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消印のない手紙【完結済】

 からんころん。真昼の強い日差しを反射して黄金に輝いたドアベルがきらきらと瞬いた。
「はーい、今出まーす」
 とんとんと階段を下りながら、青年は右に垂らした横髪を揺らす。玄関には愛嬌のある顔をした若い女性が荷物の包みを持って立っていた。背後には立派な馬車が停まっている。

「お、カペラか」
「はあいカルメ。珍しく荷物が届いてるよ」
 カペラは手に持った荷物を掲げてみせた。彼女の顔より少し大きい、分厚い板のような形状である。
「さんきゅ。……はい、サイン完了」
「どーもー。キミも物と人の移動にはスマイル印のフォルデルマン運輸をよろしくね!」
「はいはい」

 用事を済ませたカペラはそそくさと自前の馬車の馭者台に乗り込み、ちゃっかり宣伝をして馬を走らせた。その後ろ姿を見送ったカルメは荷物を大事そうに抱えて書斎へと向かう。封を開けると、達筆な文字で書かれたメッセージカードが彼を出迎えた。

『先日は本当にありがとう。わがケンドル王国でも、君の探偵所をたくさん宣伝しておくよ。機会があればぜひイオニア君と一緒にケンドルへ来るといい。私もヴォルターも歓迎するよ』

「そうだな……近々あいつを連れて、ケンドルの家の墓参りにでも行くとするか」
 カルメは祖国に想いを巡らせつつ、同封されていた最新の魔術書を上機嫌で開いていった。

〈了〉
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