何度聞いても
まったく、しょうがない奴。どうせ、幽助と命運を共にするとか考えて、門の中のどこかにこっそり潜り込んで事の顛末を見届けているのだろう。だがどんなに注意深く見ても、門から出てきた幽助を取り巻く人の群れの中に、ヤツの姿を見つけることが出来なかった。自分の姿がテレビに映っているのが俺や奇淋達に見つかるのを嫌って、姿を隠しているに違いない。
恥ずかしいのかバツが悪いのかは知らんが……。
早く姿を見せてくれ。俺はお前の無事を確認したいんだよ、この眼で。
つい数十時間前に見送ったばかりだというのに、まるで何百年も逢っていないみたいに、ヤツの事が恋しくてたまらない。
なのに、幽助の決断の時、俺は何時も通りにパトロールの任務に就いていた。異常なまでに平静な心持で、非番の奴等が休憩室のテレビに群がって騒いでいるのを、むしろちょっと白けた気分で横目に見ていた。幽助の生死が決する瞬間はすなわち、俺の飛影の運命の分かれ道でもあったというのに、なんとも薄情なことだ。
ありきたりなテレビドラマのように、まさにその瞬間、虫の知らせと共に、飛影との思い出が走馬灯のように駆け巡った、などという事はない。どこか他人事のように、ああ、もうそろそろ決着がつくなぁ、と、軽く思ったくらいだ。
しかし、ついに幽助がやったという報告を受けると、早く飛影に逢いたいという気持ちで一杯になり、心が破裂してしまいそうだった。
何も手につかないが、かといって他の連中の様に、任務そっちのけでテレビに齧り付く訳にもいかない。なんとか平静を装い、それとなくパトロールの仕事を何時もより早めに上がって部屋に戻り、テレビのリモコンを弄って、ニュース番組を梯子していた、という訳だ。
時計の針はすでに深夜0時を回っている。しかし、飛影の帰ってくる気配はなかった。
今夜はもう戻らないのかもしれない。仲間達と祝杯でも上げているのだろうか?
布団を引きよせて、頭から被った。掛け布団とシーツの間の閉塞された空間の中で、胎児のように自分の膝を抱えて丸くなり、身体の状況に連動するかのように益々閉じた思考の中で、堂々めぐりに同じことばかり考える。
早く帰ってこい、と。
本当におかしな話だ。飛影が無事なのは明白なのに。
飛影が一旦外に出ると、道草食ってなかなか帰ってこないのは、いつもの事なのに。
ヤツが、何度言い聞かせても自身の命を粗末にすることを止めないのは、俺にはどうしようもないのだと、良く分かっていたはずだったのに。
今更心配をする要素などは、何もない。
だから落ちつけ、俺。