厄災前の英傑達の物語を聞いて育った少女の物語。
出会い〜旅立ち
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「ラケル?ラケル、どこにいる?」
草むらに横たわっていた少女は慌てて身を起こした。
どうやら、鍛錬の最中に眠ってしまっていたようだ。
「はい、お姉さま!ここにいるわ」
声を上げると、声の主がこちらにやってきた。
「ラケル、またここにいたのね。悪いけど、今日の夕餉の食材の買い出しを頼みたいのだけど…」
「お姉さま、ごめんなさい!おひさまが気持ちよかったものだから、つい眠ってしまったみたい。すぐに行ってくるわ!」
そう言って、かたわらに置いてあった長い棍を手に取った。柄は木製、両先端に金属の玉の取り付けられた武器だ。
「お願いね!私は先に宿に戻っているから!」
育ての姉の声を背に、丘の斜面を駆け下りる。
空を見ると、日はてっぺんを少し過ぎた頃…13時頃だろうか。そこまで長く眠っていたわけではなさそうだ。途中で見かけたガンバリバッタを数匹、ポーチの中にしまい込む。後で薬を調合しようっと。
「おじさん、こんにちは!」
「ああラケルか、今日も元気がいいね。前に頼んでいたボコブリンの角は手に入ったかい?」
ラケルは小柄で身体も華奢だが、村の中では一番の腕利きなので、こうして魔物から取れる素材を頼まれることもよくあった。
「えぇ、ちゃんと取ってきたわよ。ボコブリンの角を10個だったわよね?ついでに肝も3つほど取れたけど、いる?」
「おお、さすが、助かるな。いつもすまない。じゃあこれ。」
そう言われ、ラケルは100ルピーを受け取った。
「わ!少し多いんじゃない?」
「随分世話になってるからな。それで、今日は何を買いに来たんだ?」
「ありがとう。食材をちょっとね。これと、コレと…あと卵も」
ラケルは並んだ売り物から、客の食事に食材を選び取って代金を払った。
「ありがとな。ところでお前さん、今日は客が来たようだが、金髪に青い目の男だったか?」
「え?あー、私今日出かけていたから、まだお客さまの顔は見ていないの。どうして?」
「そうか。いや、旅の剣士がさっき街を歩いてるのを見かけてな。立派な武器やら盾をかついでいて、少し気になったものだから」
剣士?と、ラケルは首を傾げた。
この村はハテノ村。名前の通り少し辺鄙なところにあり、旅行者はいれど、武器を携えた旅人は珍しい。
「おじさん、ありがとう。また来るね」
「おう!ツキミによろしくな」
ラケルは店を出ると、少し早足でもと来た道を歩いた。金髪に青い目の剣士とやらが少し気になる。
宿に着くと、なるほど厩に馬が繋がれている。
茶色に、白いたてがみの大人しそうな馬だ。
「お姉さま、戻ったわ!お客様が来てるの?」
「おかえりラケル、お疲れ様。そうなの、昼ごろにね。食事の準備を頼んでもいいかしら?」
「もちろん、かまわないわ。お客様はお部屋に?」
「いいえ、さっき出ていかれたわ。夕食の時間までには戻るようにお伝えしておいたから、19時には戻られると思うわよ」
ラケルは少しがっかりした。
なんとなく早くその剣士とやらの顔を見てみたかったのに、とんだ肩透かしだった。
とはいえ後で戻るのならその時に拝顔すればいいかと自分の部屋に棍を置き、仕事着のワンピースに着替えて厨房に入った。
ラケルは昔から料理が得意だった。
一度食べれば忘れられぬ味、という評判でこのトンプー亭の名物にもなっていて、客の料理はいつもラケルの仕事だ。
今日もいつものようにささっと下ごしらえを済ませ、ロビーの掃除でもしようと入っていくと、カウンターの前に見知らぬ剣士の背中が見える。
「あ…今日宿泊のお客さまですか?」
そう声をかけると、剣士がこちらを振り向いた。
「あぁ…この、宿の人…ですか?」
背は高くないものの筋肉の感じられる体躯。少し長めの金髪。大きな剣に盾。
振り返った男は、意思の強そうな蒼い瞳が印象的な剣士だった。
草むらに横たわっていた少女は慌てて身を起こした。
どうやら、鍛錬の最中に眠ってしまっていたようだ。
「はい、お姉さま!ここにいるわ」
声を上げると、声の主がこちらにやってきた。
「ラケル、またここにいたのね。悪いけど、今日の夕餉の食材の買い出しを頼みたいのだけど…」
「お姉さま、ごめんなさい!おひさまが気持ちよかったものだから、つい眠ってしまったみたい。すぐに行ってくるわ!」
そう言って、かたわらに置いてあった長い棍を手に取った。柄は木製、両先端に金属の玉の取り付けられた武器だ。
「お願いね!私は先に宿に戻っているから!」
育ての姉の声を背に、丘の斜面を駆け下りる。
空を見ると、日はてっぺんを少し過ぎた頃…13時頃だろうか。そこまで長く眠っていたわけではなさそうだ。途中で見かけたガンバリバッタを数匹、ポーチの中にしまい込む。後で薬を調合しようっと。
「おじさん、こんにちは!」
「ああラケルか、今日も元気がいいね。前に頼んでいたボコブリンの角は手に入ったかい?」
ラケルは小柄で身体も華奢だが、村の中では一番の腕利きなので、こうして魔物から取れる素材を頼まれることもよくあった。
「えぇ、ちゃんと取ってきたわよ。ボコブリンの角を10個だったわよね?ついでに肝も3つほど取れたけど、いる?」
「おお、さすが、助かるな。いつもすまない。じゃあこれ。」
そう言われ、ラケルは100ルピーを受け取った。
「わ!少し多いんじゃない?」
「随分世話になってるからな。それで、今日は何を買いに来たんだ?」
「ありがとう。食材をちょっとね。これと、コレと…あと卵も」
ラケルは並んだ売り物から、客の食事に食材を選び取って代金を払った。
「ありがとな。ところでお前さん、今日は客が来たようだが、金髪に青い目の男だったか?」
「え?あー、私今日出かけていたから、まだお客さまの顔は見ていないの。どうして?」
「そうか。いや、旅の剣士がさっき街を歩いてるのを見かけてな。立派な武器やら盾をかついでいて、少し気になったものだから」
剣士?と、ラケルは首を傾げた。
この村はハテノ村。名前の通り少し辺鄙なところにあり、旅行者はいれど、武器を携えた旅人は珍しい。
「おじさん、ありがとう。また来るね」
「おう!ツキミによろしくな」
ラケルは店を出ると、少し早足でもと来た道を歩いた。金髪に青い目の剣士とやらが少し気になる。
宿に着くと、なるほど厩に馬が繋がれている。
茶色に、白いたてがみの大人しそうな馬だ。
「お姉さま、戻ったわ!お客様が来てるの?」
「おかえりラケル、お疲れ様。そうなの、昼ごろにね。食事の準備を頼んでもいいかしら?」
「もちろん、かまわないわ。お客様はお部屋に?」
「いいえ、さっき出ていかれたわ。夕食の時間までには戻るようにお伝えしておいたから、19時には戻られると思うわよ」
ラケルは少しがっかりした。
なんとなく早くその剣士とやらの顔を見てみたかったのに、とんだ肩透かしだった。
とはいえ後で戻るのならその時に拝顔すればいいかと自分の部屋に棍を置き、仕事着のワンピースに着替えて厨房に入った。
ラケルは昔から料理が得意だった。
一度食べれば忘れられぬ味、という評判でこのトンプー亭の名物にもなっていて、客の料理はいつもラケルの仕事だ。
今日もいつものようにささっと下ごしらえを済ませ、ロビーの掃除でもしようと入っていくと、カウンターの前に見知らぬ剣士の背中が見える。
「あ…今日宿泊のお客さまですか?」
そう声をかけると、剣士がこちらを振り向いた。
「あぁ…この、宿の人…ですか?」
背は高くないものの筋肉の感じられる体躯。少し長めの金髪。大きな剣に盾。
振り返った男は、意思の強そうな蒼い瞳が印象的な剣士だった。
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