと、百鬼丸はにこっと微笑んでもう一本つまみ、ポリポリと食べた。

「おいしい」

ふと、みおは昼間のことを思い出した。

「そういえばね、陸奥から面白いあそびを教わったの。これ、一本いただくね」

みおは菓子を一本取った。

「二人で向かいあって、これの端と端を咥えて、よーいどんで食べ進めるのよ。折らずに全部食べきったら勝ち」

そして彼女は菓子の一方の端を咥えてみせた。ほんの悪戯心である。

「ふーむ……」

百鬼丸はまた唸った。


『あんたの旦那はどんな反応をするかな』

昼間、陸奥はそう言った。

『旦那だなんて。百鬼丸はただの家族の一員だから』

みおが顔を真っ赤にして言うと、ニシシと笑う陸奥なのだった。


みおがそんな昼間の事を思い出して頬を弛めていると、百鬼丸はずずいといざり足で近づいて来て、彼女の両肩をがっつり掴んだ。そして彼女が咥えている菓子を、ぼりぼりと食べ進み、瞬く間に根本まで食べきってしまった。

つん、と、食べた勢いで唇と唇が触れた。すると百鬼丸は目を見開き、掴んでいた彼女の肩を離し軽く仰け反った。そして無言で口をぱくぱくさせる。

「ひゃ、百鬼丸?」

なんだか急に雲行きが怪しくなって来た。ちょっと後ずさったみおだったが、百鬼丸は彼女を捕まえ、彼女の口を貪った。みおの口内に残っていた菓子の欠片が百鬼丸の舌で絡め取られる。頭の奥に痺れを感じてよろけると、そのまま床に押し倒された。

肘が床板に当たり、鈍い音を立てた。部屋の隅に固まって寝ている子供達の一人が呻き、もぞもぞと動いた。

『ちょっとー!子供達が起きちゃうってば!!』

突き放そうにも力が入らない。

『でも何これ、この感じ、結構嫌じゃない』

と、口腔を貪られるがままになるみおだった。


(おわり)



今日の襖の百みお

ポッキーゲームをする。容赦なくキスして舌を絡める。そんな雰囲気になってきたので押し倒す。いただきまーす。

#今日の二人はなにしてる

https://t.co/erKNG3XASZ


1/1ページ
    スキ