厄災前の英傑達の物語を聞いて育った少女の物語。
出会い〜旅立ち
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「あ、そっちにバッタいきました!」
「えっどこ?」
「あ〜!いま足元にいる!リンクさんの足の間!」
「あ、ホントだ…」
二人はハテノ村近くの丘でバッタをとっていた。
今のところの成果は4匹である。
「あと、1匹ですね!」
「うん、バッタはすばしっこいし、手伝ってくれて助かる」
「お役に立てて嬉しいです!」
ラケルが本当に嬉しそうに笑うので、リンクはなんだかこそばゆくなって少しはにかんだ。
少しだけ休憩しようとラケルが座り込んだので、リンクもそれに倣い少し間を空けて隣りに座った。
「あの…聞きたいことがあるんですけど…」
「うん、なに?」
「変なことを聞くかもしれないんですけど…リンクさんは、どうして旅を?」
リンクの目を見たときから、この剣士が物見遊山で旅をしているわけではないのだろうとラケルは思っていた。
「……」
やはりこんなプライベートなことを聞いてはまずかっただろうかと慌ててラケルが口を開こうとした直前、リンクがおもむろに口を開いた。
「…ゼルダ姫を、助けたい。……いや、助けなければ、ならない…かな」
ラケルは心底びっくりした。
ゼルダ姫といえば、昔の厄災の話を両親から聞いたときに出てくる、英傑と共にいた姫の名前だ。
「ゼルダ姫って…あの、100年前の…」
「そう、らしいね。」
「らしいね…って…リンクさんはどうして」
厄災は、終わったのではなかったのか?
なぜそんな昔のことをリンクは追うのか?
ラケルとの頭の中は疑問でいっぱいだった。
「……俺には、記憶がない、、」
「え…」
「だから俺にも実感はあまりないし…信じてもらえるかわからないけど、俺は100年間眠っていたらしい。その間に、記憶を失ってしまったようなんだ」
「ええっ」
ラケルはまたひどくびっくりした。だが、リンクの横顔からは嘘をついているような気配は全くなかった。
「じゃあ…まさかリンクさんは、100年前の…英傑…なの?」
「そう…なのかな。俺も、正直にいって、覚えていないから、そう聞いたとしか言えないんだけれど」
「誰に聞いたんですか?」
「……大厄災で崩御された、ハイラル国王の亡霊に…かな……。こんな話、信じられないよな」
リンクは空を見上げて続けた。
「でも、女の人の声が聞こえて…それに導かれて目覚めたんだ。最初はわからなかったけど、いまはそれがゼルダ姫の声だとわかる。姫は100年間…こうしている今もずっと、ガノンの怨念を城で抑え続けている。そして俺はなぜだか目覚めてすぐに剣の扱い方がわかったし、魔物を見れば倒し方も身体が覚えていた。俺はその過去の英傑なんだと思う…」
風が吹き抜けていく。
静かで少し落ち込んだリンクの声とは裏腹に、空はどこまでも晴れ渡っていた。
「なんだろう…こんな話、今まで誰かに話そうとなんてしなかったのに、きみには…」
そう言って、ラケルを見ると今度はリンクがびっくりした。ラケルは、下を向いて唇をかみしめ、目には涙をためていた。
「え?どうしたの!?なんか、嫌なこと…」
「そんな…」
ラケルの瞳から、涙がひとつ、草の上にしずくを作った。
「覚えてもいないのに、いきなり誰も自分を知らないところで、姫を、この国を、救えって……リンクさんは、辛くないんですかっ?」
「え…いや、その…」
リンクは困った。当然のように世界を救えと言われて、それが自分でも当然のように受け入れてしまっていたので、辛い辛くないで考えたことなどなかった。
「そんなの…私だったら、寂しくて辛くて、しんどいに決まってます…!」
「……そう、かもね。だけど…」
「そのお姫様は、お気の毒だと思いますけど、その王様のおばけさんは、なんだか……。。リンクさんだって、英傑だって、どんなに強くっても…リンクさんは私達と変わらない、一人の人間なのに…っ」
リンクは目を見開いて、ラケルを見た。
顔を真っ赤にして、怒りややるせなさと戦う目の前の少女は、目を腕でゴシゴシと拭ったかと思えば、勢いよく立ち上がった。
「わたし…宿に戻ります。リンクさんの、ごはん…つくる」
そう言って、ラケルはリンクに笑顔を向けた。
「待ってますから…楽しみに待っててくださいね」
走り去るラケルの背中が見えなくなると、リンクは背中から倒れ、空を仰いだ。
頭の中には、ラケルの泣きそうな顔と、言葉が浮かんでいた。
「俺も、一人の人間…か」
目の前を、バッタが飛び越えていった。
「えっどこ?」
「あ〜!いま足元にいる!リンクさんの足の間!」
「あ、ホントだ…」
二人はハテノ村近くの丘でバッタをとっていた。
今のところの成果は4匹である。
「あと、1匹ですね!」
「うん、バッタはすばしっこいし、手伝ってくれて助かる」
「お役に立てて嬉しいです!」
ラケルが本当に嬉しそうに笑うので、リンクはなんだかこそばゆくなって少しはにかんだ。
少しだけ休憩しようとラケルが座り込んだので、リンクもそれに倣い少し間を空けて隣りに座った。
「あの…聞きたいことがあるんですけど…」
「うん、なに?」
「変なことを聞くかもしれないんですけど…リンクさんは、どうして旅を?」
リンクの目を見たときから、この剣士が物見遊山で旅をしているわけではないのだろうとラケルは思っていた。
「……」
やはりこんなプライベートなことを聞いてはまずかっただろうかと慌ててラケルが口を開こうとした直前、リンクがおもむろに口を開いた。
「…ゼルダ姫を、助けたい。……いや、助けなければ、ならない…かな」
ラケルは心底びっくりした。
ゼルダ姫といえば、昔の厄災の話を両親から聞いたときに出てくる、英傑と共にいた姫の名前だ。
「ゼルダ姫って…あの、100年前の…」
「そう、らしいね。」
「らしいね…って…リンクさんはどうして」
厄災は、終わったのではなかったのか?
なぜそんな昔のことをリンクは追うのか?
ラケルとの頭の中は疑問でいっぱいだった。
「……俺には、記憶がない、、」
「え…」
「だから俺にも実感はあまりないし…信じてもらえるかわからないけど、俺は100年間眠っていたらしい。その間に、記憶を失ってしまったようなんだ」
「ええっ」
ラケルはまたひどくびっくりした。だが、リンクの横顔からは嘘をついているような気配は全くなかった。
「じゃあ…まさかリンクさんは、100年前の…英傑…なの?」
「そう…なのかな。俺も、正直にいって、覚えていないから、そう聞いたとしか言えないんだけれど」
「誰に聞いたんですか?」
「……大厄災で崩御された、ハイラル国王の亡霊に…かな……。こんな話、信じられないよな」
リンクは空を見上げて続けた。
「でも、女の人の声が聞こえて…それに導かれて目覚めたんだ。最初はわからなかったけど、いまはそれがゼルダ姫の声だとわかる。姫は100年間…こうしている今もずっと、ガノンの怨念を城で抑え続けている。そして俺はなぜだか目覚めてすぐに剣の扱い方がわかったし、魔物を見れば倒し方も身体が覚えていた。俺はその過去の英傑なんだと思う…」
風が吹き抜けていく。
静かで少し落ち込んだリンクの声とは裏腹に、空はどこまでも晴れ渡っていた。
「なんだろう…こんな話、今まで誰かに話そうとなんてしなかったのに、きみには…」
そう言って、ラケルを見ると今度はリンクがびっくりした。ラケルは、下を向いて唇をかみしめ、目には涙をためていた。
「え?どうしたの!?なんか、嫌なこと…」
「そんな…」
ラケルの瞳から、涙がひとつ、草の上にしずくを作った。
「覚えてもいないのに、いきなり誰も自分を知らないところで、姫を、この国を、救えって……リンクさんは、辛くないんですかっ?」
「え…いや、その…」
リンクは困った。当然のように世界を救えと言われて、それが自分でも当然のように受け入れてしまっていたので、辛い辛くないで考えたことなどなかった。
「そんなの…私だったら、寂しくて辛くて、しんどいに決まってます…!」
「……そう、かもね。だけど…」
「そのお姫様は、お気の毒だと思いますけど、その王様のおばけさんは、なんだか……。。リンクさんだって、英傑だって、どんなに強くっても…リンクさんは私達と変わらない、一人の人間なのに…っ」
リンクは目を見開いて、ラケルを見た。
顔を真っ赤にして、怒りややるせなさと戦う目の前の少女は、目を腕でゴシゴシと拭ったかと思えば、勢いよく立ち上がった。
「わたし…宿に戻ります。リンクさんの、ごはん…つくる」
そう言って、ラケルはリンクに笑顔を向けた。
「待ってますから…楽しみに待っててくださいね」
走り去るラケルの背中が見えなくなると、リンクは背中から倒れ、空を仰いだ。
頭の中には、ラケルの泣きそうな顔と、言葉が浮かんでいた。
「俺も、一人の人間…か」
目の前を、バッタが飛び越えていった。