居場所
その3日後。
マリコは清水と小料理屋で面会した。
返事を伝えるためだ。
清水はマリコの話をじっと聞いていた。
そして聞き終えると相好を崩し『君も変わったな』と珍しく声をあげて笑った。
「清水先輩、よろしくお願いします」
「こちらこそ。では、二人の未来に!」
合わせたグラスからは、軽やかな音が響いた。
そして1週間後、マリコは取るものも取り敢えず清水と共に渡米した。
土門は捜査を理由に、見送りには行かなかった。
後で気づくと、マリコから『行ってきます』のメッセージだけがスマホへ届いていた。
返信しようと開いた画面に、何時まで経っても土門は文字を打ち込むことはできず、やがてため息と共に閉じた。