とある音大生の女の子が知らない世界に放り出されるお話
第1章 狭間で揺れ動くは儚き花
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「そういうことで伊織ちゃん、当初の予定とは違う手伝いになるんだけど、いいかな…?」
「はい、私なんかでよければ是非お手伝いさせてください。」
伊織は真選組の屯所にて近藤、土方、山崎と話をしている。
先日一緒に飲んだ時は雑務の手伝いだと言っていたが、今回、どうしても伊織に助けて欲しいと言う。
*
遡ること一時間程。
山崎は伊織が仕事をしている寺子屋に訪れていた。
「みんな気をつけて帰ってね。」
「伊織ちゃんさようなら〜!」「おいちゃんと先生って言えよ!」
「伊織先生また明日も一緒に遊ぼうねー!!」
「ふふふ、さようなら。」
子供達はキャッキャと駆け足で帰って行く。伊織は優しい笑顔を浮かべて手を振っていた。
子供達の見送りをしているときに山崎に気づいた伊織は会釈をして駆け寄ってくる。
「こんにちは、山崎さん。」
「あぁ伊織ちゃん…こんにちは…ハァ…」
「だ、大丈夫ですか?なんだかすっごく疲れているようですけど…。」
山崎はげっそりとした雰囲気で重苦しいため息をついている。
「実は…」と話し始めたとき、パトカーのドアが開いた。
「ヘ〜!!オレココがいい!!今までの中でいっちばんキレイじゃん!」
「待ってよぅ、お兄ちゃん…!」
出てきたのは小さい子どもだった。男の子の方ははしゃいで建物に駆け寄って行くが、女の子の方は涙目で男の子の後を追っている。
「あの子たちは?」
「幕府ご要人のご子息とご息女なんだ。実はあの子たちの親に昨日殺害予告状が届いて俺たち真選組は一応二人の警護を任されているんだよ。」
「殺害…?!」
「正直愉快犯なんじゃないか、って言われてるんだけどね…。ああいうお偉いさんに脅迫文が届くのはザラだし。」
伊織はそんなことってあるの?!と驚きながら話を聞いていたが、ある疑問が生じた。
「二人って、あの子たちだけ、ですか?あれ、じゃあその親御さんはどちらに?」
「江戸城で普通に仕事してる。あそこは見廻組の警護とかもあるから色々と安全だしね。で、子供は一緒に入れないからってあの子たちは真選組で面倒みることになったんだ…。
でも屯所の中を暴れ回るし!ものは壊すし、書類とかもめちゃくちゃにするし、隊士が相手しても全っ然いうこと聞かないクソガキで…!妹の方はあのクソガキにくっつきっぱなしで隊士が近づいたらすぐに泣き出すし。」
「そ、それは大変ですね。」
「本当にね…。局長は舐められてるし副長はガキ相手に切れる寸前で取り敢えず屯所の外に出したんだ。」
今は寺子屋巡りをしていたところだという。
山崎は駆け回っている子どもを見てまたため息をついた。本当に振り回されて疲れているようだ。
伊織は兄妹の元に行くとしゃがんで目線を合わせる。
「こんにちは。」
「お前誰だ?」
「お姉ちゃんはここで先生のお手伝いをしているの。伊織っていいます。二人のお名前は?」
「オレは敬介!こっちは妹の優子」
優子は敬介の後ろに隠れて伊織の様子をチラチラと伺っている。おそらく引っ込み思案なのだろう。
小さい頃の自分に似てるなぁ、なんて思いながらニコニコと笑いかけた。
しばらく話していると優子も気を許したのか敬介の背から離れて伊織に抱きついて離れなくなった。
敬介は遊び足りない!と叫んで伊織の背中にひしっと抱きつく。
山崎はその様子を唖然として見ていた。隊士たちが何時間時間をかけて手を変え品を変え仲良くなろうと接するも一向に懐かなかったクソガキと幼女を伊織はものの数分で手懐けてしまったのだ。
伊織は二人と手を繋いで山崎の元に戻ってきた。
山崎が「そろそろ屯所に戻るよ」と声を掛けると、敬介はむすっとした顔で「やだ!!!」と反抗する。
スゥっと息を吸って拳を握りしめた山崎を見て伊織は慌てて「抑えて!山崎さん抑えて…!」と小声でなだめた。そして敬介と優子に向き合い、嫌がる理由を聞いた。
「だってあそこ楽しくないんだもん。」「それに怖い…」
「お兄さんたちはお仕事してるからねぇ…。うーん、一緒に遊んでくださいってお願いしてみたらどうかな?」
「えぇ〜…」
二人はやだやだと伊織の手を離さない。すると、敬介が何かを思いついたように「あ!」と声をあげた。
「そうだ!伊織が一緒に来てくれるなら戻ってもいいよ!」
「え」
結局その後、山崎にも懇願されて伊織はパトカーに乗り込み、敬介と優子とともに屯所に向かったのだった。
屯所に着くと、伊織は山崎に案内されて土方たちのもとに向かった。伊織はコソコソと山崎に話しかける。
「や、山崎さん、私みたいな部外者がいても大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫。むしろそれだけ懐いてくれてるならいて欲しいくらいだよ…。」
「そ、そんなさらっと…」
たどり着いた部屋には近藤と土方が居座っていて、伊織は少し緊張しながら二人の前に座った。
伊織の手を離れた敬介は早速部屋の中を走り回って、優子は伊織の腕に抱きついたままじっとしている。
山崎が二人に事情を説明している間、話の邪魔にならないように敬介を自分のもとに呼び、ヒソヒソとおしゃべりをする。
敬介も優子もくふくふと笑って伊織の真似をして小声で話している。
近藤たちは今まであんなに騒がしかった小僧がここまでおとなしくなったことに驚き、すぐに伊織に話を持ちかけた。
「伊織さん!ぜひその子どもたちの子守りをここでしてもらえませんか!?俺たちじゃあお手上げ状態で困ってたんだ…!俺なんかゴリラって貶されるし…。」
「俺からもどうか頼む。クソガキが屯所内で暴れまわってたらろくに仕事もできやしねぇ…。」
近藤は涙をにじませながら頭を下げ、土方は怒りを沈めるように息を吐いて頼み込んだ。
特に断る理由もなかったので了承すると、彼らは安堵のため息を漏らした。
こうして上記に至ったというわけだ。
*
今敬介と優子は夢中でお絵かきをしている。
そんな二人を近藤、山崎、伊織は少し遠くから眺めていた。
「いや〜、本当に伊織ちゃんが来てくれて助かった!数時間前の騒がしさが嘘みたいだよ。」
「すまんな伊織さん。俺たちだけではどうにも手に負えなかったんだ。」
伊織は言葉の節々から彼らの苦労を感じ取り、本当に大変だったんだろうなぁとしみじみと思った。土方は子供相手にキレそうになるし総悟は「調教してやらぁ」なんて不穏なことを口にして宥めるのが大変だったとか。
大事な人の警護に易々と関わっていいものかと不安はあったが、彼らの反応を見る限り大丈夫そうだ。
「あのう…ところで、私はいつ帰れるんでしょうか…?」
伊織が控えめに切り出すと、ピシリと空気が固まった。近藤たちは全くそのことを考えていなかったようで汗をだらだらとかいている。
切り出すタイミングを間違えてしまった…と焦って別の話題を振ろうとしたとき、スパーンと障子が開いた。
「神崎!!」
「ひゃい?!」
そこにいたのは土方で、彼は伊織にズカズカと近寄ってくる。
身を震わせて驚く伊織の肩を掴むとさらに距離を詰めてきた。喉の奥から飛び出しそうになる悲鳴をぐっと堪えて土方の目を見つめる。
「頼む!!明日までここにいてくれ!あのクソガキを飼い慣らせるのはオメーしかいねえんだ…!!謝礼ならいくらでも出す!」
物凄い剣幕で迫りくる土方に圧倒されて伊織はコクコクと頷いた。
とりあえず万事屋とか寺子屋に連絡を…と呟くと、瞬時に山崎が動き出す。おそらく彼がやってくれるのだろう。引き止めるためならなんでもしそうな勢いである。
「だ、大丈夫ですよ土方さん。皆さんの邪魔にならないように私があの子たちを見ておくので安心してください。」
土方は先ほどと同じようにすまねえと頭を下げた。
ここまで頼み込むなんて相当参っちゃったんだろうな、と伊織はほんの少し同情してしまった。
それからしばらく時間が経った頃、銀時たちが屯所を訪れた。
「オイオイ真選組はいつから託児所になったんですかぁ?」
「伊織ちゃんはベビーシッターじゃないアル。ガキのお守りくらいできないで何が真選組ヨ。」
「俺たちだってやりたくてやってんじゃねえよさっさとその荷物よこしたら帰りやがれクソチャイナ。」
「なんだとコラァ?!」
神楽と銀時が口々に真選組をディスっている横で新八が伊織に荷物を渡す。
伊織は苦笑いを浮かべながら二人を見ていた。
「お前ら伊織ちゃんに何かしたら許さないからな。覚悟しとけヨ。」
「そうだそうだ。指一本触れんじゃねーぞ。」
「伊織さん、何かあったらすぐに助けを呼ぶんですよ!」
「オメーらは俺たちをなんだと思ってるんだよ…んな事しねーわ!さっさと帰れ!!」
三人は帰り際にもしっかりと釘を刺して去って行った。
土方はようやくうるさいのが居なくなった、とタバコの煙を吐き出して中に戻る。
遠くから「伊織ちゃーーーーん!!助けてーー!!!」と山崎の叫び声が聞こえ、伊織も慌てて子供たちの元に向かった。
部屋に戻ると敬介は山崎に馬乗りになり、ポカポカと背を叩いてはしゃいでいる。総悟はその様子を面白がって写真を撮っていた。
山崎は伊織の顔を見ると情けない声で助けを求める。
「こーら敬介くん。お兄さんが困ってるよ。」
そう言って敬介を抱き上げて山崎を解放してやる。山崎は「ありがとう伊織ちゃん…!」と泣きながらお礼を言うが、総悟は残念そうにチッと舌打ちをした。
あははと笑いながら敬介をあやしていると、優子も駆け寄ってきて二人は伊織の着物を引っ張る。
「伊織!オレお腹すいた!!ご飯!ごーはーんー!!」
「優子もお腹すいたよぉ…」
時計は5時過ぎを指している。
確かにそろそろ食べさせた方がいいかもと思い、チラリと山崎を見たら、彼は立ち上がって「食堂に案内するよ」と疲れた声で呟いた。
まだほとんど人のいない食堂で二人用の夕飯を受け取り、食べさせる。敬介の口についたソースを拭ったりこぼしたものを拭いたりと伊織は大忙しだ。優子も箸に慣れていないのか辿々しく、結局伊織が食べさせている。
山崎は向かいに座ってその様子を見る。
伊織ちゃん本当に子供の扱い方わかってるなぁ。ていうか、もし伊織ちゃんがいなかったら今頃どうなってたんだろう…。
「あ、そうだ。伊織ちゃん、風呂のことなんだけど、隊士たちが入る前にその子たちと入るようにって副長が。もちろんその間は誰も入らないように配慮するから安心してね!」
「わかりました。」
「本当にごめんね…任せっきりで…」
「ふふ、大丈夫ですよ。これだけ元気があると大変ですもんね。」
「もう二度と子供の警護なんて御免だよ…。」
伊織は机に突っ伏した山崎にねぎらいの言葉をかけた。
しかし、伊織と山崎の苦労はここから始まったのだった。
ご飯を食べ終えて部屋に戻り、ある程度時間が経ってからお風呂に行こうとすると、敬介がヤダヤダとぐずり始めたのだ。伊織が優しく諭しても言うことを聞かず、山崎と一緒に頭を悩ませていると敬介が逃亡。
慌てて追おうとすると、優子が離れないで!と言わんばかりに抱きついてきたため、優子を抱えて屯所内を駆けまわる。
隊士たちはなんだなんだと道を開け、そんな彼らに謝りながら敬介を追う伊織と山崎。
「敬介く〜〜ん!!止まって〜〜!」
「ヤダーーーー!!!」
逃げる敬介の前に人影が二つ。山崎はハッと叫んだ。
「副長!沖田隊長!そいつ捕まえてください!!」
土方はゲッとした表情で向かってくる子供を睨んだが、スッと前に出た総悟が無事捕獲。
ようやく追いかけっこが終わり、伊織はゼイゼイと息を吐きながら二人に礼を言った。
敬介は未だに総悟の腕の中で暴れているが、難なく抑えられている。そのまま話をするも、ずっと駄々をこねているため、伊織はうーん…と頭を悩ませた。
「なんでィ。だったら俺が入れてやるよ。」
「えっ、いいんですか?」
「勿論でさァ。なあクソガキ?」
「えぇ…」
総悟はニタリと笑みを浮かべて腕の中の敬介を見た。すると嫌な予感がしたのか敬介は慌ててもがき、伊織に腕を伸ばす。
「や、やっぱいい!!オレ伊織と入る!!」
「遠慮すんなよガキ。俺と一緒に風呂に入れるなんて光栄じゃねえか。」
「いや、沖田隊長絶対何かするつもりですよね…。」
「何言ってんだ。俺ぁただ教育的指導をするだけでさァ。」
「伊織と入るってば!!離せこの悪魔ーー!!」
敬介は総悟を叩きながら抵抗する。伊織は慌てて優子を下ろして敬介を抱きとめる。
「こらこらこら!わかった。一緒に入ろう。ね?」
こうして敬介を捕まえた伊織はようやく風呂場へと案内された。
少し疲れた顔で脱衣所に入った伊織を見送った山崎は、戸が閉まってやっと一息ついた。
そして着いてきた人たちに向かって一言。
「で、なんで副長と隊長まで着いてきたんですか…」
「決まってるだろィ。発情したザキが中に入らねえよう見張ってるんだよ。」
「ひどくないですか?!そんなことしませんよ!!」
「ま、見張りがお前だけってのは不安だからな。」
「ちょ、副長まで…?どんだけ俺信用ないんですか…。」
山崎はどんよりと落ち込み頭を抱えた。そんな時、中から伊織の慌てる声がして、三人は耳を済まる。
どうやら敬介はまた入らない!と駄々をこねて伊織を困らせているようだ。
山崎は伊織ちゃんに任せちゃって申し訳ないな、なんて思っていると、突然戸がガタガタと音を立てて少し開いた。
「ちょ!だ、だめ敬介くん!!開けないで!!!」
ガラッと戸を開けて敬介が逃げ出そうとした瞬間、ガバリと腕が伸びてきて脱衣所の中に引き戻された。そして瞬時に戸が閉まる。
その一部始終を見ていた土方たちは互いに顔を見合わせて黙った。気まずい空気が流れる中、脱衣所から声をかけられる。
「あの、山崎さん…。」
「は、はい??!!」
「も、申し訳ないんですが、お風呂に入るまでと上がってから着替え終えるまで、全力で扉を閉めておいてください…。」
「り、り、了解であります!!!」
それから一時ドタバタと音がした後、中からカラリと音がして山崎はようやく肩の力を抜いた。
そして何故か総悟に刀を突きつけられる。
「おいザキ、さっきの伊織さんのバスタオル姿を記憶から抹消しろィ。」
「ななな何言ってるんですか!?見てたのは副長も隊長も同じじゃないですかあ!なんで俺だけ??!」
「俺の記憶は常々永久保存されてるから無理なんだよ。というわけでまずはザキの記憶から…」
「待て待て待て!意味わかんねーよ!自分だけちゃっかり覚えとこうとしてるじゃないですか!副長ぉ!!」
山崎が両手を挙げて土方に助けを求めると、土方は腕を組んで一息ついてから口を開いた。
「…いいかお前ら。俺たちは何も見てねえ。だから、万事屋にはこの事、絶対言うんじゃねえぞ…。」
こんなことバレたらあいつらに何をされるか…。
山崎と総悟はコクリと頷いたのだった。
*
風呂場での一悶着も終え、伊織は二人を寝かしつけていた。
敬介は騒ぎ疲れたのか意外にもすぐに寝つき、くうくうと寝息を立てている。
「あのね伊織ちゃん」
残るは優子だけだ、と優子のお腹辺りをポンポンと撫でていると、不意に声をかけられた。「なあに」と返事をすると、小さな声で話始める。
「優子たちのね、本当のお母様は遠くへいっちゃったの。今は新しいお母様がいるんだけど全然優子たちと遊んでくれないんだ。」
そうなのね、と相槌を打ちながら優子の話を聞く。
「お父様も最近忙しくて優子たちと一緒にいないの。今日は一緒に遊ぶって言ってたのに…。でもね、伊織ちゃんが一緒にいたから優子、ゆうこ…」
優子は話している間に眠くなったのかそのまま寝落ちした。
伊織は二人の寝顔を見て微笑み、布団をかけ直す。
新しいお母さん、ってことはきっと生みの母親は亡くなってしまったのね。でも、どうして一緒にいないんだろう?やっぱり自分の子供じゃないから少し敬遠しちゃうのかな…
そんなことを考えながらそっと布団を出て外に面している障子の方に近寄った。
「山崎さん、二人とも寝ましたよ。」
外には一応二人の警護だから不寝番として山崎がいるのだ。話し相手になってもらおうと障子越しに声をかける。
「そっか、よかった。伊織ちゃんはまだ寝ないの?」
「はい。なので、もしよろしければこのままお話相手になってもらえませんか?」
山崎は二つ返事で了承した。
「二人のお父様は特に何事もなく?」
「あぁ。脅迫文を送りつけた犯人も見廻組が捕まえたらしい。だから早ければ明日の午前中には迎えが来るって。」
「そうなんですね。無事でよかった…。」
ほっと胸を撫で下ろす。そして先ほどの優子の話を聞いて思い浮かんだ疑問を口にした。
「あの、さっき優子ちゃんが話してたんですけど、その、二人のお父様には再婚相手がいらっしゃるんですか?」
「うん、俺たちも最初はその人に子供預けたらいいじゃないかって言ったんだけど、どうやら自分の子供じゃないからかあんまりうまくいってないみたいで。自分は子供の世話なんかできないししない!って言い出したらしいよ。」
「だから二人だけがここにきたんですね…。」
血の繋がってない子供、かぁ。これから歩み寄っていけたらいいけど…。
「伊織ちゃんももう寝なよ。疲れたでしょ?夜は冷えるし話はこれで終わりにしよう。」
「あ、はい。すみません、お話に付き合わせちゃって…。風邪をひかないように気をつけてくださいね。」
「はは、お気遣いありがとう。」
伊織はおやすみなさい、と告げて布団に戻った。
まあどうせ眠れないんだけど…と苦笑しながら敬介と優子の寝顔を見つめる。
こうして真選組での夜は更けていった。
______________________
何事もなく終わるといいんだけれど…
「はい、私なんかでよければ是非お手伝いさせてください。」
伊織は真選組の屯所にて近藤、土方、山崎と話をしている。
先日一緒に飲んだ時は雑務の手伝いだと言っていたが、今回、どうしても伊織に助けて欲しいと言う。
*
遡ること一時間程。
山崎は伊織が仕事をしている寺子屋に訪れていた。
「みんな気をつけて帰ってね。」
「伊織ちゃんさようなら〜!」「おいちゃんと先生って言えよ!」
「伊織先生また明日も一緒に遊ぼうねー!!」
「ふふふ、さようなら。」
子供達はキャッキャと駆け足で帰って行く。伊織は優しい笑顔を浮かべて手を振っていた。
子供達の見送りをしているときに山崎に気づいた伊織は会釈をして駆け寄ってくる。
「こんにちは、山崎さん。」
「あぁ伊織ちゃん…こんにちは…ハァ…」
「だ、大丈夫ですか?なんだかすっごく疲れているようですけど…。」
山崎はげっそりとした雰囲気で重苦しいため息をついている。
「実は…」と話し始めたとき、パトカーのドアが開いた。
「ヘ〜!!オレココがいい!!今までの中でいっちばんキレイじゃん!」
「待ってよぅ、お兄ちゃん…!」
出てきたのは小さい子どもだった。男の子の方ははしゃいで建物に駆け寄って行くが、女の子の方は涙目で男の子の後を追っている。
「あの子たちは?」
「幕府ご要人のご子息とご息女なんだ。実はあの子たちの親に昨日殺害予告状が届いて俺たち真選組は一応二人の警護を任されているんだよ。」
「殺害…?!」
「正直愉快犯なんじゃないか、って言われてるんだけどね…。ああいうお偉いさんに脅迫文が届くのはザラだし。」
伊織はそんなことってあるの?!と驚きながら話を聞いていたが、ある疑問が生じた。
「二人って、あの子たちだけ、ですか?あれ、じゃあその親御さんはどちらに?」
「江戸城で普通に仕事してる。あそこは見廻組の警護とかもあるから色々と安全だしね。で、子供は一緒に入れないからってあの子たちは真選組で面倒みることになったんだ…。
でも屯所の中を暴れ回るし!ものは壊すし、書類とかもめちゃくちゃにするし、隊士が相手しても全っ然いうこと聞かないクソガキで…!妹の方はあのクソガキにくっつきっぱなしで隊士が近づいたらすぐに泣き出すし。」
「そ、それは大変ですね。」
「本当にね…。局長は舐められてるし副長はガキ相手に切れる寸前で取り敢えず屯所の外に出したんだ。」
今は寺子屋巡りをしていたところだという。
山崎は駆け回っている子どもを見てまたため息をついた。本当に振り回されて疲れているようだ。
伊織は兄妹の元に行くとしゃがんで目線を合わせる。
「こんにちは。」
「お前誰だ?」
「お姉ちゃんはここで先生のお手伝いをしているの。伊織っていいます。二人のお名前は?」
「オレは敬介!こっちは妹の優子」
優子は敬介の後ろに隠れて伊織の様子をチラチラと伺っている。おそらく引っ込み思案なのだろう。
小さい頃の自分に似てるなぁ、なんて思いながらニコニコと笑いかけた。
しばらく話していると優子も気を許したのか敬介の背から離れて伊織に抱きついて離れなくなった。
敬介は遊び足りない!と叫んで伊織の背中にひしっと抱きつく。
山崎はその様子を唖然として見ていた。隊士たちが何時間時間をかけて手を変え品を変え仲良くなろうと接するも一向に懐かなかったクソガキと幼女を伊織はものの数分で手懐けてしまったのだ。
伊織は二人と手を繋いで山崎の元に戻ってきた。
山崎が「そろそろ屯所に戻るよ」と声を掛けると、敬介はむすっとした顔で「やだ!!!」と反抗する。
スゥっと息を吸って拳を握りしめた山崎を見て伊織は慌てて「抑えて!山崎さん抑えて…!」と小声でなだめた。そして敬介と優子に向き合い、嫌がる理由を聞いた。
「だってあそこ楽しくないんだもん。」「それに怖い…」
「お兄さんたちはお仕事してるからねぇ…。うーん、一緒に遊んでくださいってお願いしてみたらどうかな?」
「えぇ〜…」
二人はやだやだと伊織の手を離さない。すると、敬介が何かを思いついたように「あ!」と声をあげた。
「そうだ!伊織が一緒に来てくれるなら戻ってもいいよ!」
「え」
結局その後、山崎にも懇願されて伊織はパトカーに乗り込み、敬介と優子とともに屯所に向かったのだった。
屯所に着くと、伊織は山崎に案内されて土方たちのもとに向かった。伊織はコソコソと山崎に話しかける。
「や、山崎さん、私みたいな部外者がいても大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫。むしろそれだけ懐いてくれてるならいて欲しいくらいだよ…。」
「そ、そんなさらっと…」
たどり着いた部屋には近藤と土方が居座っていて、伊織は少し緊張しながら二人の前に座った。
伊織の手を離れた敬介は早速部屋の中を走り回って、優子は伊織の腕に抱きついたままじっとしている。
山崎が二人に事情を説明している間、話の邪魔にならないように敬介を自分のもとに呼び、ヒソヒソとおしゃべりをする。
敬介も優子もくふくふと笑って伊織の真似をして小声で話している。
近藤たちは今まであんなに騒がしかった小僧がここまでおとなしくなったことに驚き、すぐに伊織に話を持ちかけた。
「伊織さん!ぜひその子どもたちの子守りをここでしてもらえませんか!?俺たちじゃあお手上げ状態で困ってたんだ…!俺なんかゴリラって貶されるし…。」
「俺からもどうか頼む。クソガキが屯所内で暴れまわってたらろくに仕事もできやしねぇ…。」
近藤は涙をにじませながら頭を下げ、土方は怒りを沈めるように息を吐いて頼み込んだ。
特に断る理由もなかったので了承すると、彼らは安堵のため息を漏らした。
こうして上記に至ったというわけだ。
*
今敬介と優子は夢中でお絵かきをしている。
そんな二人を近藤、山崎、伊織は少し遠くから眺めていた。
「いや〜、本当に伊織ちゃんが来てくれて助かった!数時間前の騒がしさが嘘みたいだよ。」
「すまんな伊織さん。俺たちだけではどうにも手に負えなかったんだ。」
伊織は言葉の節々から彼らの苦労を感じ取り、本当に大変だったんだろうなぁとしみじみと思った。土方は子供相手にキレそうになるし総悟は「調教してやらぁ」なんて不穏なことを口にして宥めるのが大変だったとか。
大事な人の警護に易々と関わっていいものかと不安はあったが、彼らの反応を見る限り大丈夫そうだ。
「あのう…ところで、私はいつ帰れるんでしょうか…?」
伊織が控えめに切り出すと、ピシリと空気が固まった。近藤たちは全くそのことを考えていなかったようで汗をだらだらとかいている。
切り出すタイミングを間違えてしまった…と焦って別の話題を振ろうとしたとき、スパーンと障子が開いた。
「神崎!!」
「ひゃい?!」
そこにいたのは土方で、彼は伊織にズカズカと近寄ってくる。
身を震わせて驚く伊織の肩を掴むとさらに距離を詰めてきた。喉の奥から飛び出しそうになる悲鳴をぐっと堪えて土方の目を見つめる。
「頼む!!明日までここにいてくれ!あのクソガキを飼い慣らせるのはオメーしかいねえんだ…!!謝礼ならいくらでも出す!」
物凄い剣幕で迫りくる土方に圧倒されて伊織はコクコクと頷いた。
とりあえず万事屋とか寺子屋に連絡を…と呟くと、瞬時に山崎が動き出す。おそらく彼がやってくれるのだろう。引き止めるためならなんでもしそうな勢いである。
「だ、大丈夫ですよ土方さん。皆さんの邪魔にならないように私があの子たちを見ておくので安心してください。」
土方は先ほどと同じようにすまねえと頭を下げた。
ここまで頼み込むなんて相当参っちゃったんだろうな、と伊織はほんの少し同情してしまった。
それからしばらく時間が経った頃、銀時たちが屯所を訪れた。
「オイオイ真選組はいつから託児所になったんですかぁ?」
「伊織ちゃんはベビーシッターじゃないアル。ガキのお守りくらいできないで何が真選組ヨ。」
「俺たちだってやりたくてやってんじゃねえよさっさとその荷物よこしたら帰りやがれクソチャイナ。」
「なんだとコラァ?!」
神楽と銀時が口々に真選組をディスっている横で新八が伊織に荷物を渡す。
伊織は苦笑いを浮かべながら二人を見ていた。
「お前ら伊織ちゃんに何かしたら許さないからな。覚悟しとけヨ。」
「そうだそうだ。指一本触れんじゃねーぞ。」
「伊織さん、何かあったらすぐに助けを呼ぶんですよ!」
「オメーらは俺たちをなんだと思ってるんだよ…んな事しねーわ!さっさと帰れ!!」
三人は帰り際にもしっかりと釘を刺して去って行った。
土方はようやくうるさいのが居なくなった、とタバコの煙を吐き出して中に戻る。
遠くから「伊織ちゃーーーーん!!助けてーー!!!」と山崎の叫び声が聞こえ、伊織も慌てて子供たちの元に向かった。
部屋に戻ると敬介は山崎に馬乗りになり、ポカポカと背を叩いてはしゃいでいる。総悟はその様子を面白がって写真を撮っていた。
山崎は伊織の顔を見ると情けない声で助けを求める。
「こーら敬介くん。お兄さんが困ってるよ。」
そう言って敬介を抱き上げて山崎を解放してやる。山崎は「ありがとう伊織ちゃん…!」と泣きながらお礼を言うが、総悟は残念そうにチッと舌打ちをした。
あははと笑いながら敬介をあやしていると、優子も駆け寄ってきて二人は伊織の着物を引っ張る。
「伊織!オレお腹すいた!!ご飯!ごーはーんー!!」
「優子もお腹すいたよぉ…」
時計は5時過ぎを指している。
確かにそろそろ食べさせた方がいいかもと思い、チラリと山崎を見たら、彼は立ち上がって「食堂に案内するよ」と疲れた声で呟いた。
まだほとんど人のいない食堂で二人用の夕飯を受け取り、食べさせる。敬介の口についたソースを拭ったりこぼしたものを拭いたりと伊織は大忙しだ。優子も箸に慣れていないのか辿々しく、結局伊織が食べさせている。
山崎は向かいに座ってその様子を見る。
伊織ちゃん本当に子供の扱い方わかってるなぁ。ていうか、もし伊織ちゃんがいなかったら今頃どうなってたんだろう…。
「あ、そうだ。伊織ちゃん、風呂のことなんだけど、隊士たちが入る前にその子たちと入るようにって副長が。もちろんその間は誰も入らないように配慮するから安心してね!」
「わかりました。」
「本当にごめんね…任せっきりで…」
「ふふ、大丈夫ですよ。これだけ元気があると大変ですもんね。」
「もう二度と子供の警護なんて御免だよ…。」
伊織は机に突っ伏した山崎にねぎらいの言葉をかけた。
しかし、伊織と山崎の苦労はここから始まったのだった。
ご飯を食べ終えて部屋に戻り、ある程度時間が経ってからお風呂に行こうとすると、敬介がヤダヤダとぐずり始めたのだ。伊織が優しく諭しても言うことを聞かず、山崎と一緒に頭を悩ませていると敬介が逃亡。
慌てて追おうとすると、優子が離れないで!と言わんばかりに抱きついてきたため、優子を抱えて屯所内を駆けまわる。
隊士たちはなんだなんだと道を開け、そんな彼らに謝りながら敬介を追う伊織と山崎。
「敬介く〜〜ん!!止まって〜〜!」
「ヤダーーーー!!!」
逃げる敬介の前に人影が二つ。山崎はハッと叫んだ。
「副長!沖田隊長!そいつ捕まえてください!!」
土方はゲッとした表情で向かってくる子供を睨んだが、スッと前に出た総悟が無事捕獲。
ようやく追いかけっこが終わり、伊織はゼイゼイと息を吐きながら二人に礼を言った。
敬介は未だに総悟の腕の中で暴れているが、難なく抑えられている。そのまま話をするも、ずっと駄々をこねているため、伊織はうーん…と頭を悩ませた。
「なんでィ。だったら俺が入れてやるよ。」
「えっ、いいんですか?」
「勿論でさァ。なあクソガキ?」
「えぇ…」
総悟はニタリと笑みを浮かべて腕の中の敬介を見た。すると嫌な予感がしたのか敬介は慌ててもがき、伊織に腕を伸ばす。
「や、やっぱいい!!オレ伊織と入る!!」
「遠慮すんなよガキ。俺と一緒に風呂に入れるなんて光栄じゃねえか。」
「いや、沖田隊長絶対何かするつもりですよね…。」
「何言ってんだ。俺ぁただ教育的指導をするだけでさァ。」
「伊織と入るってば!!離せこの悪魔ーー!!」
敬介は総悟を叩きながら抵抗する。伊織は慌てて優子を下ろして敬介を抱きとめる。
「こらこらこら!わかった。一緒に入ろう。ね?」
こうして敬介を捕まえた伊織はようやく風呂場へと案内された。
少し疲れた顔で脱衣所に入った伊織を見送った山崎は、戸が閉まってやっと一息ついた。
そして着いてきた人たちに向かって一言。
「で、なんで副長と隊長まで着いてきたんですか…」
「決まってるだろィ。発情したザキが中に入らねえよう見張ってるんだよ。」
「ひどくないですか?!そんなことしませんよ!!」
「ま、見張りがお前だけってのは不安だからな。」
「ちょ、副長まで…?どんだけ俺信用ないんですか…。」
山崎はどんよりと落ち込み頭を抱えた。そんな時、中から伊織の慌てる声がして、三人は耳を済まる。
どうやら敬介はまた入らない!と駄々をこねて伊織を困らせているようだ。
山崎は伊織ちゃんに任せちゃって申し訳ないな、なんて思っていると、突然戸がガタガタと音を立てて少し開いた。
「ちょ!だ、だめ敬介くん!!開けないで!!!」
ガラッと戸を開けて敬介が逃げ出そうとした瞬間、ガバリと腕が伸びてきて脱衣所の中に引き戻された。そして瞬時に戸が閉まる。
その一部始終を見ていた土方たちは互いに顔を見合わせて黙った。気まずい空気が流れる中、脱衣所から声をかけられる。
「あの、山崎さん…。」
「は、はい??!!」
「も、申し訳ないんですが、お風呂に入るまでと上がってから着替え終えるまで、全力で扉を閉めておいてください…。」
「り、り、了解であります!!!」
それから一時ドタバタと音がした後、中からカラリと音がして山崎はようやく肩の力を抜いた。
そして何故か総悟に刀を突きつけられる。
「おいザキ、さっきの伊織さんのバスタオル姿を記憶から抹消しろィ。」
「ななな何言ってるんですか!?見てたのは副長も隊長も同じじゃないですかあ!なんで俺だけ??!」
「俺の記憶は常々永久保存されてるから無理なんだよ。というわけでまずはザキの記憶から…」
「待て待て待て!意味わかんねーよ!自分だけちゃっかり覚えとこうとしてるじゃないですか!副長ぉ!!」
山崎が両手を挙げて土方に助けを求めると、土方は腕を組んで一息ついてから口を開いた。
「…いいかお前ら。俺たちは何も見てねえ。だから、万事屋にはこの事、絶対言うんじゃねえぞ…。」
こんなことバレたらあいつらに何をされるか…。
山崎と総悟はコクリと頷いたのだった。
*
風呂場での一悶着も終え、伊織は二人を寝かしつけていた。
敬介は騒ぎ疲れたのか意外にもすぐに寝つき、くうくうと寝息を立てている。
「あのね伊織ちゃん」
残るは優子だけだ、と優子のお腹辺りをポンポンと撫でていると、不意に声をかけられた。「なあに」と返事をすると、小さな声で話始める。
「優子たちのね、本当のお母様は遠くへいっちゃったの。今は新しいお母様がいるんだけど全然優子たちと遊んでくれないんだ。」
そうなのね、と相槌を打ちながら優子の話を聞く。
「お父様も最近忙しくて優子たちと一緒にいないの。今日は一緒に遊ぶって言ってたのに…。でもね、伊織ちゃんが一緒にいたから優子、ゆうこ…」
優子は話している間に眠くなったのかそのまま寝落ちした。
伊織は二人の寝顔を見て微笑み、布団をかけ直す。
新しいお母さん、ってことはきっと生みの母親は亡くなってしまったのね。でも、どうして一緒にいないんだろう?やっぱり自分の子供じゃないから少し敬遠しちゃうのかな…
そんなことを考えながらそっと布団を出て外に面している障子の方に近寄った。
「山崎さん、二人とも寝ましたよ。」
外には一応二人の警護だから不寝番として山崎がいるのだ。話し相手になってもらおうと障子越しに声をかける。
「そっか、よかった。伊織ちゃんはまだ寝ないの?」
「はい。なので、もしよろしければこのままお話相手になってもらえませんか?」
山崎は二つ返事で了承した。
「二人のお父様は特に何事もなく?」
「あぁ。脅迫文を送りつけた犯人も見廻組が捕まえたらしい。だから早ければ明日の午前中には迎えが来るって。」
「そうなんですね。無事でよかった…。」
ほっと胸を撫で下ろす。そして先ほどの優子の話を聞いて思い浮かんだ疑問を口にした。
「あの、さっき優子ちゃんが話してたんですけど、その、二人のお父様には再婚相手がいらっしゃるんですか?」
「うん、俺たちも最初はその人に子供預けたらいいじゃないかって言ったんだけど、どうやら自分の子供じゃないからかあんまりうまくいってないみたいで。自分は子供の世話なんかできないししない!って言い出したらしいよ。」
「だから二人だけがここにきたんですね…。」
血の繋がってない子供、かぁ。これから歩み寄っていけたらいいけど…。
「伊織ちゃんももう寝なよ。疲れたでしょ?夜は冷えるし話はこれで終わりにしよう。」
「あ、はい。すみません、お話に付き合わせちゃって…。風邪をひかないように気をつけてくださいね。」
「はは、お気遣いありがとう。」
伊織はおやすみなさい、と告げて布団に戻った。
まあどうせ眠れないんだけど…と苦笑しながら敬介と優子の寝顔を見つめる。
こうして真選組での夜は更けていった。
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何事もなく終わるといいんだけれど…