雫
雨が止んでも。
その日、土門とマリコは被害者宅へ遺品を返却しに向かった。
悲しみに暮れる遺族を目の当たりにし、二人は沈む気持ちを持て余しつつ並んで歩みを進める。
そのうちに、パラパラと水滴が二人の衣服に濃い染みを作った。
「雨か……」
「土門さん、これしかないんだけど……」
マリコは携帯していた折り畳み傘を取り出した。
二人で入るには小さすぎる傘に、少しだけ寄り添って並ぶ。
歩いていると、時おり肩が触れ合う。
土門もマリコもそれには気づかない振りをする。
けれど、緊張から互いに半身を強ばらせている……。
ひとしきり降り続いていた雨だったが、次第に雨足が弱まりだした。
「止んだか……?」
土門は傘から手を出し、雨粒を確認する。
「私の目視だと…、まだ降っているように見えるわ」
マリコの口ぶりに土門は苦笑する。
「そう、だな……。もう暫く差しておくか?」
そう言うと、今度は肩と…手のひらが触れた。
温かく大きな手と、柔らかく華奢な手は離れることを惜しむけれど。
今はまだ……。
あと少し……。
雨が止んでも、どうか傘はこのままで。
fin.
その日、土門とマリコは被害者宅へ遺品を返却しに向かった。
悲しみに暮れる遺族を目の当たりにし、二人は沈む気持ちを持て余しつつ並んで歩みを進める。
そのうちに、パラパラと水滴が二人の衣服に濃い染みを作った。
「雨か……」
「土門さん、これしかないんだけど……」
マリコは携帯していた折り畳み傘を取り出した。
二人で入るには小さすぎる傘に、少しだけ寄り添って並ぶ。
歩いていると、時おり肩が触れ合う。
土門もマリコもそれには気づかない振りをする。
けれど、緊張から互いに半身を強ばらせている……。
ひとしきり降り続いていた雨だったが、次第に雨足が弱まりだした。
「止んだか……?」
土門は傘から手を出し、雨粒を確認する。
「私の目視だと…、まだ降っているように見えるわ」
マリコの口ぶりに土門は苦笑する。
「そう、だな……。もう暫く差しておくか?」
そう言うと、今度は肩と…手のひらが触れた。
温かく大きな手と、柔らかく華奢な手は離れることを惜しむけれど。
今はまだ……。
あと少し……。
雨が止んでも、どうか傘はこのままで。
fin.
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