何度聞いても
チャンネルを何番にまわしても、どの局も同じ内容を放送していた。
つまらん……。
俺はテレビの電源を切って寝台に仰向けに寝転んだ。
霊界の審判の門占拠事件。
一昨日発生したこの事件は、解決までは長期戦になるかと思われたが、あっさりカタが付いた。元・霊界探偵浦飯幽助と愉快な(?)仲間達の活躍のおかげで、人質はあっさり全員無傷で解放され、テロリストたちも自殺したものを除いて全員逮捕されたわけだが、それからが問題だった。
審判の門の地下に眠っていた古代兵器、異次元砲の作動スイッチが、テロリストの手によって既に入れられていたのである。
異次元砲の標的は、幽助の故郷である人間界の皿屋敷市に定められていた。
異次元砲には三つのボタンが付いているそうだ。
一つ目は、異次元砲発射スイッチ
二つ目は、自爆スイッチ
三つ目は、ダミーで、押しても何も起こらない。
そして、これらのいずれかを24時間以内に押さなかった場合、異次元砲は自動的に発射される。この三択は、幽助の手に委ねられた。
はたして、霊界、人間界、そして幽助は、この危機を回避できるのか。
騒動の渦中にある霊界だけでなく、魔界までもが事の成り行きを、固唾を飲んで見守っていたのは、無理もない。幽助は、数百年来膠着状態にあった魔界の権力構造をたった一人で、しかも一滴の血も流さずに、覆してしまった男だからだ。
彼ならやってくれるだろうという期待と、
遂に彼も年貢の納め時なのかという絶望と。
それらがない交ぜになった気持ちで、魔界の者達は皆、戦々恐々としつつテレビの前に貼り付いていたのだった。
そして遂に異次元砲の起動スイッチが入れられてから24時間が経過したが、審判の門はしんと静まり返ったまま。人間界にも何の異常もない。
あっけないほどに、決着は付いた。
悪運の強い奴め。
審判の門から出てきた幽助は、茫然自失、といった体たらくで、湧き起こる歓声と、押し寄せる報道陣やギャラリーの波に呑まれていった。
何度も何度も繰り返し放送されるこの感動の名場面を、俺は端から端までじっくりと凝視した。というのは、この事件の解決に当たった者達の中に、俺の一番の部下が助っ人として参加していたからだ。
幽助以外の全員が審判の門から退去するよう勧告されたにもかかわらず、ヤツはこちらに戻ってくるどころか連絡の電話一本寄越さなかった。
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