日常の一コマシリーズ≪vol.2≫
「おはようございます。今日は卒業式のようですね……」
ジャケットから白衣へ着替えた宇佐見が、通勤途中の光景を思い出し、口にする。
「おはようございます。だから親子連れの学生さんが多かったのね!」
相変わらず季節感に疎いマリコに、宇佐見は思わず苦笑した。
「宇佐見さん、高校の制服は学ランですか?」
亜美が興味津々といった様子で会話に参加する。
「いいえ。ブレザーでしたね……」
「あ、そんな雰囲気ですね(笑)。じゃぁ、ネクタイ争奪戦だったんじゃないですか?」
「いいえ、とんでもない」
「とか言って……。女子からもネクタイを押し付けられた派ですね?」
「……………」
宇佐見はただ笑っている。
「ネクタイ?」
マリコは不思議そうな顔で繰り返す。
「そうですよ。学ランなら、第2ボタンをもらうこと。ブレザーならネクタイを交換するのが卒業式の定番なんですよ!」
「何のために?」
「え?……っとお、好きな男女の思い出作りというか……」
「ふぅーん」
マリコの興味を惹くような話題ではなかったのだろうか。
気のない答えが返ってきた。
しかし、亜美はめげずに食い下がる。
「マリコさんはどうでした?」
「そういえば……。やたらと金ボタンを手渡されたわね。それに、私の学校…女子は衿にリボンが着いていたんだけど。それを『ください』って頼まれた記憶があるわね」
「たはは……さすが!それで、マリコさんはリボンを誰かにあげたんですか?」
「いいえ。そういえばちょうど、今、家にあるのよ!」
「え?」
「母さんが家の片づけをしたら出てきたから、って。今さら送ってもらってもどうしようかと思っていたのよね……」
その時、入口の壁に身を隠すように立ち、そっと聞き耳を立てていた男が一人…。
しかし、誰もその男に気づいてはいなかった。
ーーーーー マリコの自宅にて。
「え?これを?」
「そうだ」
「別にいいけど…汚れてるわよ?」
はい、と渡されたそれを土門は握りしめると、『くう~』としばし感慨に耽るのであった(笑)
3月の頃の一コマである。
fin.
■■■ どもマリに、一コマな質問…など(笑) ■■■
*管…わたくし、管理人でーす(^^)/
管「あれ?土門さん、それ…。随分古いものですね?」
土「ん?これか?」
土門が持ち上げたのは、自宅の鍵。
その先にはシンプルなキーホルダー、と。
色褪せた細いリボンが結ばれていた。
管「何ですか、それ?」
土「……お前には教えん」
管「はっ!?何ですか、そのいじめっ子的発言は?」
管理人は開いた口がふさがらない…。
土「ふん!」
管「いいですよ、マリコさんに聞きますから!」
土「な、なんで榊に聞くんだ!?」
管「だって、土門さんがそういう態度に出るときは、大抵マリコさん絡みですから!」
土「ぐぅ。な、なぜ、わかる……」
管「管理人、なめんなよ!ふふん( ̄ー ̄)」
土「くそっ!」
管「さあ、吐け!吐いて楽になっちまえ!」
土「じ、じつは……って言うわけないだろ。バカか!」
管「ええ~~~」
土「仕方ないな…。誰にも言うなよ?」
管理人、ブンブンと首を縦に振る。
土「実はな、榊が高校のときにつけていたリボンなんだ。奇跡的に誰の手にも渡らず残っていたらしい。だからな、俺がいただいた」
管「それって……」
土「榊の高校生の頃の思い出…他の奴が手にすると考えただけで癪に障る」
なんか文句あるか?と言わんばかりのドヤ顔。
管「みなさーん!」
土「なに!?」
管「聞きましたよね?土門さんたら…や、き、も、ち、焼き♡」
土「お前……いつか絶対パクってやる💢」
管「できるかしらん(  ̄▽ ̄)♪」