アスラン誕生日2024

(一回でもばれたら説教だろうなぁ)

コンパスの白服の袖から見え隠れする包帯を手でなぞる。

一か月ほど前にあった戦闘で手首をひねってしまったのと、衝撃で首を怪我した。

(これをアスランに見つかればそれこそ強制的にMSに乗せてもらえなくなるかもしれないし...)

相変わらずブルーコスモスは衰えを知らないらしく、コンパスはその火消しで最近は特に戦闘が激しくなっている。

そのせいかちゃんと寝れる時間も無くなってきている。できるだけシンに頼っているつもりではいるのだがやはり無理があるようで、キラも時間を削って書類を片付けながら戦闘に出なければ行けなくなっていた。

自分の部屋に戻って溜息をつく、つい先ほどまで戦闘に出ていたからなのか汗が気持ち悪い。やっとプラントに戻れるのでそれまで寝ていようと、ベッドに身を投げると、すぐ瞼が下がってくる、コンパスの制服が苦しかったので制服の袖と襟を開け眠る。

ミレニアムがプラントに着いたのだろう廊下での人の行き来が激しくなる。

その音に目が覚める。(どうして誰も起こしに来ないんだろう…)と不思議に思っていると、部屋のセキュリティシステムから着信があった。それを見てみると、どうやらシンからのものだった。

入室許可のボタンを押し、気だるい体を無理やり起こす。

「キラさん?プラントに着いたら起こしてってことで起こしに来ましたよー!」

「しん、ありがとうね…」

まだ眠たいめをこする。この後はミレニアムは補給を受けるための引継ぎの連絡をするだけだ。しかもそれはコノエ艦長がやってくれるとのことでキラはもうミレニアムを降りたら長めの休暇がある。

(二週間の休暇は久しぶりだな…)なんとなしに見たカレンダーを見てキラの顔色がどんどん悪くなる。

(どうしよう…もう10月26日だ…アスランの誕生日へのプレゼント何にも考えてない⁉)

プラントからオーブまではシャトルで行っても二日はかかるのでもう間に合わないことが確定していた。キラが軽く絶望を感じていると。

「キラさん?大丈夫ですか?顔色が悪いですけど...って何ですか⁉この手首と首の包帯!」

しばらくカレンダーを見て固まってしまったキラを心配したシンがキラの顔を見てみると。キラの首に包帯がまかれているのを見つけたのだろう。シンはキラの手首をつかんで驚いている。

(まずい…見つかった…)背中に冷や汗が伝う、掴まれた手首の痛みを顔に出さないように気を付けながら必死にどう言おうか頭で考える。

「大丈夫!もうほぼ治ってるし、痛みもないから!」

とりあえず急いで否定する。すると自分の小型端末からオーブ行きシャトルの時間が迫っていることを知らせてくる。

「!っごめん!もう行かなきゃいけないみたい、シンごめんまた二週間後!」

「ちょっと!キラさん⁉」

急いで前日にまとめておいた荷物を持ち、コノエ艦長へ休暇に入る連絡を入れる。しばらくすると了承のメールが届く。

メールを見てミレニアムを出る。コンパスの制服じゃ人の目を嫌でも引いてしまうのでザフトの更衣室で私服に着替える。

首元と手首がすっぽり隠れて包帯が見えない服に着替えて急いで港へ向かう。

なんとかオーブ行きのシャトルに乗り、しばらく時間があるためアスランへのプレゼントをどうしようか考えていると、連日の寝不足でまだ眠たい。

(...もうアスランに会ったら謝ろう。アスランの誕生日の日に何でも言うこと聞くとか言えば喜んでくれるかなぁ...)

このくらいじゃ喜ぶかどうかも分からない。するとアスランからメールが来ていた。

『キラに会いたい。』

『アスランごめんプレゼント用意できなくてあげれないかも。』

『プレゼントはキラがいい。』

(?僕が欲しいってどういう事だろう?)アスランからのメールを不思議に思っているとオーブへ着いていた。

オーブはもう夜になっていた明るく光る街灯を見ながら行政府に置いているエレカを取りに行く。

はやくアスランに会いたい気持ちを抑えながらアスランと同棲している家へエレカを走らせる。

家へ着くとまだ明かりがついていないのでアスランもしばらく帰っていないのだろう。家へ入りシャワーを浴びる。

首と手首の包帯を変えて包帯をばれないように捨てる。(アスランも日がまたいでから帰ってきそうだな。もう寝ちゃおうかなぁ)

寝室へ向かうと一人で寝るには大きすぎるベッドに寝転ぶと寂しくなる。(早く帰ってこないかなぁ。キングサイズは一人で寝るには寂しすぎるよ…)

アスランの使っている毛布を頭からかぶり枕を使う。ふんわり愛しい人のにおいを感じてうれしくなる。しばらくすると眠くなってくる。

帰ってくるまで待っていようかな、時計を見るとあと三十分程で28日が終わりそうだ。プレゼント用意できなかったけど一番最初におめでとうって言いたいし。



疲れた。帰りたい。やっとキラと休暇がかぶりそれに自分の誕生日に会えるなんて本当に運がいいなと思う。

家に着くと、寝室にぼんやり明かりがついているのが見えた。キラはもう寝たっぽいな。

時間を見ると日をもうすぐまたいでしまいそうな時間だった。思ったより早く着いたな、鍵を開けると自分の靴より少し小さい靴が揃えて置いてあった。

急いで明かりのついていた寝室へ向かう。

「あれ?アスラン思ったよりはやかったね。おかえりなさい。」

以外にもキラは起きていたようで、仕事用の少し大きめの端末から目を離しアスランを見てくれるアメジストを見ると愛おしい気持ちがあふれる。

「ただいまキラ。もうすぐ誕生日な恋人におかえりなさいのキスが欲しいんだけど。」

キラの耳元に口を近づけると耳が弱いキラの耳が真っ赤になる。ますます愛おしい気持ちがあふれるがキラの首元から消毒液のにおいが微かに香る。

(消毒液のにおい?キラは怪我でもしてたか?そんな話はキラからもシンからも聞いていないしな。)

キラの首元に顔をうずめると、より一層強くなる消毒液のにおいに眉を顰める。

急に首元に顔をうずめてきたアスランにそんなにプレゼントがないのが堪えたのかと思い申し訳なくなる。

何も考えずアスランの頭を撫でていると、異様に首元をスンスンと嗅がれている。

「アスランどうしたの?そんなに匂う?一応さっきシャワー浴びたばかりなんだけど...」

「キラ。ここもしかして怪我した?」

そういわれてなぞられたのは首元で、頭が真っ白になる。

慌てて首を見たけどきちんと首元の隠れる服を着ているので包帯は隠れているし、手首もちゃんと見えていない。

ちゃんと隠れてる…よね?あくまでも冷静に聞き返さなきゃばれたらまずくなる。

「別に怪我なんてしてないよ。どうして怪我してるって思ったの?」

「首元から消毒液のにおいがする。この匂いは良く嗅いだことあるから忘れるわけない。」

ねぇキラ。そう言ってキラとの距離をより縮めてくる。いつのまにか腰に回されている腕に驚いていると。

「こっち見て。キラ俺から逃げないで。」

顎をつかまれ顔を近づけてくる。突然のことに頭がパンクしてしまいそうになる。

「ア、アスラン⁉ちょっと近い!近いってば!」

「ねぇキラ、嘘つかないで。今素直に言ってくれたらこの後優しくできるんだけど?」

そう言ってアスランの顔ばっかり見ていたら。

「キラ俺に嘘つくなんて悪い子じゃないか。ねぇキラこれは一体何?」

そう言ったアスランの手には、キラの首に巻かれていた包帯が握られていた。

まずい…非常にまずいこのままだとどうしてすぐ言わないんだ!って顔を真っ赤にして言ってくるのは目に見えている。

必死に言い訳を考えていると自分の小型端末から「ピピピッ」と音が鳴る。その音にハッとする。

「アスラン誕生日おめでとう!…プレゼントは買えなかったけど今年もおめでとうって言えてうれしいよ。」

なんとかこれで許してくれないかと心の中で祈る。すると手首を凄い力で掴まれる。

その力の強さに顔をゆがめる。あまりにも痛いのでそんなに怒っていたなんてと少し涙目になる。

「っアスラン痛いよ。嘘ついてたのもプレゼント買えなかったのも謝るから…」

「ねぇキラプレゼント買えなかった代わりに、今日が終わるまで俺の言う事全部聞いてくれる?」

可愛そうなキラ、涙目なキラも痛みに顔をゆがめるキラもすべて愛しく思うが、自分に隠し事をするキラに少し怒りを覚える。

そんなに、俺が信用できないのか?俺に頼ることができないのはなぜ?キラのことなら何でも知りたいと思っているのに。俺には心配すらもさせてもらえないのか?

「いうこと聞く!なんでも君の言うこと聞くから!だから、その…機嫌直して?」

いうことを聞くだけならいいかな。僕はその時軽く思っていた。あんなことになることも知らずに…
かかった。そう思った、キラは素直だから"何でも"いうことを聞いてくれるらしい。

これほどいい誕生日はないな…心の奥でそうほくそ笑む。キラには申し訳ないけど今までのキラ不足を補給させてもらおうか…

僕はどうしてこんなことになっているんだろう。アスランに今日一日中言うことを聞く約束をしたらアスランの膝の上に座らせられている。

「アスラン重たくない?大丈夫?」

「あぁこの位何ともない、そんなことよりキラお前また痩せたか?」

そう言って僕の太ももをさすってくる。これ、アスランじゃなかったらただの変態だな…と思いながらも痩せたことは事実だった。

「確かにちょっと痩せたけど、別にメディカルチェックの時何も言われなくなる位はましになったし…」

「それで?キラこの首元何があったの?」

誤魔化したらただじゃおかないぞと言わんばかりの翡翠の瞳を向けられる。

これは、相当怒らせてしまったらしい。

「別に、つい一か月前ちょっといつもより激しめの戦闘があって、その時に出来ちゃっただけだよ。今はちょっと痛いだけだから大丈夫だし…」

「ん、そうか。ほかには?怪我してるところは?」

そう言われ頬に手を添えられる。その手の温かさが心地よくてすり寄る。

「あとは...右の手首もおんなじ時に怪我したけど。これももうすぐ直るから、心配しないで。」

キラなりに何とか心配させまいと笑顔を向けてくれているのだろう。この笑顔も好きだけど、キラの赤面もみたいなとも思う。

「じゃあキラ、キラのこと撫でていい?」

「?それくらい全然いいよ!ていうかそんないちいち聞かなくてもいいのに。」

「ん、じゃあ遠慮なく。」

そう言って頭、耳、頬と怪我のある首元を撫でていく、と同時にキラの耳元で囁やいていく。キラは耳が弱いのは今までの経験でよくわかっている。

「ねぇ、キラ。愛してるよ、もっと心配させてよ。迷惑もっとかけて。」

「んっ、ちょっと。くすぐったいよ。あすらんっ!」

くすぐったさに身をよじるキラを逃がすまいとより抱き寄せる。

アスランとの距離がまた縮まってより心拍数が上がってしまう。僕はまた耳まで赤くなっているのだろうと思うと、アスランの顔を見る。

アスランは愛おしそうにキラの顔を見ている。その顔をみるとより顔が熱くなる。

けれどアスランが帰ってきてから、一度も唇にキスをしてくれなくて、唇が物足りなくなる。

無意識に唇を触っているとアスランに手をとられてアスランへ挑発的な目を向けてしまう。

「なぁに?キラ言ってもらわないと何も分からないよ?」

「ちゅー、してほしい...」

無意識なのだろう、物足りなさそうに唇を指で押しながら上目使いにアスランを見てくる。

そこでアスランの理性がブチンっと切れた、アスランはキラの肩を押してキラの体を押し倒す。

「あすらん⁉ちょっと!急にどうしたの?」

慌てるキラにやっと唇にキスをし黙らせる。

「キラ、覚悟しなよ。俺にキラのすべてを頂戴?」

その時のアスランの顔は清々しい笑顔だった。そのあとキラは一日中アスランの好きにされた。
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