消印のない手紙【完結済】
「この先の曲がり角で右ー」
イオニアのナビにカルメ、寝ているサリムを姫抱きしたアイセルが続く。周りの人々は美形のカップルにくぎ付けのようで、若い娘などはこっそり黄色い声を出していた。
「……すこし居心地が悪いな。王宮にいるようだ」
「いくら魔法をかけて存在感を消しているとはいえ、目立つ仕草をすれば人の興味を惹いちまうからな」
「ま、もうすぐ目的の場所につくから。あと少しの辛抱だよ」
イオニアの言葉通り、アイセルが指定した場所はもうあと数百メートルというところまで来ていた。目的地である噴水の前には、青みがかった黒髪の男性が一人落ち着かない様子で待っていた。
「良かった。彼はきちんと待っていてくれたようだ」
アイセルが言った。カルメはその男性の風貌を見て、何かが頭に引っかかった。
(あれ? あの姿、どこかで……)
カルメは記憶の糸を辿る。見慣れない眼鏡をかけているが、あの立ち姿には見覚えがあった。
「もしかして、ヴォルター先輩?」
ぱっと目を瞠ったカルメに、アイセルはにっこりと答える。
「そう。ヴォルターは君のことを私に紹介してくれた人であり、同時にこのプチ脱走の共犯者だ」
イオニアのナビにカルメ、寝ているサリムを姫抱きしたアイセルが続く。周りの人々は美形のカップルにくぎ付けのようで、若い娘などはこっそり黄色い声を出していた。
「……すこし居心地が悪いな。王宮にいるようだ」
「いくら魔法をかけて存在感を消しているとはいえ、目立つ仕草をすれば人の興味を惹いちまうからな」
「ま、もうすぐ目的の場所につくから。あと少しの辛抱だよ」
イオニアの言葉通り、アイセルが指定した場所はもうあと数百メートルというところまで来ていた。目的地である噴水の前には、青みがかった黒髪の男性が一人落ち着かない様子で待っていた。
「良かった。彼はきちんと待っていてくれたようだ」
アイセルが言った。カルメはその男性の風貌を見て、何かが頭に引っかかった。
(あれ? あの姿、どこかで……)
カルメは記憶の糸を辿る。見慣れない眼鏡をかけているが、あの立ち姿には見覚えがあった。
「もしかして、ヴォルター先輩?」
ぱっと目を瞠ったカルメに、アイセルはにっこりと答える。
「そう。ヴォルターは君のことを私に紹介してくれた人であり、同時にこのプチ脱走の共犯者だ」