日常の一コマシリーズ≪vol.2≫
マリコはお風呂からあがると、髪を乾かし、肌のお手入れをすることが日々の日課だ。
今夜もそこまで終えると、寝室へ向かった。
「?」
さっきまでベッドの上で単行本を読み耽っていた土門は、いつの間にか本を開いたまま睡魔に屈していた。
「寝ちゃったのね……。ここのところ忙しかったものね」
マリコは本を片付け、布団を肩口まで引き上げようとした。
すると……。
――――― スリ、スリ。
「?」
――――― スリ、スリ、スリ。
土門の手が隣のシーツの上を撫でるように動く。
「土門さん?」
「うーん……?」
夢うつつでマリコの声が聞こえたのだろうか?
土門はうめき声をあげると、今度は明らかに何かを探すように手が動く。
『もしかして……?』
マリコは亜美からディズニーランドのお土産にもらったクマのぬいぐるみを手に取ると、そっと土門の隣に置いてみた。
「♪♪♪ 」
気づいた土門は満足そうな吐息とともに、ぬいぐるみを抱き込んだ。
そしてそのまま、気持ち良さそうに熟睡する。
マリコは必死に笑いを堪える。
「土門さん、可愛すぎるわ~」
しかし、ふと気づいた。
「待って?私、こんなに毛深くない……わよね?」
なにやら複雑な気持ちになったマリコは、土門の手からぬいぐるみを奪おうと試みるが、がっしりと抱えられていて手出しできない。
「どういうこと?私よりぬいぐるみがいいの?私とぬいぐるみを勘違いしてるの??」
どちらにしてもマリコには嬉しくない。
急にしょげかえったマリコは、ベッドの隅っこで丸くなる。
「土門さんのばか……」
眠れないと思いつつ……。
いつしかマリコの瞼も重くなっていった。
翌朝、アラームより前にマリコは目覚めた。
手足の自由が効かない。
でも不思議と嫌な感じはなく、それよりも背中の温かさが心地いい。
「……?」
不自由ながらも少しだけ身をよじると。
頭上には土門の顎が見えた。
白髪の混じった無精髭は、マリコだけが知っている土門の“隙”だ。
ということは。
マリコはぐるりと身体を反転させる。
やはり……。
自分は土門に抱き込まれているのだと知り、額を胸に擦り付けた。
「う、ん?なんだ……?」
土門の寝ぼけた声が降ってくる。
「何でもないわ。まだ寝ていて大丈夫よ」
「ん……」
『すぅ……』と、再び土門は寝息をたてる。
マリコもまた土門の香りに包まれて、ゆっくりと眠りに落ちていくのだった。
『ライナスの毛布』の一コマである。
「おいっ!起きろ、榊!遅刻だ!!!」
fin.
■■■ どもマリに、一コマな質問…など(笑) ■■■
*管…わたくし、管理人でーす(^^)/
♪ピンポーン
『宅急便でーす』
マ「何が届いたの?」
土「わからん。管理人からだ」
マ「ずいぶん大きいわね?」
軽いが、一メートル以上はありそうだ。
土「開けてみよう」
土門が包み紙を取り去ると、出てきたのは……。
土「な、なんだ!?」
マ「ええ?私!?」
それは、マリコを2/3程度に縮尺した所謂“抱き枕”だった。
マ「手紙がついてるわよ?ええと……。『ソーシャルディスタンス用にご利用ください』ですって」
要するに、「くっつきすぎだ!」と暗に指摘されているのだ。←だって、そーじゃん(笑)
土「あいつ……。余計なお世話だ!本物がいるのに、誰が使うか!?」
マ「……………」
マリコは赤面しつつ、「一度試してみようかしら?」とこっそりイタズラを計画するのだった。