輪廻転生

第二話初デートと黒柴

とうとうやってきた週末今日は、日曜日。

お母さんが作ってくれた、お昼をもそもそ食べながらアスランのことを考える。

一昨日ラクスとフレイに買い物に半日着せ替え人形にされフリフリの買ったこともない可愛らしいワンピースを何着も買わされた。

似合っているか分からないが部屋にある大きな姿見でレースの飾りが施された清潔感のあるホワイトワンピースを着てくるくる回ってみる。

前世では、パイロットスーツか軍服とたまに私服を着るくらいだったし、私服もラフなシャツと長ズボンくらいしか着ていなかった。

彼は前世のアスラン・ザラではないのに、やはりあんなに好きだったのもあって少しでも彼にかわいいと思われたいのだろう。

彼は褒めてくれるだろうか、一人でいろいろ想像して顔が熱くなる。

時計を見ると約束の時間の三十分前だった、慌てて鞄をつかみ玄関を飛び出す。

「いってきまーす!」

「あら、可愛いワンピースねぇ。お友達と出掛けるの?」

「う、うん。そう友達と。」

「そう、お夕飯に間に合うように帰ってくるのよ。」

「はーい。」

お母さんに、会ったこともない異性と二人きりで出掛けることなんて言えるはずもなく、嘘をついて外を出る罪悪感が沸き上がる。

約束の時間の十分前に水族館に着く、水族館の前には休日のせいかたくさんの人が並んでいる。

少し人が少なめなところに移動し、彼を待つ。

「すまない、待たせてしまった。」

「いえ、その僕もついさっききたばかりですから。」

約束の時間五分前ぴったりに彼が到着する。先に僕がいてびっくりしたのだろう、待たせたと思って謝られてしまった。

「もうすぐ開くだろうから行こうヤマトさん。」

「キラって呼んでいいですよ、それにため口でもいいよ。同い年だしなんだか気まずいでしょ?」

キラは無意識に上目遣いでアスランを見つめる。

「そうだな、キラ。じゃあ行こうか。今日は人が多めだからはぐれないようにな。」

「う、うん。気を付ける…」

水族館の大きなガラスドアの向こうに青い光が広がり、魚たちが静かに泳ぐ姿が見えた。

二人はチケットを購入し、館内に入るとすぐに巨大な水槽が出迎えてくれた。色とりどりの魚たちが悠々と泳ぐ姿に、キラは目を輝かせた。

「すごーい!水槽がとっても大きいねぇ、それに魚の色がとってもきれい。」

「本当に。なんか、ここにいると時間を忘れてしまいそうだ。」

とアスランも同意しながらキラの横顔を盗み見る。

キラの笑顔は無防備で水槽の中にいる小さな魚に向けられていて、こちらを向いて微笑んでほしいと思う。

しばらく、歩いて水族館の奥のほうに向かう。

人が多いため、二人は時折立ち止まりながら、他の来館者が進むのを待った。

時折、キラが足を止めると、アスランは自然とキラの背中に手を添えるようになった。

キラもそれに気づいていたが、その優しさが嬉しくて、何も言わずにそのまま受け入れた。

エスコートがさりげないのもなんだか懐かしい。

クラゲの展示エリアに差し掛かると、青白い光の中で無数のクラゲが漂っていた。

キラはその幻想的な光景に魅了され、しばらくの間、言葉を失って見入っていた。

ヤキンドゥーエの時を思いだしながら、キラは。

「このクラゲたちなんだか幻想的だね。」

と静かに言った。

そんなキラにアスランは「キラに今まであったことないはずなのにな…」

と彼は心の中で呟いたが、実際には「そうだな。」とだけ返した。

アスランの心の中では、キラのことを昔から知っているような不思議な感じを伝えたい気持ちが渦巻いていたが、どう伝えればいいのかわからなかった。

キラもまた、アスランが自分をどう思っているのかを知りたかったが、勇気が出ず、ただ隣にいることだけで満足している自分がいた。

人混みの中で時折腕が触れるたびに、キラは心臓が跳ねるのを感じていた。

前世でもアスランとのデートなんて、したことがない。

おたがい戦場の最前線に立っていたせいで、二人で穏やかな時を過ごしていたのを覚えているのは幼年学校時代の時くらいだ。

水族館を歩いているとそのイルカのショーのポスターが貼られておりキラが行ってみたいと言ったので、次に二人が向かったのはイルカのショー。

すでに多くの人が席に座っていたが、なんとか二人分の空席を見つけて腰を下ろした。

イルカたちが水しぶきを上げて華麗にジャンプするたびに、周りから歓声が上がり、キラは楽しそうに拍手を送った。アスランもキラの楽しんでいる姿を見るのが嬉しくて、自然と微笑んでいた。

ショーが終わると、二人はまた館内を歩き出した。出口へ向かう通路は広かったが、それでも人で混み合っていた。

突然、横にいた人にキラがぶつかってしまい転んでしまいそうになる。キラは反射的に衝撃に備えるために目をつぶる。

しかし思っていた衝撃はこず、目を恐る恐る開けると目の前に心配そうな翡翠の瞳がキラを見つめていて頬に熱が集まる。

「大丈夫?」とアスランが尋ねると、キラは驚いた顔をしながらも「うん、大丈夫」と頷いた。

しかし、手を握られた瞬間、キラの胸はドキドキと音を立て、アスランに気づかれないようにするのが精一杯だった。

アスランもまた、キラの軽くて折れてしまいそうな体に心が乱れていたが、どうすればいいのか分からず、そのまま手を離してキラを立たせる。

お互いに、もう少しだけそのぬくもりを感じていたいと思ったが、どちらもそれを言い出せなかった。

水族館を出ると、すでに夕暮れが近づいており、空はオレンジ色に染まっていた。

二人は駅に向かって歩きながら、今日のことを話していたが、その会話はどこかぎこちなかった。

「今日は楽しかったね。さっきは転びそうなところをありがとう。重かったでしょ?」

とキラが言うと、アスランが「いや、重いとか思わなかったぞ怪我無くてよかった。逆に軽すぎて驚いたくらいだ。次はどこに行こうか?」

と続けたが、心の中ではキラとの距離を縮めたいと思っていた。今まであった女性の中で初めて会ったザラの名で寄ってこなかった彼女だ。

しかし、彼女は自分を見るときどこか遠い誰かを思い出すようなそんな目を向けてくる。それがとても気になってしまう。

熟考していたらキラが、少し考えるそぶりをしてから

「また水族館でもいいかな。次は期間限定のショーとか見てみたいな。」

と微笑んだ。アスランは嬉しそうに微笑んで、

「じゃあ、また来ようか。」とアスランは嬉しそうに答えた。

彼女がまた一緒に行きたいと言ってくれたことが、アスランの心に希望の光をともした。

キラが最寄りの駅に降りて、街をぼーっと歩いていると。

「どんっ」

「きゃっ!」

「うわぁ!」

からだに昼に感じたおなじ衝撃を感じる。

なんとか踏ん張って耐えようとしたが、しりもちをついてしまった。急いで目を開けて相手に謝ろうと目を開ける。

そこには、前世で自分を慕っていた部下にとても似た青年がいた。

「だ、大丈夫?ごめんなさいぼーっとしていて。」

「いてて、いえこっちから走って当たってしまったんでこっちが…」

そう告げた青年はきれいな赤い目を驚きに染めて叫ぶ。

「キ、キラさん!?」

「へ?!?ちょっシン!静かに!」

とっさに自分の部下に似た青年の名前を呼んでしまう。

叫んだことで周りからの目線が痛いため急いで近くのファミレスに入る。

急いで入ったファミレスで各々のドリンクをたのんでからシンが興奮気味に声をかけてくる。
 
「キラさんですか?キラさんは記憶があるんですか?」

「記憶あるよ。シン、きみも記憶があるの?どうして?」

「その、生まれたばっかりは覚えてないですけど、マユが生まれてから頭にフラッシュバックみたいに記憶が戻ったというか…」

「そうなんだ…みんな覚えてないから僕だけだと思ってた…というか思い出すことはできるんだね…」

「俺もです!キラさんが記憶あっててよかったです~」

その日記憶のあるシンとずっとしゃべっていて連絡先も好感して夕飯を食べて帰ってしまった。

そのせいでこっぴどくお母さんに怒られてしまった。


次回第三話、ミーア大暴走
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