偶像の花

 電報。
 パラレルワールドを信じますか? 
 私は信じざるを得なくなってしまいました。
 先日、私の元にある突飛な現象が降ってきたのです。
 パラレルワールドを生きる私の記憶です。
 ついに頭がおかしくなったのだと思いました。しかし、事実でした。すべて。
「私」はビャクランという男の元で悪逆非道の限りを尽くす、世界の敵でした。そしてさらに別のパラレルワールドでは、ある分野で天下を取ったということです。
 愕然としました。かたや世界の敵、かたや天下人。
 しかし、私は私です。
 よりにもよって、私なのです。この無価値な人生が、私なのですよ。
 笑いました。
 これまで、それなりに矜持を持って生きているつもりでいました。それが、こんなに小さく、虚しい、屑だったと知ったのです。
 パラレルワールドの自分とやらが、大層羨ましく思います。
 或いは貴方が死なない世界、或いは花が枯れない世界、そういうところで生きている「私」もいるでしょうか。
 羨ましい。
 私の人生とは何でしょう。
 パラレルワールドのそれが成功した人生なら、私のこれは間違いなく失敗作でしょうね。
 羨ましい。羨ましい。
10/11ページ