シーサイドパニック
「土門さん、行きましょう?」
「ん?いいのか?あいつを放っておいて。お前は被害者だろう?」
「いいの!私が被害届を出さないと、刑事さんだって捕まえられないでしょ?」
「いや!今回は現行犯だ!」
「もう!頑固ね」
「分かってるさ。柚斗を泣かせたくないからだろう?まぁ……特別だぞ?」
「土門さん、ありがとう!」
思わずマリコは土門の腕にしがみついた。
土門は顔を綻ばせて、マリコに視線を向けた。
しかしその時、ちらりとパーカーの胸元が目に入った。
ビキニの肩のストラップはずり落ち、水着自体が引っ張られたように、膨らみが半分以上露になっていたのだ。
あと数センチ下がっていたら……。
土門は目を吊り上げた。
「何をされた?」
「え?」
突然固くなった土門の声に、マリコが顔を上げる。
土門は、ただマリコは壁に押さえつけられ、首筋を舐められていただけだと思っていた。(いや、それだけでも十分許しがたいが…!)
「まさか、どこか触られたのかっ!?」
「ちがっ!」
ふるふると首を振るマリコを、土門はじっと見つめる。
『まるで狼に狙われてるみたい…』、思わずマリコは一歩下がる。
そしてすがっていた腕を放そうとするが、『逃がすまい!』と土門にがっちり腰をホールドされてしまった。
「どこも触られてないなら、なんで水着がこんなになっているんだ?」
土門はジジジ…とジップを下げる。
「土門さん、やめてっ!」
マリコは胸元を押さえる。
しかし土門はその手を引き離すと、改めて中をのぞく。
「あいつにやられたのでなければ、俺を誘っているのか?」
くくっと笑うブラック土門。
「そんなわけないでしょう?」
「だったら正直に言え。ここでパーカーを脱がされたくはないだろう?」
「…………」
「榊!」
「…分かったわよぉ。触られたわ。太ももとお尻と……」
「……💢」
「あと、む、胸も……」
「……………💢💢💢」
「で、でも土門さんのお陰で未遂だったし!大丈夫よ!」
マリコはなんてことないように話すが、土門は怒りが収まらない。
「何が未遂だ……………」
土門の声が一層低くなる。
「土門さん?」
「何も大丈夫じゃないだろう!お前は……ちょっと来い!!」