消印のない手紙【完結済】

【幕間3:魔法についての基礎知識】

「よーしイオニア、入門魔法学テストやるぞー」
 探偵所のリビングに土魔法で石板を出現させ、チョークを持つカルメ。正面にはノートと筆記用具を用意したイオニアがテーブルについていた。

「まず問一。魔法を扱える種族はエルフだけである。マルかバツか」
「流石にそれは俺を舐めてない? もちろんバツ」
「何事もまず基礎がしっかり分かってないと話にならねぇ。まあ今のは準備運動だ」
 カッカッカッ、とカルメは石板に板書した。

「ほい。出席番号一番イオニア君、声に出して読んで」
『すべての者が魔法を扱えるわけではない。魔法の適性があるかどうかは種族によって異なる。例えばエルフは全員がもれなく魔法を扱えるが、獣人はみんな魔法の適性をもたない……などなど。ちなみに人間が魔法の適性を持って生まれる確率は半々である』

「オッケー。じゃ次、問二。魔法の適性を持つ者は、それぞれ自分の一番得意な属性があることは知ってるな? その得意属性の魔法を使う時と、それ以外の魔法を使う時の大きな違いを一つあげよ」
「えーっと、得意属性の魔法を使うときは詠唱がいらない!」
「正解。さっき僕が石板を作った時みたいに、得意属性の魔法を使うときは無詠唱がデフォだ。じゃあそれ以外の魔法を使う時はなんで詠唱がいるかというと……っていうのは魔法原理学の範疇に入るから今は省く」
「はーい」

「んじゃ最後、問三。人によって扱える魔法の属性数は異なるが、魔法の適性を持つ者が全員扱うことのできる属性はなんだ?」
「はいはい、『光』か『闇』! 光魔法を使える人は闇魔法を使えないし、その逆も一緒!」
「大正解。そんだけ出来てりゃ十分だな、僕は魔術師としての仕事があるから書斎に戻るぞ」
「え、ちょっと待ってよ! あと体術の課題もあるんだってば、ねぇー!」
「僕に体術を教わってどうする! 魔法使いと剣士の戦い方なんて百八十度違うんだぞ!」

 騒ぐイオニアに対して無慈悲に書斎へ消えるカルメ。探偵所に閑古鳥が常駐していたころの日常である。
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