厄災前の英傑達の物語を聞いて育った少女の物語。
出会い〜旅立ち
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「…………」
「…………」
「…………………」
次の日、窓から明るい朝日が差し込む中、トンプー亭の食堂には重苦しい空気をまとった3人が席についていた。
ラケルが、どこの馬の骨とも知れぬリンクについて旅に出るなどと聞き、突然のことにはいそうですかと了承するわけもなく、朝食を摂った皿もそのままに、ツキミは、はぁっと大きなため息をついた。
「………話はわかったわ」
「お姉様……突然、わがままを言ってごめんなさい。。でも私、わかったの。小さな頃から付けていたあのペンダント…両親には肌身はなさず付けているように言われて、棍も…自分の身は自分で守れるように鍛錬を怠らないよう言われていたわ。あれは、このためだったのかもしれないって。両親がなぜそれを知っていたのかはわからない…でも、そんな気がするの。だから」
「わかったからちょっと黙ってなさい」
「………はい」
ツキミは目を閉じて眉間を軽く指で揉みながら、またひとつ、大きなため息をついた。
「正直言って、その…昔の王家?の生まれ変わり?だとか、そこのリンクさんが100年眠ってて目が覚めた昔の英傑だっていうのは…よく、わからないわ。信じるのはちょっと難しいわね。ハッキリ言って、あなた騙されてるんじゃないのって思うわ」
「そんな…」
「そんなことはありません」
姉妹のことに口を挟むのもどうかと思いそこまで黙っていたリンクだったが、懐疑的なツキミに思わず反論してしまった。
「だぁって、あなた。その退魔の騎士とやら?なんだったら、退魔の剣はどこにあるの?あなたが持ってるのは、どこからどう見ても、ただの何の変哲もない旅人の剣よ。ちがう?」
「それは…そうですね」
「妹は血がつながっていないとはいえ、私の大事な妹で、ここの貴重な労働力なの。いきなり現れて連れていきますって言われて、はいそうですかって、できるわけないでしょ」
「つまり、退魔の剣があればいいということですか?」
ぐ、とツキミがたじろぐ。
確かにそのようにも取れることは言ったが、そう簡単に実在するかもわからない退魔の剣が見つけられるとでも思っているのだろうか。
「え、ええそうね……。それともう一つ条件があるわ」
「なんですか?」
「この村の外れ、吊り橋を渡った先に廃屋があるの。もうすぐ取り壊される予定になっているけれど、その家を買い取ってきて。家の前に大工さんがいるから、その人と話せばわかってもらえるはずよ。」
ふん、こんな条件飲めるわけがないだろう。
と、ツキミは鼻を鳴らしてツンと顔をそらした。
もし万が一できたとしても相当先に決まっている。
そうなったらそんな前の約束なんて忘れたと言ってしまえばいいのだ。
いくら廃屋とはいえ、2000ルピーはくだらないはずだ。そんな大金をこんなただの旅人が集められるとは思えない。
「わかりました」
「はっ…はぁ?!わかったって、あなた…!」
リンクは早々に席を立ち、壁に立てかけていた剣やら弓やらを素早く身に着けると、出口である扉に向かって歩いていく。
「リンクさ…」
「2週間」
「!」
ラケルは慌てて追いかけようと席を立ち走ったが、リンクは扉を開き、振り返りもせずに言い放った。
「2週間以内に、すべての条件を満たす」
「……!やれるものなら!」
ツキミは気色みばみ、ふんっとリンクに背を向けて奥の部屋へと行ってしまった。
「り、リンクさん…ごめんなさい、お姉様が…!」
「ラケル」
ラケルは顔を青くしてリンクに謝ろうと頭を下げたが、リンクはその肩に手を置き言った。
「きっと目的を果たして戻ってくるから、それまで待ってて。俺、…きみと旅がしたいんだ」
そう言ったリンクの顔を見て、ラケルの胸が高鳴った。まだ出会って2日だとはいえ、それはラケルにとって初めて見る、リンクの爽やかな笑顔だったからだ。
「はい…私、待ってます。リンクさん、どうかお気をつけて!」
ラケルが笑顔でそう言うと、リンクは外へ向かって駆け出していった。
その背中が見えなくなるまで、ずっと見つめていたラケルなのだった。
「…………」
「…………………」
次の日、窓から明るい朝日が差し込む中、トンプー亭の食堂には重苦しい空気をまとった3人が席についていた。
ラケルが、どこの馬の骨とも知れぬリンクについて旅に出るなどと聞き、突然のことにはいそうですかと了承するわけもなく、朝食を摂った皿もそのままに、ツキミは、はぁっと大きなため息をついた。
「………話はわかったわ」
「お姉様……突然、わがままを言ってごめんなさい。。でも私、わかったの。小さな頃から付けていたあのペンダント…両親には肌身はなさず付けているように言われて、棍も…自分の身は自分で守れるように鍛錬を怠らないよう言われていたわ。あれは、このためだったのかもしれないって。両親がなぜそれを知っていたのかはわからない…でも、そんな気がするの。だから」
「わかったからちょっと黙ってなさい」
「………はい」
ツキミは目を閉じて眉間を軽く指で揉みながら、またひとつ、大きなため息をついた。
「正直言って、その…昔の王家?の生まれ変わり?だとか、そこのリンクさんが100年眠ってて目が覚めた昔の英傑だっていうのは…よく、わからないわ。信じるのはちょっと難しいわね。ハッキリ言って、あなた騙されてるんじゃないのって思うわ」
「そんな…」
「そんなことはありません」
姉妹のことに口を挟むのもどうかと思いそこまで黙っていたリンクだったが、懐疑的なツキミに思わず反論してしまった。
「だぁって、あなた。その退魔の騎士とやら?なんだったら、退魔の剣はどこにあるの?あなたが持ってるのは、どこからどう見ても、ただの何の変哲もない旅人の剣よ。ちがう?」
「それは…そうですね」
「妹は血がつながっていないとはいえ、私の大事な妹で、ここの貴重な労働力なの。いきなり現れて連れていきますって言われて、はいそうですかって、できるわけないでしょ」
「つまり、退魔の剣があればいいということですか?」
ぐ、とツキミがたじろぐ。
確かにそのようにも取れることは言ったが、そう簡単に実在するかもわからない退魔の剣が見つけられるとでも思っているのだろうか。
「え、ええそうね……。それともう一つ条件があるわ」
「なんですか?」
「この村の外れ、吊り橋を渡った先に廃屋があるの。もうすぐ取り壊される予定になっているけれど、その家を買い取ってきて。家の前に大工さんがいるから、その人と話せばわかってもらえるはずよ。」
ふん、こんな条件飲めるわけがないだろう。
と、ツキミは鼻を鳴らしてツンと顔をそらした。
もし万が一できたとしても相当先に決まっている。
そうなったらそんな前の約束なんて忘れたと言ってしまえばいいのだ。
いくら廃屋とはいえ、2000ルピーはくだらないはずだ。そんな大金をこんなただの旅人が集められるとは思えない。
「わかりました」
「はっ…はぁ?!わかったって、あなた…!」
リンクは早々に席を立ち、壁に立てかけていた剣やら弓やらを素早く身に着けると、出口である扉に向かって歩いていく。
「リンクさ…」
「2週間」
「!」
ラケルは慌てて追いかけようと席を立ち走ったが、リンクは扉を開き、振り返りもせずに言い放った。
「2週間以内に、すべての条件を満たす」
「……!やれるものなら!」
ツキミは気色みばみ、ふんっとリンクに背を向けて奥の部屋へと行ってしまった。
「り、リンクさん…ごめんなさい、お姉様が…!」
「ラケル」
ラケルは顔を青くしてリンクに謝ろうと頭を下げたが、リンクはその肩に手を置き言った。
「きっと目的を果たして戻ってくるから、それまで待ってて。俺、…きみと旅がしたいんだ」
そう言ったリンクの顔を見て、ラケルの胸が高鳴った。まだ出会って2日だとはいえ、それはラケルにとって初めて見る、リンクの爽やかな笑顔だったからだ。
「はい…私、待ってます。リンクさん、どうかお気をつけて!」
ラケルが笑顔でそう言うと、リンクは外へ向かって駆け出していった。
その背中が見えなくなるまで、ずっと見つめていたラケルなのだった。
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