消印のない手紙【完結済】

【幕間1:ローカルな何でも屋】

 カルメが探偵所を設立したのはわずか一年ほど前のことである。彼はその勢いのまま世界中に散らばる友人と知人に宣伝の便りを送ったのだが、いかんせんこの世界では『探偵』という職業の認知度が低すぎた。彼はレストールの町で何でも屋のような扱いを受け、冒険者が仕留め損ねた魔物の討伐や古文書の解読などの雑用ばかりこなす羽目になっていった。
 そのこともあり、『隣国の王子様からの極秘依頼』という変わり種の依頼にカルメは異様な興奮を見せたのである。
「でも、今までは他の国からの依頼なんてほぼ無かったんだよな。アイセル様、いったいどうやってこの探偵所を知ったんだ?」
 イオニアの手で旅芸人のように妙な衣装を着せられている王子を見て、待ちぼうけしているカルメは誰に言うともなく呟いた。
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