短文置き場
ローとキラーが喋っているだけ(話題はゾロ)
2023/11/19 15:13海賊
※ローのキラーの呼び方捏造
※情景描写がなんにもないので適当に出航前を想定してもらって……
「キッドが世話になったな」
律儀にわざわざそんなことを言いに来た仮面の男に、ローは顔を上げた。この数日、戦いの最中からさんざ喧嘩した男の“相棒”である。彼自身にはなんの因縁もないが、ローは少しばかり視線を鋭くした。共闘はしても、所詮は他船の人間だ。
「まったくだな」
言うと、キラーは大笑いした。彼はこの国の将軍にSMILEを食わされた、という話は聞いているので、さすがに笑うのを咎めることはできない。ようやく落ち着いたところで、キラーは言う。
「まァ、お前らが楽しそうで良かったよ」
「楽しくはねェが」
なんだかガキ扱いされてねェか、とローは気付く。確かこいつはおれよりひとつ年長なだけの筈だ。たとえばあの屋上で共闘した五人の中ではもっとも歳が近く、なにより他の四人のアホよりは落ち着きがあるので、話も通じやすそうだとは思っていたのだが。
「おれもお前のところの白くまとは親しくさせてもらった」
ローがワノ国の地下にポーネグリフを見に行っていたあいだの宴で、ベポをはじめとしたハートの海賊団の面々は、キッド海賊団と親交を深めていたらしい。それもまたローには少々つまらなかった。敵船だぞ、と言い聞かせはしたが、あまり分かってはいないようだったし。
「いい航海士じゃねェか。お前のところのナンバー2なんだろう」
「まァな」
……とはいえ、仲間を褒められて悪い気はしない。ローは自分の声が思いのほか自慢げであることに後から気づき、口をつぐんだ。キラーと一対一で戦ったとして勝てるだろうという自信はある。あるが、会話をしているだけだと、どうにもあちらのペースになっている気がする。こちらから話題を振らなければと考え、とりあえず口を開く。
「ユースタス屋とお前が屋上からビッグマムを追ったあとの話なんだが」
「あァ」
ナンバー2、という単語が出て、ふと思い出したことがあった。
「おれと麦わら屋とゾロ屋――三人でなかなか苦戦をした」
「ロロノアはなかなかダメージもあったようだしな」
そう、そいつだ、とローは少しだけ逸るような気持ちで頷いた。
「ゾロ屋は『麦わら屋より先におれを殺せ』だの、『おれが死んだら麦わら屋』は頼むだの、散々なことを言う。ありゃどういうことだと思ったんだが」
ローにはあまり理解できない心情だった。ベポをはじめとする仲間は、ローにとって庇護すべき対象だ。だから、ドレスローザに行くときだって彼らとは別行動を取った。彼らを連れて行ってドフラミンゴの糸に操られようものなら、大惨事になることは目に見えていたからだ。
この冷静な男であれば、ゾロの刹那的な言動を論理的に語れるのではないか、そう考えて口に出した。
「そりゃあ、おれたちが船長より先に死ぬわけにはいかねェだろう」
ところが、キラーの返答はこうだった。「おれたち」が誰を指すのか、ローは一瞬判断に迷った。「おれたち」。つまり船のナンバー2の戦闘員たち。
「勿論キッドは――麦わらも、なにかあってもおれたちを見殺しにしたりする気はねェはずだ。だが――」
キラーは向こうで荷物を運んでいるゾロの方に視線を向けた。もっとも、ローからは仮面をつけたキラーの視線などわかりはしなかったが。
「おれはおれの命であいつが助かるなら、それで十分だと思ってるし、ロロノアもそうだろうな」
「理解できねェ」
ローはすぐにそう吐き出した。自分を庇ってベポやペンギン、シャチたちが死ぬことを考えただけで、怖気がする。
「お前だってあのババーと戦うときは死の覚悟くらいしただろう」
「それはおれの責任だ」
「おれたちもおれたちの責任で覚悟をしている」
ローは押し黙った。それが片腕を失ってまで海賊王を目指す男の、右腕の回答だった。そう、だから油断ができない。こいつらには負けられないと思う。
「まァ、よそはよそ、うちはうちだからな。それぞれの船長の考え方があって、クルーはそれに惹かれて仲間になる。そういうモンだろう」
「……キラー屋」
「なんだ?」
「お前、やはりおれのことガキ扱いしてねェか」
言うとキラーはまた一笑いした。悪人じみた笑い方だし、どういう感情で笑っているのかも掴めないし、おまけに顔すら見せていない。だが、これは普通に面白がって笑ってやがる、と付き合いの短いローにもわかる笑い方であった。
「いや?……お前のことは、ちゃんとキッドのダチだと思っている」
「……それはガキ扱いって言うんじゃねェか?」
「違うのか?」
こいつ。ローはキラーをねめつけたが、当然あまり意味はないようだった。
※情景描写がなんにもないので適当に出航前を想定してもらって……
「キッドが世話になったな」
律儀にわざわざそんなことを言いに来た仮面の男に、ローは顔を上げた。この数日、戦いの最中からさんざ喧嘩した男の“相棒”である。彼自身にはなんの因縁もないが、ローは少しばかり視線を鋭くした。共闘はしても、所詮は他船の人間だ。
「まったくだな」
言うと、キラーは大笑いした。彼はこの国の将軍にSMILEを食わされた、という話は聞いているので、さすがに笑うのを咎めることはできない。ようやく落ち着いたところで、キラーは言う。
「まァ、お前らが楽しそうで良かったよ」
「楽しくはねェが」
なんだかガキ扱いされてねェか、とローは気付く。確かこいつはおれよりひとつ年長なだけの筈だ。たとえばあの屋上で共闘した五人の中ではもっとも歳が近く、なにより他の四人のアホよりは落ち着きがあるので、話も通じやすそうだとは思っていたのだが。
「おれもお前のところの白くまとは親しくさせてもらった」
ローがワノ国の地下にポーネグリフを見に行っていたあいだの宴で、ベポをはじめとしたハートの海賊団の面々は、キッド海賊団と親交を深めていたらしい。それもまたローには少々つまらなかった。敵船だぞ、と言い聞かせはしたが、あまり分かってはいないようだったし。
「いい航海士じゃねェか。お前のところのナンバー2なんだろう」
「まァな」
……とはいえ、仲間を褒められて悪い気はしない。ローは自分の声が思いのほか自慢げであることに後から気づき、口をつぐんだ。キラーと一対一で戦ったとして勝てるだろうという自信はある。あるが、会話をしているだけだと、どうにもあちらのペースになっている気がする。こちらから話題を振らなければと考え、とりあえず口を開く。
「ユースタス屋とお前が屋上からビッグマムを追ったあとの話なんだが」
「あァ」
ナンバー2、という単語が出て、ふと思い出したことがあった。
「おれと麦わら屋とゾロ屋――三人でなかなか苦戦をした」
「ロロノアはなかなかダメージもあったようだしな」
そう、そいつだ、とローは少しだけ逸るような気持ちで頷いた。
「ゾロ屋は『麦わら屋より先におれを殺せ』だの、『おれが死んだら麦わら屋』は頼むだの、散々なことを言う。ありゃどういうことだと思ったんだが」
ローにはあまり理解できない心情だった。ベポをはじめとする仲間は、ローにとって庇護すべき対象だ。だから、ドレスローザに行くときだって彼らとは別行動を取った。彼らを連れて行ってドフラミンゴの糸に操られようものなら、大惨事になることは目に見えていたからだ。
この冷静な男であれば、ゾロの刹那的な言動を論理的に語れるのではないか、そう考えて口に出した。
「そりゃあ、おれたちが船長より先に死ぬわけにはいかねェだろう」
ところが、キラーの返答はこうだった。「おれたち」が誰を指すのか、ローは一瞬判断に迷った。「おれたち」。つまり船のナンバー2の戦闘員たち。
「勿論キッドは――麦わらも、なにかあってもおれたちを見殺しにしたりする気はねェはずだ。だが――」
キラーは向こうで荷物を運んでいるゾロの方に視線を向けた。もっとも、ローからは仮面をつけたキラーの視線などわかりはしなかったが。
「おれはおれの命であいつが助かるなら、それで十分だと思ってるし、ロロノアもそうだろうな」
「理解できねェ」
ローはすぐにそう吐き出した。自分を庇ってベポやペンギン、シャチたちが死ぬことを考えただけで、怖気がする。
「お前だってあのババーと戦うときは死の覚悟くらいしただろう」
「それはおれの責任だ」
「おれたちもおれたちの責任で覚悟をしている」
ローは押し黙った。それが片腕を失ってまで海賊王を目指す男の、右腕の回答だった。そう、だから油断ができない。こいつらには負けられないと思う。
「まァ、よそはよそ、うちはうちだからな。それぞれの船長の考え方があって、クルーはそれに惹かれて仲間になる。そういうモンだろう」
「……キラー屋」
「なんだ?」
「お前、やはりおれのことガキ扱いしてねェか」
言うとキラーはまた一笑いした。悪人じみた笑い方だし、どういう感情で笑っているのかも掴めないし、おまけに顔すら見せていない。だが、これは普通に面白がって笑ってやがる、と付き合いの短いローにもわかる笑い方であった。
「いや?……お前のことは、ちゃんとキッドのダチだと思っている」
「……それはガキ扱いって言うんじゃねェか?」
「違うのか?」
こいつ。ローはキラーをねめつけたが、当然あまり意味はないようだった。