Thanks!
スキ!を送りました
(コメントの返信は『Re:』ページをご覧ください)
早いもので、もう年度末。
世間では締めの作業と新年度の準備が並行して行われるため、てんやわんやの時期だが…。
さて、この夫婦はどうなのだろうか。
「美味しそう!」
感嘆の声を上げるマリコの目の前には、フルーツがたっぷり盛られたケーキが置かれていた。
「紅茶もどうぞ」
カフェエプロンをつけた土門が、芳しく香り立つティーカップを恭しく差し出す。
「一体どうしたの?今日は何かの記念日だったかしら?」
「3月30日は『妻がうるおう日』なんだそうだ」
「?」
「つまり、年度末に1年間頑張ってくれた奥さんを労うわけだな」
「それで、ケーキを用意してくれたの?」
「ケーキだけじゃないぞ。“うるおう日”にちなんで、こんなものも用意してみた」
土門が引き出しから取り出したのは、ラッピングされた小さな箱。
「これ…リップ?」
「“ぷるんとうるおう春の新色”というキャッチコピーだったんでな」
この堅物な夫が、どんな顔で春の新色リップを手にしたのだろう。苦笑しつつも開けてみれば、桜色の優しい色合いをしていた。
「仕事でも使えそうだろ?」
「ええ。ありがとう」
「どういたしまして。さあ、ケーキもどうぞ」
「はい、いただきます」
気取った給仕長からフォークを受け取り、マリコはケーキを口にした。フルーツの僅かな酸味と、クリームの甘さのバランスが絶妙だ。
「おいしい…」
しばし感動で、マリコは目を閉じる。
「ご満足いただけましたか、奥様?」
「ええ。とっても」
「じゃあ、次だ」
「まだあるの?もう十分うるおったわ」
「こっちがメインなんだ」
土門はマリコを立たせると、ふいにその体を抱き上げた。
「きゃあ!な、なに?」
「暴れるなよ」
「下ろして、薫さん。ぎっくり腰になっちゃうわよ!」
「俺はそんなにヤワじゃないぞ。現役刑事の体力、証明してやる」
そんな物騒なこと言いながら、土門はマリコを抱いたまま、ずんずんと奥の部屋へ向かう。
下ろされた真新しいシーツの横には、見慣れないボトル。
『とろける潤いを…』と書かれたラベルに、マリコは嫌な予感しかしない。
「あの、まだお風呂入ってないから」
「気にするな」
「薫さんが気にしなくても、私が気になるのよ!」
「まあ、まあ」
「まあ、まあ、じゃな…ムグっ」
不満溢れる唇は強引に塞がれる。
「身も心もうるおって欲しいんだ。愛しい奥さんに」
「………………」
こういうときだけ、そんなセリフを言うなんてズルい。
殺し文句に拒否できるわけもなく、マリコはただ赤くなる。そしてもらったばかりのリップを取り出すと、唇に引いてみた。
「“ぷるんと潤って”いる?」
「食べてみないとわからんな」
もう一度。
今度は感触を確かめるように、土門はマリコの唇を食んだ。
「うまい」
「…ばか」
夫の手がボトルに伸びるのを横目に、マリコは諦めて目を閉じる。すると…。
「明日からまた、お互い忙しくなるだろう。家のことはいいから、体に気をつけてくれよ」
驚いて目を開けたマリコが見たのは、妻を気遣う夫の笑顔。
その言葉だけで身も心も十分にうるおったマリコだったが、これから輪をかけて身体は念入りにうるおうことになるようだ。
とろける一夜は、優しく更けていく。
(こっそり)
管「送信ありがとうございました!(≧∇≦)管理人の頑張る源です。ぜひまたお越しください(^^)」
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早いもので、もう年度末。
世間では締めの作業と新年度の準備が並行して行われるため、てんやわんやの時期だが…。
さて、この夫婦はどうなのだろうか。
「美味しそう!」
感嘆の声を上げるマリコの目の前には、フルーツがたっぷり盛られたケーキが置かれていた。
「紅茶もどうぞ」
カフェエプロンをつけた土門が、芳しく香り立つティーカップを恭しく差し出す。
「一体どうしたの?今日は何かの記念日だったかしら?」
「3月30日は『妻がうるおう日』なんだそうだ」
「?」
「つまり、年度末に1年間頑張ってくれた奥さんを労うわけだな」
「それで、ケーキを用意してくれたの?」
「ケーキだけじゃないぞ。“うるおう日”にちなんで、こんなものも用意してみた」
土門が引き出しから取り出したのは、ラッピングされた小さな箱。
「これ…リップ?」
「“ぷるんとうるおう春の新色”というキャッチコピーだったんでな」
この堅物な夫が、どんな顔で春の新色リップを手にしたのだろう。苦笑しつつも開けてみれば、桜色の優しい色合いをしていた。
「仕事でも使えそうだろ?」
「ええ。ありがとう」
「どういたしまして。さあ、ケーキもどうぞ」
「はい、いただきます」
気取った給仕長からフォークを受け取り、マリコはケーキを口にした。フルーツの僅かな酸味と、クリームの甘さのバランスが絶妙だ。
「おいしい…」
しばし感動で、マリコは目を閉じる。
「ご満足いただけましたか、奥様?」
「ええ。とっても」
「じゃあ、次だ」
「まだあるの?もう十分うるおったわ」
「こっちがメインなんだ」
土門はマリコを立たせると、ふいにその体を抱き上げた。
「きゃあ!な、なに?」
「暴れるなよ」
「下ろして、薫さん。ぎっくり腰になっちゃうわよ!」
「俺はそんなにヤワじゃないぞ。現役刑事の体力、証明してやる」
そんな物騒なこと言いながら、土門はマリコを抱いたまま、ずんずんと奥の部屋へ向かう。
下ろされた真新しいシーツの横には、見慣れないボトル。
『とろける潤いを…』と書かれたラベルに、マリコは嫌な予感しかしない。
「あの、まだお風呂入ってないから」
「気にするな」
「薫さんが気にしなくても、私が気になるのよ!」
「まあ、まあ」
「まあ、まあ、じゃな…ムグっ」
不満溢れる唇は強引に塞がれる。
「身も心もうるおって欲しいんだ。愛しい奥さんに」
「………………」
こういうときだけ、そんなセリフを言うなんてズルい。
殺し文句に拒否できるわけもなく、マリコはただ赤くなる。そしてもらったばかりのリップを取り出すと、唇に引いてみた。
「“ぷるんと潤って”いる?」
「食べてみないとわからんな」
もう一度。
今度は感触を確かめるように、土門はマリコの唇を食んだ。
「うまい」
「…ばか」
夫の手がボトルに伸びるのを横目に、マリコは諦めて目を閉じる。すると…。
「明日からまた、お互い忙しくなるだろう。家のことはいいから、体に気をつけてくれよ」
驚いて目を開けたマリコが見たのは、妻を気遣う夫の笑顔。
その言葉だけで身も心も十分にうるおったマリコだったが、これから輪をかけて身体は念入りにうるおうことになるようだ。
とろける一夜は、優しく更けていく。
(こっそり)
管「送信ありがとうございました!(≧∇≦)管理人の頑張る源です。ぜひまたお越しください(^^)」