日常の一コマシリーズ≪vol.2≫
ここはホットヨガ教室。
ホットヨガとは室温を35〜39度程度、湿度を60%前後に設定した室内で行うヨガである。
インドの気候を模したとも言われ、発汗作用によるデトックス効果などが期待される。
そんな教室に、今日は土門とマリコ、二人で参加していた。
もともと亜美が友人と予約していたのだが、都合が悪くなってしまい、マリコに声がかかったのだ。
通常は女性のみの教室らしいが、予め予約しておけば、男女でも参加可能だという。
そこで、マリコは煮え切らない土門を強引に誘い参加したのだ。
「それではまずパートナーと向かい合ってください。体の中心を真っ直ぐに意識して座り、足を開きましょう。次にタオルを片手に持ってください。その際、パートナーとは左右逆になるように持ってくださいね。では、お互いに相手のタオルを握ってください。いきますよ!大きく息を吸って…」
インストラクターの言葉通り、二人はタオルで繋がったまま息を吸う。
「まず右側の方から、パートナーを引っ張りましょう。さあ、引っ張って、引っ張って、あと少し…。では今度は交代です。はい、引っ張ってぇ……」
所謂シーソーの動きだ。
何度目かで土門の股関節は悲鳴を上げ、ストップをかけようとマリコの顔を見た。
そう、はじめは顔を見るつもりだったのだ。
他に何の他意もない。
しかし、マリコのゆったりとしたヨガウェアの襟からは胸元が顕になっていた。
引っぱられる側で上体を倒しているため、谷間がくっきりと浮き上がり、なおかつその中心を汗がつぅーと流れていく。
その様に、土門はごくりと大きく喉を鳴らした。
「土門さん?」
「も、もう限界だ。これ以上は足が開かん」
慌てて目を反らし、土門は額の汗を拭う振りをして赤い顔を隠す。
「もう?でも、土門さんにしては頑張ったかも。ふふふ」
「はーい。お疲れさまでした。最後はクールダウンして体を解しましょう。猫のポーズです。ご自身が気持ちいいと感じるまでストレッチを続けたら、今日は終わりです。さあ、ゆっくりと伸びて…」
二人は両膝を立てたまま、ぐーんと腕を伸ばし、背をそらす。
猫が伸びをするポーズだ。
土門は早々に終えると、乾いた喉を潤すために、壁際のロッカーに向かう。
持参したペットボトルからスポーツドリンクを勢いよく口に含むと振り返った。
「……ぶほっ!」
吹き出しそうになるのを必死にこらえ、顔をそらす。
けれど、どうしても視線は戻ってしまう。
土門の目の前には猫のポーズをしたマリコがいる。
ただし、土門が立っているのはちょうどマリコの背後だ。
つまり、高々と持ち上がったマリコのヒップが、土門には丸見えだ。
汗ばんで生地は肌に貼り付き、まろやかな丸みや、下着のラインがはっきりと見て取れた。
「……………」
イケナイと思いつつ、記憶は昨夜へ遡る。
ちょうど今と同じ格好のマリコへ土門は…。
いかがわしい記憶を追い払おうと、土門は頭を振り、パン!と頬を叩く。
『いやっ!そんな、お、くぅ………』
「…………………………」
努力も虚しく、鮮明に復元されるマリコの艶声。
――――― つぅー。
「ん?汗か?」
何かが流れていく感覚がする。
と、ちょうどストレッチを終え、振り返ったマリコが驚愕していた。
「土門さん、大丈夫!?」
慌てて駆け寄り、タオルを差し出す。
「何がだ?」
「何がって…鼻血よ!」
「!?」
マリコから渡されたタオルで拭えば、白いそれは鮮血で真っ赤に染まる。
「やだ、暑くてのぼせたのかしら…」
「……………」
まさか、マリコの姿に興奮したとも言えず、土門は鼻を押さえたままトイレへ駆け込んだ。
落ち着かないのは、鼻血だけではない。
男には色々と……あるのだそうな。
『男はつらいよ』の一コマである。
fin.
■■■ どもマリに、一コマな質問…など(笑) ■■■
*管…わたくし、管理人でーす(^^)/
管「マリコさん、最近オープンしたホットヨガに行かれたんですか?」
マ「ええ、そうなの。亜美ちゃんが行けなくなっちゃったから、代わりにね」
管「いいですね!どんな感じでした?」
マ「デトックス効果は抜群だと思うわ。結構汗をかいたもの」
管「室内はかなり暑いですか?」
マ「私は大丈夫だったけど、土門さんは…」
管「あ、土門さんも一緒だったんですね」
マ「ええ。土門さんは暑くてのぼせたのか、鼻血を出してしまったの」
管「えっ…………………………鼻血?」
土「榊、そいつには、余計なことを言うな!」
管「ふーん。鼻血……………」
土「な、なんだ?」
管「へー。鼻血……………」
土「だから、何なんだ!?」
管「鼻血だけで済んだんですか?まさかトイレまで…?」
マ「え!?管理人さん、土門さんがトイレへ駆け込んだこと、どうして分かるんですか?」
管「あーらら…( ̄ー ̄)ニヤリ」
土「失せろヽ(`Д´#)ノ💢」