シルヴァンが10歳に戻る話
目が開けると、また見慣れない天井が目に入る。
シルヴァンはかぶりを振って、上半身を持ち上げる。家の自室でうとうとしていたと思ったのに、突然知らない場所に立っていたのは二日まえのことだった。目の前には背の高い金髪の男が立っていて、ディミトリだと名乗った。ディミトリといえば年下の幼馴染だ。そして、子どもの頃から彼のための騎士になれと言われている将来の主君ーー。
周囲に大人たちが集まって言うには、俺は十年後に来てしまったのだという。そしてここはガルグ=マク大修道院らしい。
目の前のひとたちが、今から十年後の殿下や、フェリクスや、イングリットだというのは、ちゃんと理解できていた。背も伸びて髪型も声も話し方も変わっているけれど、瞳の色や髪の色は同じだし、顔立ちにも面影がある。そして、いつもならここに、二十歳の俺がいるのだと言う。
あと十年も生き延びてしまうのか、おれは。
ということは、俺はいまから十年、兄上に殺されかけながら、結局生き延びてしまったのだと言うことになる。それが恐ろしくて仕方がない。つい数日前、井戸に突き落とされた。いったい次は何をされるのだろう。その次は?
もう、今すぐにだって終わらせたかった。何度も何度も、明日なんか必要ないと女神に祈りながら眠っていたはずのに、その願いは叶わずに、目を開けたら十年経っていたなんて。
シルヴァンは深く息を吐いた。まあ、ここには兄はいないし、ディミトリたちやあの「先生」も自分を傷つけようとはしないだろう。ならばここにいるのもやぶさかではないだろう。
二十歳の自分はどこへ行ってしまったのだろう。イングリットの話では、そこそこに槍を使えるようになっていたというから、俺のかわりに兄上を倒して……、いや、兄上は、俺が兄上から夢だの尊厳だのを奪ってしまったのだから、その上倒してしまうわけにもいかないだろう。
シルヴァンは毛布を握ってかぶりを振る。
「シルヴァン? 起きてるか?」
扉の向こうでディミトリの声がする。シルヴァンはひとつ咳払いをして、「起きてます」と答えた。
「着替えを持ってきたんだが」
シルヴァンが寝台を降りると、ディミトリがそう声をかけてくる。昨日からずっと最初に着ていた服を着続けていたので、それはありがたい。シルヴァンは扉を開けた。
「おはよう、シルヴァン」
「おはようございます、殿下」
ディミトリの腕には確かに紙の包みがある。シルヴァンがそれを両手で受け取ると、ディミトリは「着替えたら朝食に行かないか」と声をかけた。シルヴァンは「わかりました」と頷いてから少し首を傾げて「顔を洗ってきてからでもいいですか」と笑った。
*
「殿下、シルヴァンの服を買ってきました」
街へ行ってシルヴァンの服を調達してくるようを頼んだメルセデスとアネットが部屋にやってきたのは、昨日の夕食のあとだった。シルヴァンももう隣の自室に返してしまっている。
「ありがとう。悪かったな」
「いいのよ~。シルヴァンが気に入ってくれるといいのだけれど~」
「じゃあ……」
夜も遅いしすぐに戻るだろうとディミトリは声をかけようとしたが、目の前のふたりが目配せをして、それからメルセデスが少し眉を寄せたのでどきりとした。
「ディミトリ、ちょっといいかしら?」
メルセデスがこういう表情をするのは珍しい。ディミトリは思わず二度瞬きをしてメルセデスの顔を見た。
「白魔法はかけた相手の生命力を引き出して、怪我の治癒を早めるってことは、知ってるわよね~?」
「あ、ああ、それは知っている」
それは士官学校に入るような人間でなくても、この世界で生きているなら誰でも知っているようなことだ。なぜわざわざこんなことを。ディミトリは頷きながら訝しげな顔をつくった。
「シルヴァンの怪我は治ってなかったでしょう。お家の修道士に白魔法をかけてもらったって言ってたのに」
ディミトリは昼間に見た包帯を巻いたシルヴァンの腕を思い出す。頬と腕、少なくとも二箇所は怪我をしていたし、服に覆われているところにもまた、それがないとは限らない。さっきも考えたことだった。
「その修道士の能力が低かったという話ではないのか」
「ゴーティエの家に、子どもの怪我も治せないような修道士がいますか?」
「…………、」
アネットの言うことはもっともで、ディミトリは反論できなかった。そうだ、おかしな話だ。シルヴァンの実家――ゴーティエ領は隣国との境にあり、王国の中でも特に兵備に力を入れている。使えない人間が登用され、ましてや嫡子の怪我の治療に当たるとは思えない。反論できずにいると、メルセデスが目を細めた。
「たぶん、シルヴァンはどこかで怪我を治したくないと思っているのよね〜」
「さっきも言ったけど、白魔法って、結局本人の生命力を高めるためのものだから。本人が治らなくていいって思ってると、効きづらくなるんです」
「そんなことがあるのか?」
「滅多にはないですけど……」
アネットが目を伏せる。あの頃の、たった十歳のシルヴァンに、怪我を治したくないなどと思うようなことがあったのだろうか。どれだけ記憶をたどっても、子どもの頃のシルヴァンは、いつも笑っていたような気がする。治らなくていい。なぜそんなことを考える必要がある?
遊んでいて井戸に落ちた。当時大人たちもそう言っていたから間違いないはずなのだ。本当は、そうではないのか?
「ディミトリは、シルヴァンがそう考えるような心当たりがあるかしら?」
「わからない、子どもの頃のシルヴァンが、どう思っていたかなんて、俺には……」
「ディミトリも小さかったから当たり前よ、ごめんなさいね。でも少しだけ気にしてあげてね~」
メルセデスがやんわりと笑う。ディミトリは頷いて礼を言った。シルヴァンのところに服を届けがてら話を聞きに行こうか。いや、もう夜も遅い。きっと疲れ切っているシルヴァンはもう眠っているだろう。ディミトリはかぶりを振った。服の包を机に置いて、ベッドに寝転ぶ。幼い頃のシルヴァンを思い出すために目を閉じた。
*
「殿下、どうかしましたか?」
シルヴァンに声を掛けられて、ディミトリははっと我に返った。昨日メルセデスやアネットに言われたことを考えていた。スプーンを片手にしたシルヴァンが、訝しげにこちらを見ている。薄い茶色の瞳は二十歳の彼とまったく同じ色をしている。
「ああ、いや、なんでもないんだ」
「殿下、昔より好き嫌い多くなってませんか?」
「そんなことはないぞ」
言いながらスープを一口食べる。昔から出されたものはきちんと食べるようしつけられてきた。痩せた土地でやっと取れた作物だ。民がつくったものを残すべきではない、というのが父王の主張だった。今となってはーー好きな食べ物も嫌いな食べ物もあまりないのだが。
「シルヴァン」
「なんです?」
「早くもとに戻りたいか?」
ディミトリの質問に、シルヴァンが目を見開く。それからすぐにシルヴァンは笑ってみせた。
「そりゃあ、もちろん」
そうだ、笑っている。なのにこのシルヴァンは、口端が引きつっているように見えた。いつだって笑っていた幼馴染。十歳のころも、二十歳になっても。ディミトリはシルヴァンが泣いているところを見たことがない。
「……なんとか戻る方法を探さないとな」
「はい」
本当は戻りたくないのか。ここにいたいのか。十歳のお前が恐れているものはなんだ。あの頃の俺たちはそれに気が付かなかったのか。
尋ねればいいのだろう。だがディミトリにはできなかった。言えばシルヴァンはまた無理して笑うのだろうと思ったからだ。
「きっと先生たちが見つけてくれるさ」
努めて明るい声を出す。シルヴァンは少しだけ眉を寄せて「そうですね」と頷いた。
*
フェリクスは隣に座っているシルヴァンを見た。一昨日の夜から十年前の姿に戻ってしまった歳上の幼馴染は、変わらず子どもの姿のままだ。座学の授業中は、書庫から持ってきたという本を読んでいたが、午後の陽気のせいか、机に突っ伏して眠ってしまっていた。メルセデスがいつも身につけている外衣を肩にかけてやったが、それでも起きなかった。どうやらベレスも起こす気はないらしい。
今日の放課後も、自分たちはシルヴァンの相手をすることになるのだろう。仕方のないことだが、鍛錬の時間が目減りしてしまうことと、ディミトリとかつてのように仲が良いことを装わなければいけないことは、フェリクスにとって憂鬱だった。
それにーー。
今節の末には、あの課題がある。自領で跋扈する盗賊の討伐だ。そしてその盗賊の首領はシルヴァンの実兄である。いまのシルヴァンには当然それを伝えていないが、もし月末までシルヴァンがこのままだったら、こちらがどう隠そうともシルヴァンはそれを知ってしまうだろう。そうなる前に、シルヴァンを十年前に返さなければいけない。こんなおかしなことができるのは何らかの魔法だとあたりをつけた担当教師とメルセデスとアネットが原因を調べているが、自分もそちらに加わったほうがいいのではないか。フェリクスは魔法はむしろ苦手だが、例えば聞き込みをするくらいのことはできる。シルヴァンの世話を焼くのではなく、そちらのほうがまだ安寧を得られるような気がした。ディミトリや十歳のシルヴァンのそばは、どうにも居心地が悪い。ディミトリやイングリットは兄貴分を弟のように扱えることに楽しみを見出しているようだが、そもそもフェリクスは子どもが苦手だった。
おおかた妙な振り方をした女に恨まれて、妙な呪いを受けたのだろう。フェリクスは頬杖をつくと黒板のほうに目を向けた。すると、後ろから背中をつつく指がある。振り返ると、イングリットが折りたたまれた紙を渡してきた。「殿下から」という走り書きがある。おそらくシルヴァンには見せないほうがいいものなのだろう。シルヴァンがまだ眠っていることを確認して、紙を開く。
「メルセデスとアネットが言うには白魔法で怪我が治せない場合、対象者が怪我の治癒を拒んでいることがあるらしい。シルヴァンがそう思っているという心当たりはあるか」
ディミトリの流れるような筆跡を見つめて、フェリクスは眉を寄せた。紙を折りたたみ教科書の最初の頁に挟むと、そのような、心当たりなど。
――ひとつもない。
*
「シルヴァン様、腕を」
女修道士はシルヴァンの手をとり、白魔法を発動した。井戸に落ちたときに石組みの井筒で擦りむいた腕を、淡い光が包む。シルヴァンは呆然とその光を見つめた。しばらくそうしているうちに、次第に光が小さくなっていき、それからふっと消える。
修道士は、シルヴァンの腕に残る傷を見て息を呑んだ。決して魔法は失敗していなかったはずだ。しかし、その傷は魔法をかける前となにも変わっていない。そんなはずはない。
「もう一度……」
シルヴァンは再び腕が光るのを、今度は見たりしなかった。結果はもうわかっていた。きっと今度も治らない。
「…………」
この修道士には、幼いころから何度も怪我を治してもらっている。シルヴァンはなんとかうまい言い訳を考えているつもりだが、おそらく彼女には自分がことあるごとに兄によって怪我をさせられていることに気がついているだろう。
修道士は眉を寄せた。以前は彼女の手にかかればシルヴァンの怪我はすぐに治ったのだ。なのに、最近は治りが悪いと思っていた。この前伸ばしていた髪を兄に燃やされたときの火傷も、まだ項に残っている。そして、今日は治ろうとすらしない。兄に突き落とされた井戸から引き上げられて、ようやく助かったのに。どうでもいい、とすら思ってしまう。
だけど、俺の怪我が治らないせいで、この人が騎士団を解雇されたりしたらいやだなあ。シルヴァンは女修道士の顔を見上げた。彼女は口元を手のひらで覆って、何事かを考えているようだった。
「あの……」
シルヴァンが声をかけると、修道士は我に返って微笑んで見せた。
「軍医を呼んできましょうね、シルヴァン様」
立ち上がる彼女に頷く。ベッドにからだを横たえて、目を閉じた。
その後も何人かの修道士がシルヴァンに白魔法をかけては首を横に振った。結局軍医が薬を塗って包帯を巻き直す程度の治療を受ける日々を過ごしながら、本を読んで過ごす。部屋にこもっていれば、兄はこちらを痛めつけることはできなあった。おそらく扉の向こうには見張りが立っているだろう。両親はシルヴァンに対してひどく過保護だ。――それを兄は揶揄してお嬢様、などと呼ぶ。
ふと外が見たくなって、シルヴァンは読んでいた本を枕元に置いた。寝台から降りると、捻ってしまった足首が鈍く痛む。それを引きずるようにして、窓際へと向かった。錠を外して外を見る。シルヴァンの部屋は屋敷に二階だ。空は青く、遠くに見える山は瑞々しい緑色で、眩しいくらいだった。それから、地面を見る。すぐ下は芝生だった。
ここから落ちたらどうなるんだろう。
そう想像すると、胸の内がひやりと冷たくなる。この程度の高さなら死なない? いや、怪我をしている今ならあるいは。無意識のうちに身を乗り出そうとした。
「シルヴァン様!」
叫び声に振り返ると、あの女修道士だった。彼女はこちらに駆け寄ってくると、シルヴァンのからだを抱え込み、窓から引き剥がす。
「……お可哀そうに」
彼女はそう呟いた。可哀想、おれは可哀想なのか。本当に可哀想なのは兄上なのに、この人もそんなことを言うのか。シルヴァンは女の腕から逃れようともがいたが、力の入らない手足では無意味だった。
「やだ」
シルヴァンの声は震えていた。修道士の顔が迫ってくるのに、目を逸らせない。彼女の唇と自分の唇が合わさるのを、ただ受け入れることしかできなかった。
*
授業が終わったところで、フェリクスはシルヴァンを起こすためにその肩を叩いた。
「シルヴァン、寝るなら部屋で――」
「……ん、」
机に突っ伏していたので表情はわからなかったが、顔を覗き込むとどうやらあまり夢見がよくないらしい。はやく起こしてやったほうがよさそうだ。フェリクスはもう一度シルヴァンの肩を揺らした。
「おいシルヴァン、起きろ」
「……」
シルヴァンがからだを持ち上げた。ぼんやりとした表情でフェリクスを見上げる。
「グレン」
死んだ兄の名前を呼ばれて、フェリクスはかぶりを横に振った。
「俺はグレンではない」
そう言ってみるものの、シルヴァンは未だぼんやりとしている。子どもの寝起きとはこのようなものだったか。そも、今のシルヴァンからしてみれば現実のほうが夢のようなもので、こんな顔になるのも致し方ないというところか。フェリクスは腕を組んでため息をつく。シルヴァンは二、三瞬きをした。
「……フェリクス」
「ああ」
ようやく覚醒してきたらしいシルヴァンが目を擦った。子どもらしい幼い仕草だ。フェリクスは安堵し、ディミトリかイングリットに引き渡そうと彼らに声をかけるために教室を見回した。
「フェリクス」
「なんだ」
「おれの兄上は、どうしてるか知ってる?」
フェリクスは目を見開いた。シルヴァンの兄、マイクラン。幼い頃、シルヴァンはグレンとも仲が良かったが、フェリクスはマイクランと殆ど会話をしたことがなかった。そして今月の末、自分たちは課題として彼を討伐に行くのだ。
「……知らん」
そう答えるのがやっとだった。シルヴァンはいぶかしく思ったようだったが、追求してくることはなかった。教科書を抱えたディミトリとイングリットが「今日の放課後は厩舎に行かないか」と言いながら近づいてくる。この場から離れたかったフェリクスはふたりにシルヴァンを任せようと思った。
「俺は行かん」
「フェリクス」
イングリットが咎めるように眉を寄せる。
「俺もメルセデスたちのほうに加わる」
「あなた魔法できないでしょう」
そう言われると反論しづらい。しかしフェリクスは腕を組んだまま頷かなかった。
「なんだかフェリクス、偉そうになったよな」
シルヴァンがそうつぶやき、ディミトリは思わず吹き出してしまう。フェリクスは自分の顔が熱くなるのを自覚して、踵を返した。
*
「時を操る魔法など、まるで神のような所業じゃのう」
書庫で本を探していたベレスに、幼い少女が声をかけてくる。
「お主の天刻の拍動とはまた違うが……、人が手に入れるべき力なのじゃろうか」
ソティスの声はベレスにしか聞こえない。書庫にはメルセデスやアネット、フェリクスのほかにも数人の生徒がいて、ここでソティスに返事をするのも躊躇われる。ベレスはしかし、ソティスの言うことには同意せざるを得ない。これまで傭兵、そして教師として目にしてきた魔法は、炎や雷、氷を出すとか、相手を癒やすとか、あるいは空間を転移する程度のものだ。あるいは――ベレスが持つ時を巻き戻す力はソティスから与えられたもので魔法とはまた違うものだが、戻したところで周囲の人間がそれを知覚することはできない。実は時を操ることができる人間は多くいるが、誰もそれに気がついていないだけだとか?
「考えれば考えるだけわからなくなるのぉ」
ソティスがため息をつく。ベレスは本に視線を落とした。もっと自分も魔法を学んでおけばよかった。
「あの小童、素行がよくないらしいが、やはり誰かに恨まれでもしたのかの」
それもまたあり得るところがどうにも頭が痛い。シルヴァンは視野が広く仲間にはさりげない気遣いができる生徒だが、そうでない女性に対する彼の行動はまったくひどいものだとも言えた。同じ人間が接する相手を変えるだけで、こうも違って見えるものだとは思わなかった。どうしたものか。ベレスがかぶりを振ると、どうやら書物にまみれることに飽きたらしいフェリクスが、目の前の椅子に座ってこちらをねめつけた。
「彼奴にかけられた魔法を探すより、術者を探したほうが早いのではないか」
「あらフェリクス~、術者がこちらにいるとは限らないじゃない?」
通りがかったメルセデスが微笑む。フェリクスは片眉を跳ね上げた。
「どういうことだ?」
ベレスもメルセデスのほうを見る。
「二十歳のシルヴァンが魔法で十歳になってしまったのならここに術者がいるかもしれないけれど~、もしかしたら十歳のシルヴァンが魔法でここに送り込まれたのかもしれないじゃない?」
フェリクスが目を見開く。そんなことは考えたこともなかった。三人が集まっているのを見たアネットもやってくる。
「フェリクス、なにか知らない? シルヴァンの十歳の頃のこと」
授業中にディミトリから回ってきた紙を思い出す。「シルヴァンが怪我の治癒を拒んでいる」ということ。覚えているはずもない。フェリクスがかぶりを振ると、不意にベレスが立ち上がった。
「もう少しシルヴァンに話を訊こう」
「 奴らは厩舎に行ったぞ」
「先生、あまり大勢で行ってもシルヴァンを怖がらせちゃうんじゃないかな」
「そうね、アンと私はもう少しここで調べてみるわ~」
ベレスは頷いた。魔法が苦手なフェリクスもどのみち調べ物には向いていない。アネットとメルセデスの目配せに従い、ベレスを追った。