厄災前の英傑達の物語を聞いて育った少女の物語。
出会い〜旅立ち
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「あ…と、その、君はこの宿の人?」
「あっ、はい!えと、なにかご用ですか?」
すこし構えたように話しかけてきた彼に、ラケルはなぜだかどぎまぎした。こんなに真っ直ぐな光を湛えた目を、彼女はまだ見たことがない。
「ツキミさんって、いるかな?」
「ツキミは、私の姉ですが…姉にご用でしたか?」
剣士は頷いた。口数の少ない人だ。
姉に用事と聞いて少しラケルはがっかりしたが、すぐに気を取り直して姉を呼びに行った。
「お姉さま、お客様がロビーでお呼びなのだけど…」
「え、リンクさんが?わかった、すぐに行くわ。」
リンク、というのか。
剣士の名前を知れたのは嬉しいけれど、本人の口から聞きたかったような、なんとなく複雑な気持ちを抱えつつも、姉にどんな用があったのか気になる。ついていってみよう。
「お待たせしました。どうされましたか?」
「あなたがツキミさん?」
「ええ。」
「変なことを聞くかもしれないが、あなたはどんなものが好きなのだろうか」
「はっ?」
ラケルは、またがっかりした。
なんだ、またお姉さまに一目惚れしたクチかしら。
この宿に来た男性客で妙齢の姉に惚れ込む男は少なくないので、それ自体に驚きはなかった。
だが、なんだか浮世離れして見える剣士は、他の男とは違う空気を感じていたため、結局同じかと思ったのだ。
「私の好きなものは…バッタでございます」
ぶっ!
ラケルはつい吹き出してしまった。
「ガンバリバッタ100匹に囲まれて暮らせたら夢のようですわ」
(お姉さま…それはないでしょう…)
「わかった。…ありがとう」
そう言って、剣士は再び玄関から出ていった。
「ねえお姉さま…そんなにバッタが好きだったの?私、知らなかった」
「そんなわけないでしょう。適当にあしらっただけよ。」
「そんなこと言って、本気にされたらどうするのよ…」
「まさか、いくらなんでもガンバリバッタを100匹も捕まえられるわけないでしょう。硬派な人に見えたのにビックリだわ…。あなたも年頃になってきて、声をかけてくる男も増えてきたし、気をつけてね。」
「私は大丈夫よ…」
まったく姉も心配性なのだから、と軽くため息をつき、外に出てみると、厩のところで剣士がマンサクと話をしていた。
「友達の友達にガンバリバッタを10匹分けてやってくれ!礼は弾むからさ。頼んだぞ!」
マンサクはそう言って坂道を下って見えなくなった。
剣士はふう、とため息をつき、ポーチの中を確認している。
「あのう」
「!…さっきの」
「ラケルです!あなたは?」
「あぁ…俺はリンク」
ラケルが右手を差し出すと、リンクもおずおずと握手を返してくれた。
本人から名前が聞けたことに小躍りしたくなるのを抑え、ラケルは気になったことを聞いてみることにした。
「あの、さっき姉に好きなものを聞いたのは、もしかするとマンサクに頼まれたのではありませんか?」
「ん、いや…その」
剣士…リンクは少し言いよどみ、頬をかいた。
「やっぱり。なんか、リンクさんはそんなこといいそうな感じじゃないなって思っていたんです。お人好しなんですね」
微笑みながらからかわれ、ほんのり頬を染めて目をそらす。
「でもガンバリバッタ、10匹、持ってるんですか?」
「いまは、2匹しか持っていない」
「そうなんですね。…あの、もしよかったら捕まえるの、手伝いましょうか?」
「それは、悪い」
「ここに、3匹のバッタがおります」
そう言って、ラケルはポーチの中を見せた。
それから、ポケットから懐中時計を取り出してみせた。
「夕食の時間まで、まだあと2時間あります。あと1時間したら私は宿に戻りますから、それまでの1時間だけ。どうですか?」
「…それは、ありがたいけれど」
「じゃあ、決まりですね!この近くにたくさんいるところがあるんですよ。こっちです!」
にっこり笑って手招きをするラケル。
少し強引だったかな?と思いつつ、リンクの顔を盗み見ると、困惑しつつも嬉しそうな表情をしていた。
「あっ、はい!えと、なにかご用ですか?」
すこし構えたように話しかけてきた彼に、ラケルはなぜだかどぎまぎした。こんなに真っ直ぐな光を湛えた目を、彼女はまだ見たことがない。
「ツキミさんって、いるかな?」
「ツキミは、私の姉ですが…姉にご用でしたか?」
剣士は頷いた。口数の少ない人だ。
姉に用事と聞いて少しラケルはがっかりしたが、すぐに気を取り直して姉を呼びに行った。
「お姉さま、お客様がロビーでお呼びなのだけど…」
「え、リンクさんが?わかった、すぐに行くわ。」
リンク、というのか。
剣士の名前を知れたのは嬉しいけれど、本人の口から聞きたかったような、なんとなく複雑な気持ちを抱えつつも、姉にどんな用があったのか気になる。ついていってみよう。
「お待たせしました。どうされましたか?」
「あなたがツキミさん?」
「ええ。」
「変なことを聞くかもしれないが、あなたはどんなものが好きなのだろうか」
「はっ?」
ラケルは、またがっかりした。
なんだ、またお姉さまに一目惚れしたクチかしら。
この宿に来た男性客で妙齢の姉に惚れ込む男は少なくないので、それ自体に驚きはなかった。
だが、なんだか浮世離れして見える剣士は、他の男とは違う空気を感じていたため、結局同じかと思ったのだ。
「私の好きなものは…バッタでございます」
ぶっ!
ラケルはつい吹き出してしまった。
「ガンバリバッタ100匹に囲まれて暮らせたら夢のようですわ」
(お姉さま…それはないでしょう…)
「わかった。…ありがとう」
そう言って、剣士は再び玄関から出ていった。
「ねえお姉さま…そんなにバッタが好きだったの?私、知らなかった」
「そんなわけないでしょう。適当にあしらっただけよ。」
「そんなこと言って、本気にされたらどうするのよ…」
「まさか、いくらなんでもガンバリバッタを100匹も捕まえられるわけないでしょう。硬派な人に見えたのにビックリだわ…。あなたも年頃になってきて、声をかけてくる男も増えてきたし、気をつけてね。」
「私は大丈夫よ…」
まったく姉も心配性なのだから、と軽くため息をつき、外に出てみると、厩のところで剣士がマンサクと話をしていた。
「友達の友達にガンバリバッタを10匹分けてやってくれ!礼は弾むからさ。頼んだぞ!」
マンサクはそう言って坂道を下って見えなくなった。
剣士はふう、とため息をつき、ポーチの中を確認している。
「あのう」
「!…さっきの」
「ラケルです!あなたは?」
「あぁ…俺はリンク」
ラケルが右手を差し出すと、リンクもおずおずと握手を返してくれた。
本人から名前が聞けたことに小躍りしたくなるのを抑え、ラケルは気になったことを聞いてみることにした。
「あの、さっき姉に好きなものを聞いたのは、もしかするとマンサクに頼まれたのではありませんか?」
「ん、いや…その」
剣士…リンクは少し言いよどみ、頬をかいた。
「やっぱり。なんか、リンクさんはそんなこといいそうな感じじゃないなって思っていたんです。お人好しなんですね」
微笑みながらからかわれ、ほんのり頬を染めて目をそらす。
「でもガンバリバッタ、10匹、持ってるんですか?」
「いまは、2匹しか持っていない」
「そうなんですね。…あの、もしよかったら捕まえるの、手伝いましょうか?」
「それは、悪い」
「ここに、3匹のバッタがおります」
そう言って、ラケルはポーチの中を見せた。
それから、ポケットから懐中時計を取り出してみせた。
「夕食の時間まで、まだあと2時間あります。あと1時間したら私は宿に戻りますから、それまでの1時間だけ。どうですか?」
「…それは、ありがたいけれど」
「じゃあ、決まりですね!この近くにたくさんいるところがあるんですよ。こっちです!」
にっこり笑って手招きをするラケル。
少し強引だったかな?と思いつつ、リンクの顔を盗み見ると、困惑しつつも嬉しそうな表情をしていた。