輪廻転生

第四話再会

キーンコーンカーンコーン

授業終了のチャイムが鳴ると同時に思考の海から意識が現実へ戻る。

ベッドのほうを見る。ベッドにできた小さい山からはすぅすぅと規則正しい寝息が聞こえる。

キラはまだ目を覚ましていないようだ。

キラが倒れている様子を視界に捉えたとき、頭痛とともに流れてきた【前世の記憶】。

あの記憶は自分がこの世界ではなくC,Eという世界にいた時のものだ。

すると先ほどまで穏やかだったキラの顔色が一気に青くなりうなされ始める。

頬や首元にじっとりと汗が浮き出ている、そして眉を寄せて悲痛な声で泣いてしまった。

「っフレイ……ごめん…ごめんなさい。僕のせいで…」

「っキラ?……まさか⁉」

キラのこのうなされ方は前世でよく見たものだ。

ヘリオポリスのカレッジで友人になった大切な人を守り切れなかった、とキラは苦しそうに泣いていた記憶はよく覚えている。

(キラは、記憶がある?この世界ではフレイさんは生きているし…)といろいろ考えていると。

キーンコーンカーンコーン

すると、次の授業が始まる予鈴がなる。

このまま寝かせておきたいが、先ほど保険医にこの後会議があるから予鈴がなったら戸締りをしておいてほしい。と言われていたのを思い出す。

「キラ起きてください。キラ。」

彼女の細い体を揺らし、頬にかかっていた髪をどける。

すると彼女の瞼からアメジストの宝石がゆるりと開かれる。

「っ?ら…らくす?」

「えぇ、わたくしですわ。お体の様子は?それとミーアがあんなことをして本当にごめんなさい。」

「あぁ、僕なら大丈夫だよ。ラクスのほうは何もなかった?」

「わたくしは、この通り大丈夫ですわ…起きたばかりで申し訳ないのですが、もう次の授業の時間なんですの。」

「そっか今日はこの時間に職員会議があるんだっけ…」

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ごめん...ごめんなさい...フレイ。君は僕が守ってあげなくちゃいけなかったのに...

真っ暗な夢の中で一人、あの時リアルな感触に蝕まれる。

まだ、あの時のことは鮮明に思い出してしまう。背中に嫌な冷たい汗が流れる感覚がする。

すると、背中に温かい何かが触れ、体を揺らされる。

(あすらん?)

ゆっくりと目を開ける、眩しい光の先にいたのは愛しい人、ではなく心配そうに自分を見つめているラクスだった。

すこし残念に思いながら彼は記憶がないのとここにいるわけがないと寝起きな自分に起きた脳が訴えかけてくる。

一通りラクスから保険医の先生に伝えられたことを聞く。

「体調が優れないようでしたら、早退しなさいと仰っていましたわ。」

「う~んどうしよう…」

「決めかねているのなら、少しお話したいことがあるんですの。」

「え?」

ラクスはそう言ったと思ったら可愛らしく口元に指を立て。

「今日の学校はここでさぼってしまいませんか?」

思わず自分の耳を疑ってしまった、けど確かに彼女はそういった。

あれよあれよとラクスに手を引かれ着いたのは、高そうな個室の飲食店だった。

ラクスが受付に行っている間(こんな高そうなところだなんて、聞いてない!)と思いながら周りをきょろきょろ見回す。

そして受付を終えたラクスがウエイトレスさんと戻ってくると同時に席に案内される。

落ち着いたモダンな雰囲気に高級感あふれるお店の作りを見て体が緊張する。

案内された個室の中に入り、二人で向かい合う席に座る。

「テーブルマナーとかは気にしなくていいですわ。それにここはスイーツもおいしんですの」

「……その、ラクス?話したいことって…いったい」

話を切り出すとラクスはすこし顔をゆがめる。(ラクスに何かしたかな...)聞いたらまずかったのかと少し焦る。

少し嫌な空気に背中にまた嫌な冷や汗が伝う。この面接のような空気に頭が混乱し始める。するとラクスが沈黙を破った。

「もし、今からわたくしが言ったことに心当たりがなかったら忘れてくださってかまいませんわ。」

「う、うん。分かった。」

「その…キラは前世の記憶を覚えてますか?」

「え?」(それって…)

「わたくしは、C,Eという世界で生きていた『ラクス・クライン』という方の記憶を覚えていますわ。その記憶の中でキラに似ている方がいるのですが…」

ラクスの声が少しずつ小さくなっている。彼女も怖いのだろうけれどそれよりもラクスが思い出したことが何よりうれしくて思わず。

頬に涙が伝う、目の前がぼやける。

「覚えてる…覚えてるよラクス、僕は最後までみんなと一緒にいられなかったけどね…」

「キラっ!」

二人で、ずっと昔のことを話す。懐かしいなぁラクスが記憶を思い出してくれて嬉しいなぁ。

「あ!そうだ。実はシンも記憶があるんだよ!こんど三人で昔のこと話そうよ。僕が殺されちゃった後どうなったか気になるし…」

「シンも近くに住んでいらっしゃるのですね!お会いしたいですわ~」

「空いてる日教えて。シンに聞いてみるね!」

「分かりましたわ。わたくしはいつでも大丈夫そうですわ。」

二人でずっと話していると、お夕飯の時間になり解散することになった。

一人で歩いていると前の横断歩道によく知っている人を見つけて、恐る恐る声をかける。

「アスラン?アスランってお家こっちじゃなかったよね?」

「⁉キラ?びっくりした…」

「ご、ごめん。アスランがこんなとこにいるとは思わなくて。」

「あぁ、中等部の後輩に忘れ物を届けるついでに後輩に貸したものを返してもらいにこっちに来たんだ。」

後輩...部下だけど年下の面倒見は意外とよかったりするのはあの時のままなんだね…シンとはどうも相性悪かったようだけど...

「後輩?後輩の子こっちに住んでるんだ~。」

「あぁそうだ、ところでキラは?こんなに暗い時間にいつも帰ってるのか?」

「今日は特別なんだ。ラクスとずっと話してて夢中になってたらこんなに遅くなっちゃった。」

「…キラは女の子なんだからあまり遅い時間は危ないんじゃないのか?」

「へ!?女の子って言われるほど僕そんな可愛いわけじゃ…それにまだ明るいし人通りも多いし。」

いきなりアスランに女の子と言われて心臓が飛び出る。アスランにそんなこと言われたら、いやでも意識してしまう。

頭の中でぐるぐる考えると余計に顔が熱くなっていたら。

「可愛いよ。」

「え?」

「キラは可愛いよ。だから気を付けて。」

下を向いて考えていた頭を上に向けると、少し頬が赤くなっているアスランが自分を見つめていた。

「そ、そんなことない!ラクスとかのほうが可愛いし…僕はそんな可愛いって言われるほどの外見は…」

いそいで彼の言葉を否定する。君にそんなこと言われたらいやでも顔が熱くなっちゃうじゃないか!

「キラは可愛いんだから早く帰らなきゃ。それじゃ俺は一応時間があるから!おやすみキラまた。」

そしたら、信号が青に変わる。アスランのほうも恥ずかしくなってきたのだろう慌てて行ってしまった。

「うんおやすみなさい。気を付けてね。」

届いていないかもしれないが精一杯声をだして彼に言う。

そのあとどうやって帰ったかも覚えていないが何とか家に帰った。

第五話 嫉妬  お楽しみに
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