File.VD





今日は2月14日。
ということで、マリコはキッチンにこもっている。
先日事件のために料理動画を撮影してから、何故か料理に目覚め、今年は手作りチョコレートに挑戦すると土門に宣言したのだ。

しかし型に流し込むだけのはずが、さっきから『あ!』とか『ああっ!』といった母音ばかりが聞こえてくる。

「大丈夫か、榊?」

「もう少し待ってて」

くるりと振り向いたマリコの手にはチョコレートがついていた。
袖口近くにも飛んでいる。

「お前、服が汚れるぞ」

「だって、エプロンなんて持ってないわ」

「あ!そうだ。この前の動画を見てな……。買ってきたぞ」

そういって土門が取り出したのはエプロン。
心なしか、フリルやレースが多いような印象を受けるのは気のせいだろうか?

「手が汚れてるから、土門さんつけて」

土門はマリコに近づき、頭にエプロンの紐を回した。

そのとき、ふわりといい香りが土門の鼻孔をくすぐる。

ーーーーー くんくん。

土門はマリコの体をシンクに押しつけ、髪に顔を埋めるように匂いをかぐ。

「ちょっと!何してるの?」

「いや、いい香りがするからな」

耳元で囁かれ、吐息がかかり、マリコは思わず首を竦める。

「くすぐったいわ!」

「くすぐったいだけか?」

その問いかけに、マリコは土門のイタズラに気づく。

「今は料理中よ!」

「だったら、後でならいいってことだな?」

「もう!屁理屈ばっかり!それより早くして」

マリコは首にぶらさがったままのエプロンを早くつけてくれと、土門にせがむ。

「早く……何をシテほしいんだ?」

「へんなところだけカタカナ変換しないで!」

「甘い香りをさせてるお前が悪い。どれだけ甘いのか…確かめたくなるだろう?」

尚もぐっと体を押し付けられ……ぴったりと重なったことで、マリコは赤らむ。

「もう!これぐらいの甘さよ!!」

マリコはチョコレートのついた人差し指を、土門の口にねじ込んだ。

「わかったでしょ?わかったら、もうはなし…………」

ゆっくりと、丹念に、口の中でその甘さを味わいだした土門。

マリコはとうとう根負けした。

そんなマリコの様子に気づいた土門は、ようやくエプロンをむすんでやった。

「?」

「ふむ。これは、これで……」

何事か考え込む土門。
そして眉根を寄せ、いやに難しい表情でマリコにたずねた。


「なあ……………。中だけ脱がせていいか?」


「!?」

文句を言おうと開きかけた唇は、一言も発することなく塞がれる。


『あまぁい……』

土門の口内に残されたチョコレートの甘さに、マリコの気持ちも徐々に溶けていく。

混ざりあう気持ちのよさに、マリコの舌触りはより滑らかに。
そして口どけは、よりまろやかに……。
土門を充たしていくのだった。


『土門さんたら、えっち(笑)』…じゃなくて。
バレンタインデーの一コマである。



fin.



■■■ どもマリに、一コマな質問…など(笑) ■■■
*管…わたくし、管理人でーす(^^)/


《設問》エプロンの有用性について、あなたの考えを15文字以内で記しなさい。(句読点も1字に含める)


土「そんなの『服の汚れを防ぐため。』だろう」

管「ぶー(*´з`)そんな有用性ならわざわざ聞くまでもないですよ!」

土「しかしなぁ……。そう言われてもほかには…?」

管「またまた!あのフリフリエプロン、何に使ったんです?( ̄ー ̄)ニヤリ」

土「は!?」

管「だーかーらー、あのエプロンは何のお役に立ったんですか?」

土「…………」

管「仕方ないなぁ…。 模範解答は『マリコを美味しく食べるため♡。』でしょう?( ̄▽ ̄)b」


1/2ページ
スキ