マリコと舞子
P.M.6:00
「あの二人……よく分からないわ。仲間ってことになるのかしら?」
マリコはしきりと首をかしげる。
「そうだなぁ。俺には何となく分かるがな」
「え?」
「まあ、お前は分からなくていいさ」
「何よ、それ?」
眉を寄せるマリコの顔を見て、ふっと笑った土門は、その頭にぽんと手を乗せる。
「ちょっと、子ども扱いしないでよー、もお!」
ぷりぷり怒るマリコを促し、土門は駅へ向かって歩き出す。
「なあ」
「?」
「………」
「なあに、土門さん?」
前を向いたまま、無言の土門をマリコが見上げる。
「……美貴のところへ寄ってもいいか?」
「もちろんよ!せっかく来たんだもの。私はどこかで時間を潰しているから、ゆっくり会ってきたら?」
「いや……」
「?」
相変わらず、土門は正面を向いたままだ。
「お前も一緒に来てくれ」
「え?…いいけど。二人で話したいこととかあるんじゃない?」
「実は昨日、美貴に連絡しておいたんだ。その………
「!?」
「だから、お前が一緒じゃないと俺が困るんだ」
そう言うと、ようやくマリコへ向き直る。
「………フルコース」
「は?」
「私もフルコースで手を打ってあげる!」
マリコの瞳には喜びとイタズラ心が混じり合っている。
「フルコースか……」
「お財布に痛い?」
「いや、むしろ安いくらいだな」
「やせ我慢しちゃって」
「たまには格好つけさせろ!」
二人でくすりと笑い合いながら、見つめ合う。
――― マリコは願う。
これから始まる24時間が、あの三人の女性たちにとって幸あることを。
………自分と同じように。
fin.
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