短文置き場

半→ロナ

2020/08/20 00:10
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「ほんと……おまえ……ふざけんなよ……」
怒りに低くなるロナルドの声に、思わずくちはしを釣り上げてしまう。今日の嫌がらせはロナルドの大事な退治人衣装にたっぷりセロリ汁をかけるというもので、当然ながらロナルドは肩を震わせている。握った拳の手の甲に浮き出た血管。避けようとしたが、避けられなかった。
そうして俺は今日もロナルドの事務所のガラスの破片と共に路上に叩きつけられる。


「3人で飲みに行こうぜ!」
「やだよどうせまたなんか企んでんだろ」
「いやいやー、今回は本気だって」
「いやだどうせまたわらわれる」
「この前取材相手に教わった店なんだけど、横浜の……」
遅番が終わると、高校時代の同級生……もとい腐れ縁のライングループがそれなりに盛り上がっていた。といってもメンバーは俺を除けばカメ谷とロナルドだけだ。ふたりがやいやい言い合っていただけだとも言える。
「半田もくるだろ?」
既読数で俺が読んだことを察したカメ谷がわざわざ名指ししてくる。こういうのが早いのが、マスコミでいきる男の性なのだろうか。
その後も諸々やりとりをし、結局来週飲みに行くことになった。それはいい。よくあることだ。
いや、俺が僅か気にしているのはそういうことじゃない。たった半日前に嫌がらせをしてさんざ俺に怒りを表明していたロナルドが、平気でこの話に乗ってきたことだ。
俺が逆の立場なら、恐らく俺は俺を蛇蝎のごとく嫌っていただろう。日々何かと嫌がらせをしてくる相手だ、避けるなり訴えるなりする。それがロナルドは、こうして俺も参加する飲みの誘いにも平気で乗っかる。
そうされることで俺がどう感じるのかなんてお構いなしだ。俺が――胸のすみで、忸怩たる屈辱を味わっているなど、こいつは気がついてもいない。
好きの反対は嫌いでさなく無関心。無関心というにはロナルドはこちらに構ってくるが。
そうされるごとにこの男には勝てないことを突きつけられることが、俺を掻き立てていることなど、ロナルドは知らないのだろう。

コメント

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  • もぐ (非ログイン)2020/08/27 08:54

    宵さんの半→ロナ好きです

    • 2020/11/08 22:58

      もぐ様
      コメントありがとうございます!半ロナ、カップリングとしてすごく好きなのですが、未だにふたりの互いに対する感情が未知数で怖いカプです…