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短文置き場

学パロキドキラ+ロー

2023/11/19 15:14
海賊
「キラー! 消しゴム貸してくれ!」
「うるせェぞユースタス屋」
「てめェには言ってねェ!」
まーた始まった、とクラス中がため息をつく。普段はクールキャラで通っているローが、どういうわけか一学年下の後輩、キッドが教室にやってくると、声高につっかかるのは最早この数ヶ月この教室の名物となっていた。キラーはため息をつき、にらみ合うふたりの間に入る。
「キッド、学校ではキラー『先輩』だろうが」
言いながら、消しゴムを差し出す。キラーはいつも最低ふたつは消しゴムを筆箱に入れているが、それが新しいほうであることに、ローは気がついていた。
「お前は週に何回消しゴムを忘れりゃ気が済むんだ、ユースタス屋」
「今週は一回目だ」
「昨日はシャープペンを忘れていただろう」
「それも今週は一回目だ」
胸を張るキッドに、ローはますます眉間のしわを深くする。この生徒会長は、ヤンキー校に相応しくない程度には性根が真面目で、キッドのことが気に入らないらしい。キラーはこれ以上ローを怒らせるのは本意ではないので、キッドの手に消しゴムを押し付けた。
「そろそろ予鈴だ、さっさと教室にもどれ」
「キラー、『まだ』予鈴だろ」
「キラー『先輩』、だ、ろ、う、が!」
キラーは、言いながらキッドを教室から押し出した。引き戸を閉めると同時にキッドの舌打ちが聞こえたが、なんとか無視した。
「キラー屋、お前がアイツに甘いからつけ上がるんだ」
「わかったわかった」
「消しゴムなんざ同じクラスの奴に借りさせればいいだろう」
「今度そう言っておく」
こうなると生徒会長も大概やっかいだ。キラーは彼を宥めるように手を振って、席に戻るよう促した。


……実際のところ、トラファルガーが言うことには、一理も二理もあっているのだが。
キラーはテスト勉強をするという名目でキッドの部屋を訪れている。教科書から英単語を写し取り、綴りを覚えるために繰り返しノートに書く。五回、十回、二十回。
「早くテスト終わんねェかな」
キッドはテーブルに頬杖をついて、ため息を吐いた。この時期は部活はおろか生徒会役員たちも集合が禁じられている。元々勉強熱心な生徒が少ない学校だ、テスト前だけでも勉強させようという学校側が決めた、涙ぐましい制度であった。
「まァ、テスト前になるとお前が来るのは悪くねェが」
キッドがにんまりと笑うので、キラーは英語のノートから顔を上げて、シャープペンの尻でキッドのノートを叩いた。
「いいから英単語のひとつくらい覚えろ」
「物理しかやりたくねェ」
「次に英語で赤点取ったら承知しねェぞ」
「赤点取ったらどうなるんだ?」
「卒業までここに来ねェよ」
キッドの親に言われて、テスト前にキッドを見張るのは、中学から続くキラーの役割であった。しかし、高校に入ったあたりからキッドはキラーがいようと教科書を見なくなり、あろうことにキラーの勉強の邪魔をしてくるようになってしまった。
「そしたらおれがお前の部屋に行く」
「そういう問題じゃねェだろうが。ったく、なんで高校に入った途端サボりだしたんだ、お前は」
「キラーと同じ高校に入れたから満足した」
「……、キラー『先輩』だろうが」
「ここは学校じゃねェぞ」
学校でも呼び捨てにしてるくせに、なにを今更しらじらしいことを。キラーはキッドをひと睨みし、いい加減自分の勉強に戻ることにした。相手にしているだけ時間の無駄である。キッドは構ってくれないキラーが不満で、スマホを手に取った。パズルゲームを起動し、遊び始めると、BGMでそれに気付いたキラーが深いため息をついた。
「あのなキッド」
話しかけると、ぱっとキッドの顔が明るくなり、スマホもテーブルの上に放り出されてしまった。キラーは思わず口をつぐむ。昼間ローに言われたことが頭をよぎった。――お前がアイツに甘いからつけ上がるんだ。その通りだ、すまんトラファルガー。……こんな顔されちまったら、お前が望むような態度は取れねェな。キラーは頭の中でだけクラスメイトに謝罪する。あまり謝る気はない。
「おれは大学進学を考えている」
「大学?」
キッドが瞬きをする。一年のキッドには、進路決定などまだ先の話だ。中学生時点では、キッドは電子系の専門学校に行きたがっていた。キラーも、当時は専門学校で調理を学ぼうと思っていたのだ。だが、高二になって、クラスメイトの話を聞いたり模試でそこそこの成績を取ったのを見た教師に勧められたりで、大学進学にも興味が出てきたのだ。キッドには寝耳に水かもしれない。
「じゃあおれも大学行く」
「は?」
ところが、あまりの即決に、キラーは目を見開いた。じゃあとはなんだ、じゃあとは。キッドは何故か得意げな顔をした。
「大学いってもよろしくな、キラー先輩」
「もう少しよく考えろこのクソガキ」
そもそもお前の成績じゃあおれの志望校は無理だろうが、とキラーは内心で考えて、今日はいよいよ勉強にならないことにため息をつく。次のテストでキッドがいきなり学年順位をブチ上げたことがわかるまで、あと二週間。



おまけ
高2
ロー
現生徒会長。医学部志望。文武両道でなんでもできてしまうので、生徒会長の職務外のことまでつい引き受けてしまうのが悩み。
キラー
数学科か情報系かで進路悩み中。ローと同じクラス。ときどきローを手伝ってやっている。

高1
ゾロ
剣道部。ホームルームで寝ていたら生徒会庶務を押し付けられていたが、部活のほうを優先している。
キッド
生徒会会計。来期の生徒会長を狙っているがローにはお前には務まらないと思われており、喧嘩しがち。当然キラーとは幼馴染。

中3
ルフィ
来年入学してくる台風の目。

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