Thanks!
スキ!を送りました
(コメントの返信は『Re:』ページをご覧ください)
GWの京都はインバウンドであふれかえっていた。今年は特にオーバーツーリズムが懸念されていたが、予想通り…いや、それ以上の人混みかもしれない。
かくいう土門とマリコも「連休最終日なら空いているかもしれない」と顔を覗かせた店々に振られ続けてしまった。仕方なく二人は立ち飲み屋で軽い夕食を済ませ、帰りのタクシーを拾うために大通りへ向かった。
その途中、暗闇から叫び声が聞こえた。
「snatcher!(ひったくり)」
振り返った二人の視線の先には、こちらへ向かってくる男の姿が街灯に浮かんで見えた。キャプを目深にかぶり、マスクをつけた男は「どけ!」と怒鳴りながら走り続けている。
「榊」
マリコは頷くと、持っていた紙袋を突進してくる男の足元へ投げた。
「おわっ!」
躓いた男は、足がもつれ、地面に倒れ込む。そのタイミングで、土門が男の背に馬乗りになり確保した。
「観念しろっ!」
マリコは男の手から小さなポーチを取り返す。
「ソレ、ボクノ」
遅れて走ってきた観光客らしき外国人に、マリコはポーチを手渡した。
「アリガト、ゴザイマス」
男はカタコトの日本語で礼を口にすると、突然マリコの手をぎゅっと握った。
「You're a goddess…」
熱に浮かされた男の様子に嫌な予感がした土門は、暴れるひったくりの手足をネクタイとベルトで素早く拘束する。しかし、思った以上に手間取ってしまった。
その間に、男はマリコの手に恭しく口づけると、驚きに固まるマリコの頬にもキスをした。
「おいっ💢」
ドスの効いた声と共に、土門はむりやり男をマリコから引き剥がす。
そして、一言。
「人の女に気安く触るな!」
言語はわからなくても、この手の言葉は万国共通らしい。
「行くぞ!」
「ど、土門さん、ちょっと…。あの、Have a nice trip!」
引きずられていくマリコは、パックパックを背負ったまま恐怖に顔を引きつらせた旅人へ、せめてもの挨拶を送った。
「土門さん!」
マリコは早足で進み続ける土門に声をかけた。
「何だ」
ようやく足を止める土門。
「ひったくり犯はいいの?」
「通報はしておいた」
そういえば、歩きながら土門はどこかへ電話をかけていた。
「そう。それならいいの」
ほっとしたマリコとは逆に、土門は眉を持ち上げる。
「全然、よくないぞ!」
「土門さん?」
土門はマリコの頬をゴシゴシと手のひらで擦りだした。
「痛いわ」
「我慢しろ。変な男の口唇紋を消してるんだ」
「口唇紋て…ぷっ」
マリコは吹き出した。
「何がおかしい?」
「土門さんも随分と科学の知識が深くなったなぁ…と思ったの」
「茶化すな」
言いながら、今度はマリコの手のひらも擦っていく。
「口唇紋は消えたかしら?」
「わからん」
「ね。新しくつけ直すっていうのはどう?」
土門はマリコの提案に驚いたようだが、不機嫌だった表情がすぐに緩んでいく。
「賛成だ。そうと決まれば、さっさとタクシーを捕まえよう」
土門はマリコの腰に手を回す。
「もちろん、手と顔以外にもつけさせてもらうからな?」
翌朝マリコの首筋には、赤い口唇紋が咲き遅れた桜のように散っていた。
そして土門の頬には「やりすぎよっ!」と赤い紅葉がそれは美しく映えていたらしい。
(こっそり)
管「送信ありがとうございました!(≧∇≦)管理人の頑張る源です。ぜひまたお越しください(^^)」
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GWの京都はインバウンドであふれかえっていた。今年は特にオーバーツーリズムが懸念されていたが、予想通り…いや、それ以上の人混みかもしれない。
かくいう土門とマリコも「連休最終日なら空いているかもしれない」と顔を覗かせた店々に振られ続けてしまった。仕方なく二人は立ち飲み屋で軽い夕食を済ませ、帰りのタクシーを拾うために大通りへ向かった。
その途中、暗闇から叫び声が聞こえた。
「snatcher!(ひったくり)」
振り返った二人の視線の先には、こちらへ向かってくる男の姿が街灯に浮かんで見えた。キャプを目深にかぶり、マスクをつけた男は「どけ!」と怒鳴りながら走り続けている。
「榊」
マリコは頷くと、持っていた紙袋を突進してくる男の足元へ投げた。
「おわっ!」
躓いた男は、足がもつれ、地面に倒れ込む。そのタイミングで、土門が男の背に馬乗りになり確保した。
「観念しろっ!」
マリコは男の手から小さなポーチを取り返す。
「ソレ、ボクノ」
遅れて走ってきた観光客らしき外国人に、マリコはポーチを手渡した。
「アリガト、ゴザイマス」
男はカタコトの日本語で礼を口にすると、突然マリコの手をぎゅっと握った。
「You're a goddess…」
熱に浮かされた男の様子に嫌な予感がした土門は、暴れるひったくりの手足をネクタイとベルトで素早く拘束する。しかし、思った以上に手間取ってしまった。
その間に、男はマリコの手に恭しく口づけると、驚きに固まるマリコの頬にもキスをした。
「おいっ💢」
ドスの効いた声と共に、土門はむりやり男をマリコから引き剥がす。
そして、一言。
「人の女に気安く触るな!」
言語はわからなくても、この手の言葉は万国共通らしい。
「行くぞ!」
「ど、土門さん、ちょっと…。あの、Have a nice trip!」
引きずられていくマリコは、パックパックを背負ったまま恐怖に顔を引きつらせた旅人へ、せめてもの挨拶を送った。
「土門さん!」
マリコは早足で進み続ける土門に声をかけた。
「何だ」
ようやく足を止める土門。
「ひったくり犯はいいの?」
「通報はしておいた」
そういえば、歩きながら土門はどこかへ電話をかけていた。
「そう。それならいいの」
ほっとしたマリコとは逆に、土門は眉を持ち上げる。
「全然、よくないぞ!」
「土門さん?」
土門はマリコの頬をゴシゴシと手のひらで擦りだした。
「痛いわ」
「我慢しろ。変な男の口唇紋を消してるんだ」
「口唇紋て…ぷっ」
マリコは吹き出した。
「何がおかしい?」
「土門さんも随分と科学の知識が深くなったなぁ…と思ったの」
「茶化すな」
言いながら、今度はマリコの手のひらも擦っていく。
「口唇紋は消えたかしら?」
「わからん」
「ね。新しくつけ直すっていうのはどう?」
土門はマリコの提案に驚いたようだが、不機嫌だった表情がすぐに緩んでいく。
「賛成だ。そうと決まれば、さっさとタクシーを捕まえよう」
土門はマリコの腰に手を回す。
「もちろん、手と顔以外にもつけさせてもらうからな?」
翌朝マリコの首筋には、赤い口唇紋が咲き遅れた桜のように散っていた。
そして土門の頬には「やりすぎよっ!」と赤い紅葉がそれは美しく映えていたらしい。
(こっそり)
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