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短文置き場

ルゾロ前提ぽたらんでオナるゾ

2024/03/03 20:39
海賊
「ルフィッ……!」
 仕方ねェってやつだろう。なにしろ、名前をひとつ呼ぶだけで興が乗る。深海の圧力にも負けないよう頑強に作られた艦は即ち閉塞感が強く、故郷をでてから長らく旅というものは空の下をゆくものだと思っていたおれには窮屈極まりない。サニー号にはウソップやフランキー謹製のトレーニング用具があるが、ここには当然そんなものはなく、あの白くまやら巨人やらを背中に乗せて腕立てをするのがせいぜいだった。だからその……発散することもできねェし、なによりあいつが、いねェわけだし。だから仕方ねェ。絶対にこいつが悪い。少なくともこいつはタイミングが、悪い。
「…………」
 生地がやけに分厚い帽子の庇の下は翳っていて視線が取りづらいが、まあ、おれのほうを呆然と見ているんだろう。おれも相手を見上げているので、おれたちは見つめあう恰好になっている。つまり、おれがオナニーでルフィの名前を呼びながらいった瞬間、こいつが居候のおれに割り当てた部屋に入ってきたのだった。確かにここはこいつの艦なのだから、ノックなんかせずドアを開ける権利もある。じゃあまあ、悪いのはタイミングだけってことにしておいてやるか。
 幸いなのは一応他船ということもあり、下半身にケットを被せていたことだった。おれがケツに指を突っ込んでいるのも、射精を遂げたばかりのちんぽも、この同盟相手の視界には入っていない。じゃあまァ、大したことねェかもしれねェな。おれはケツから指を抜いて、とりあえず腿に下ろした自分の下着で濡れた手を拭うと、はァ、と息を吐く。
「……いつまで見てんだてめェ」
 それでようやく、トラファルガー・ロー……トラ男ははっと我に返ったらしかった。
「いや、……すまねェ……、いや! 待てなんでお前はそんなに堂々としてンだよ!」
 一度申し訳無さそうに目を逸らしたと思えば、次にはツッコミを入れてくる。忙しいやつだな。
「この艦じゃオナんの禁止なのか?」
「ンなわけねェだろ」
「じゃ別にいいだろ」
 そりゃおれだって局部を見せつけちまったなら多少は気まずいかもしれないが、この作業はどうしたって必要なんだし、していたこと自体を悪く思うことはないだろう。もちろん、目にしたことを謝る必要だってない。食う、寝る、出す。その一環でしかないのだ。狭い中で共同生活をしているのだから、多少気を遣ったところで目に入ることだってあるに決まっている。おれはケットの下で下着を直し、ベッドから起き上がった。トラ男が一瞬ぎょっとしたが、すぐに表情を取り繕う。
「で、なんか用か、トラ男」
「用……」
 鸚鵡返ししてから、帽子ごとがりがりと頭を掻く。
「お前が服を着てからにする」
 おれは自分のからだを見下ろした。確かに、他船で自分の体液で汚れたパンツ一丁では、話などする気にならないだろう。ルフィなら気にしないだろうにな、と思いを馳せてしまい、自分の女々しさには辟易するが。
「ゾロ屋、……」
 トラ男はおれを呼び、それから口をつぐむ。
たっぷり一分おれたちは向き合ったままだった。
「お前は」
「なんだよ」
「いや、なんでもねェ」
「言いたいことがあるなら言いやがれ」
 ねめつけてやると、トラ男は「訊かれて気まずいのはお前だろうが」と言う。
「なにがだ、おれがオナりながらルフィ呼ぶことの何が悪い」
「だから普通そういう現場を見て堂々とはしねェんだよ」
 普通の話をされても、おれはそもそも世界一の大剣豪になりたいのであって、「普通の人間」とやらになるつもりはない。
「おれとルフィは交際している」
「……一応その話は麦わら屋から聞いているが……」
「おれとルフィはいま離れた場所にいる」
「……そうだが……」
「セックスする相手はいねェ、筋トレも満足にできねェ、発散するためにオナニーする」
「……禁じてはいないが……」
「オナニーの最中相手の名前を言う、なにが悪ィんだ?」
「…………」
 おれの正論に、とうとうトラ男は黙ってしまった。反論できねェか。これがクソコックならもっと理屈もなにもねェ「マリモ」だの「クソ剣士」だの言い返されるだろうが、こいつは随分と真面目だな、と思う。だからこんな精密機械みてェな艦にも乗れるんだろうが。
「……服を着てだれかに道を訊きながら食堂に来い、次の島の話をする」
「なんだ逃げるのか」
 部屋を出ようとするトラ男を煽ってみると、トラ男は疲れ切った顔でため息をついた。
「バカと話をするのは時間の無駄だ」
「負け犬の遠吠えだな」
 言うとでっけェ舌打ちが聞こえてきて、ドアが閉まった。おれはやれやれと肩をすくめる。おれよりそこそこ年上と聞いているが、もしかしたら思った以上に初心なやつなのかもしれない。まァ、海賊に上品さを求めるほうが間違ってんだ。おれは下着を脱いで新しいものを身に着けると、服も着なおす。
「う……」
 最中にいじっていたせいで尖ったままの乳首が布地に触れて思わず声を漏らしてしまった。次にルフィに会えるのはいつになるのか、考えてもわからないが、柄にもなく早く会いたいと思った。やはりおれの船長はあいつだ。おれは襟を正すと、トラ男の話を聞いてやるためにドアを開けた。

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