『密着!どもマリ24時』(捻挫編)
in bedroom 3 …
香ばしい香りにマリコが目を覚ますと、正面の椅子に土門が腰掛け新聞を読んでいた。
「土門さん?」
「目が覚めたか?気分はどうだ?」
「ん…。もう大丈夫。え?土門さん、仕事は??」
マリコは壁掛け時計を目にして、焦ったように土門へ問いかける。
「今日は休みを取るように指示された。それも部長直々に、だ。お前を必ず病院へ連れて来るように厳命されている」
そう説明しながら、土門はマリコと額を合わせて熱を確かめる。
「ど、土門さん……」
マリコはドギマギして視線が泳いでしまう。
「……よし。下がってるな。……ん?どうした?」
熱は下がっているのに、マリコの顔は赤いままだ。
「な、何でもないっ!」
ぷいっと横を向いてしまったマリコに気づかれないように、土門はふっと小さく笑うと、優しい眼差しを向けた。
「そういう訳だ。今日は俺もゆっくりさせてもらう。ところで、榊。お前、腹は……」
“ぐぅー”。
「「……………」」
「食えるらしいな」
くくっと笑う土門に、ますますマリコの顔が赤みを増す。
「じゃぁ、朝飯にするか。……よっと」
「えっ?……きゃあ!」
フワリと浮いた体に、マリコが声をあげ手足を動かす。
「おい!大人しく捕まってないと落ちるぞ!!」
その忠告に、マリコはとっさに土門の首に抱きつく。
「も、もぅ!いきなりなんだから……」
「歩けないんだ。こっちの方が手っ取り早い」
「そ、そうだけど……」
「なんだ?不服か?」
「……ううん。……ありがと」
「お礼なら朝の挨拶でいいぞ?」
「?」
マリコは首を傾げ、暫く思案していたが、やがて土門のお礼に思い至った。
「……土門さん、おはよう」
髭剃り前の頬に、柔らかな感触が降ってくる。
土門は目を細め、口角を緩くあげた。
「熱の後だからな。無理せず食えよ?」
ダイニングテーブルには、白いご飯と焼鮭、卵焼きが並んでいた。
先程の香ばしい香りは鮭の焼ける匂いだったのだろう。
マリコは迷わず手を伸ばした。
「ん。美味しい!」
少量でもパクパクと食べ進めるマリコを、土門は嬉しそうに見守る。
「土門さんは食べないの?」
「ああ。食べるさ。だが、その前に……」
土門はマリコの口元に手を伸ばす。
端にぴとっと張りついた米粒をすくい取り、自分の口のなかに運ぶと咀嚼する。
「ごちそうさん……」
そしてまたマリコの心拍数は上がり、頬は赤くなるのだった。
ソファに深く腰掛け、キッチンで後片付けに勤しむ土門の背中を眺めているうちに、マリコはうつらうつら船を漕ぎ始めた。
下がったとはいえ、発熱したことでの体力低下と、程よく満腹になったことが眠気を誘ったようだ。
「ん…。土門さん……」
マリコは、こてん…とソファに倒れ、小さく丸まる。
名前を呼ばれたような気がして振り返った土門は、そんなマリコの様子に破顔した。
蛇口を捻って水を止め、手早く濡れ手を拭くと、マリコのそばにしゃがみこんだ。
頬を覆う髪をサラリとかきあげ、耳にかける。
マリコは穏やかな表情でしずかな寝息をたてている。
起こすのも忍びなく、土門は手近においてあったブランケットでマリコを覆う。
そしてしばらく髪を撫でていると……、土門の瞼も下がり始めた。
やがて。
二人の健やかな息づかいが、無音の室内を満たしていく。
時に重なり、時に追いかけ合うように。
香ばしい香りにマリコが目を覚ますと、正面の椅子に土門が腰掛け新聞を読んでいた。
「土門さん?」
「目が覚めたか?気分はどうだ?」
「ん…。もう大丈夫。え?土門さん、仕事は??」
マリコは壁掛け時計を目にして、焦ったように土門へ問いかける。
「今日は休みを取るように指示された。それも部長直々に、だ。お前を必ず病院へ連れて来るように厳命されている」
そう説明しながら、土門はマリコと額を合わせて熱を確かめる。
「ど、土門さん……」
マリコはドギマギして視線が泳いでしまう。
「……よし。下がってるな。……ん?どうした?」
熱は下がっているのに、マリコの顔は赤いままだ。
「な、何でもないっ!」
ぷいっと横を向いてしまったマリコに気づかれないように、土門はふっと小さく笑うと、優しい眼差しを向けた。
「そういう訳だ。今日は俺もゆっくりさせてもらう。ところで、榊。お前、腹は……」
“ぐぅー”。
「「……………」」
「食えるらしいな」
くくっと笑う土門に、ますますマリコの顔が赤みを増す。
「じゃぁ、朝飯にするか。……よっと」
「えっ?……きゃあ!」
フワリと浮いた体に、マリコが声をあげ手足を動かす。
「おい!大人しく捕まってないと落ちるぞ!!」
その忠告に、マリコはとっさに土門の首に抱きつく。
「も、もぅ!いきなりなんだから……」
「歩けないんだ。こっちの方が手っ取り早い」
「そ、そうだけど……」
「なんだ?不服か?」
「……ううん。……ありがと」
「お礼なら朝の挨拶でいいぞ?」
「?」
マリコは首を傾げ、暫く思案していたが、やがて土門のお礼に思い至った。
「……土門さん、おはよう」
髭剃り前の頬に、柔らかな感触が降ってくる。
土門は目を細め、口角を緩くあげた。
「熱の後だからな。無理せず食えよ?」
ダイニングテーブルには、白いご飯と焼鮭、卵焼きが並んでいた。
先程の香ばしい香りは鮭の焼ける匂いだったのだろう。
マリコは迷わず手を伸ばした。
「ん。美味しい!」
少量でもパクパクと食べ進めるマリコを、土門は嬉しそうに見守る。
「土門さんは食べないの?」
「ああ。食べるさ。だが、その前に……」
土門はマリコの口元に手を伸ばす。
端にぴとっと張りついた米粒をすくい取り、自分の口のなかに運ぶと咀嚼する。
「ごちそうさん……」
そしてまたマリコの心拍数は上がり、頬は赤くなるのだった。
ソファに深く腰掛け、キッチンで後片付けに勤しむ土門の背中を眺めているうちに、マリコはうつらうつら船を漕ぎ始めた。
下がったとはいえ、発熱したことでの体力低下と、程よく満腹になったことが眠気を誘ったようだ。
「ん…。土門さん……」
マリコは、こてん…とソファに倒れ、小さく丸まる。
名前を呼ばれたような気がして振り返った土門は、そんなマリコの様子に破顔した。
蛇口を捻って水を止め、手早く濡れ手を拭くと、マリコのそばにしゃがみこんだ。
頬を覆う髪をサラリとかきあげ、耳にかける。
マリコは穏やかな表情でしずかな寝息をたてている。
起こすのも忍びなく、土門は手近においてあったブランケットでマリコを覆う。
そしてしばらく髪を撫でていると……、土門の瞼も下がり始めた。
やがて。
二人の健やかな息づかいが、無音の室内を満たしていく。
時に重なり、時に追いかけ合うように。