日常の一コマシリーズ≪vol.2≫
昼休みの科捜研。
パブリックスペースで早月と亜美は、PCの画面に食いついていた。
亜美が見逃したドラマの配信を見ていると、ちょうどやって来た早月が、『私も見たい!』と即席観賞会が始まったのだ。
流れで付き合わされることになったマリコも、二人より後ろで、画面を眺めていた。
「亜美ちゃん、ここからよ~」
早月が亜美にニヤリと笑う。
早月はすでに一度このドラマを見ているのだ。
画面には遊園地のベンチに並んで座る男女が映っていた。
イケメンだが、無表情の男性。
対して、くるくると動く大きな瞳が可愛らしい女性。
二人はソフトクリームを食べていた。
女性が一口食べると、ちょん、とその鼻先にソフトクリームが乗った。
男性はそれに気づくと、無表情のまま女性に手を伸ばし、鼻先をぬぐった。
びっくりした様子の女性だったけれど、どうやら彼女はかわいらしいイタズラを思いついたようだ。
もう一口ソフトクリームを口に含んだ女性は……。
「わ!これって絶対、期待してますよね!?」
「当たり前じゃな~い。この期待に満ちた顔が可愛いのよね」
今度はその口のはしに、ソフトクリームをつけていたのだ。
期待に満ちた瞳をきらきらさせて、男性を見る。
男性の方は……。
しばらくそんな女性を、眉一つ動かさず眺めていた。
……のだが!
「キャー!(≧▽≦)いやー!なに、なにっ!」
「くぅ~。何度見ても、“きゅんポイント”だわ♡」
顔を寄せると、ペロッと舐めとったのだ。
変わらぬ表情のまま。
「あの……」
きゃいきゃいはしゃぐ二人の後ろから、マリコが声をかける。
「なあに、マリコさん?」
「これが“きゅんポイント”なんですか?」
「そうよ!こういうシチュエーション、いいわよね~」
早月は『たまらないわ!』と頭を振って興奮している。
亜美に至っては両手を胸の前で組み、リピートしている。
「そう……ですね」
マリコにはイマイチ分からない。
なぜなら……。
マリコは昨年のクリスマスを思い返した。
この年のクリスマスイブ。
報告書片手にやって来た早月のお持たせは、やはりホールケーキだった。
みんなで取り分けた一切れを、マリコは食べずに持ち帰った。
そしてその夜、マリコの部屋にやって来た土門と半分ずつ食べようということになったのだ。
「今フォークを持ってくるわ」
「いや、このままで大丈夫だ」
土門はそういうと、すぐに半分かじってしまった。
「ほら」
手渡されたマリコは仕方なく、食べやすそうな部分を選んで口にした。
すると、ちょん、と生クリームが鼻先についてしまった。
「赤鼻じゃなくて白鼻だな?」
土門は笑って、その生クリームを指で拭き取った。
マリコは残りを無理矢理口に詰め込んだ。
もぐもぐと食べ終えると、今度は口の端に生クリームが残っていた。
「ここにもついてるぞ?」
土門に指摘され、マリコは手で拭う。
でも全部は取りきれず、残ってしまった。
再び、土門の手がマリコに伸びる……。
残った生クリームはとっくに取れたはずなのに、何度も何度も同じ行為は繰り返され。
とうとうマリコはソファに沈められたのだった。
思い出すと顔は熱くなるけれど。
『じゃあ、あれも“きゅんポイント”だったってことかしら?』
やはりマリコにはさっぱり分からず、首を傾げるばかりなのであった。
『勇者』と『魔王』ならぬ、『刑事』と『科学者』の一コマである。
fin.
■■■ どもマリに、一コマな質問…など(笑) ■■■
*管…わたくし、管理人でーす(^^)/
土門とマリコ、管理人で
土「これが“きゅんポイント”なのか?」
マ「そうらしいの。土門さんはわかる?」
土「まぁ、わからんでもないが……」
マ「え!?」
土「お前にはわからんだろう」
マ「ちょっとぉー!」
土「でも、俺たちには…わりと日常茶飯時だよな」
管「え!?それは、お二人で食事に行ったときも?」
管理人、食いつきました!(笑)
土「……外でやるわけないだろう」
土門は呆れ顔だ。
土「だが、今朝も慌てて食事をしていたら、お前はヨーグルトをつけていたな?」
マ「なによ、土門さんもほっぺにお米粒ついていたじゃない!」
管「……で、それはティッシュとかは使わず?」
マ「だって、自分ではどこについているかわからないでしょう?」
きょとん、とマリコは首を傾げる。
管「だ、だったら、手でとってあげるとか……?」
マ「お箸持っていたりするし。口の方が迅速かつ合理的だわ」
土「……………」
土門は笑いを必死にこらえている。
管「わ、わかりました。でも。私…新たな“きゅんポイント”見つけましたよ!」
マ「なあに?」
管「昨夜もお楽しみだった、ってことですよね?(  ̄▽ ̄)♡」
土&マ「「……………」」