Weather
Rainy
「なぁ、火村。めっちゃ濡れてんな」
「そうだな」
「こっちも開いたらええんちゃう?」
アリスがうんざりした表情で、右手のビニ傘をぶらぶら振り回している。
はじめはパラパラ程度だった雨は、しとしとに変わり、今ではザーザーという擬音語がぴったりな雨に変わっている。
それなりに上背のある男二人が、並んで1本の傘におさまるわけもなく、互いに片方の肩は肌に染み入るほどに濡れている。
それでも火村は頑なに1本の傘にこだわる。
アリスに柄の部分を持たせ、自分はその手を包み込んで握る。
「アリス、もっと近くに寄れ」
「変わらんやろ……もうびしょ濡れや」
そう言いながらも、アリスは火村に肩をぶつけるように寄り添う。
火村の口許がすこしだけ綻んだ。
「そうか。びしょ濡れ、なんてアリスは大胆だな」
「君なぁ…。言うことがオヤジや」
呆れたように見せかけても、アリスの顔はほんのり赤い。
言ってしまってから、自分でもよからぬ想像をしていたことを火村に見抜かれて、アリスは居心地悪いことこの上ない。
「もう、はよ帰るで」
「待ちきれないからか?」
「………」
アリスは火村のタイをぐいと引き寄せると、その耳元にいたずらを仕掛ける。
「そうや!…て言うたらどーする?」
目一杯艶っぽく囁いて、火村の耳朶を食む。
「大歓迎だな。このままキスしていいか?濃厚なやつ」
「明日から無職になってもええんならな!」
「なんだ。うちの生徒が後ろにいること、気づいてたのか?」
「当たり前や!キスなんてしたら、傘さしてても丸分かりやろ」
お前の濃厚なやつは特にダメや!とプリプリ怒っている。
「はいはい。帰ってからに期待しておくよ、びしょ濡れアリス」
ぺしっ、と頭を叩かれる。
それすら愛しいと、火村の顔は緩みっぱなしだった。
fin.
「なぁ、火村。めっちゃ濡れてんな」
「そうだな」
「こっちも開いたらええんちゃう?」
アリスがうんざりした表情で、右手のビニ傘をぶらぶら振り回している。
はじめはパラパラ程度だった雨は、しとしとに変わり、今ではザーザーという擬音語がぴったりな雨に変わっている。
それなりに上背のある男二人が、並んで1本の傘におさまるわけもなく、互いに片方の肩は肌に染み入るほどに濡れている。
それでも火村は頑なに1本の傘にこだわる。
アリスに柄の部分を持たせ、自分はその手を包み込んで握る。
「アリス、もっと近くに寄れ」
「変わらんやろ……もうびしょ濡れや」
そう言いながらも、アリスは火村に肩をぶつけるように寄り添う。
火村の口許がすこしだけ綻んだ。
「そうか。びしょ濡れ、なんてアリスは大胆だな」
「君なぁ…。言うことがオヤジや」
呆れたように見せかけても、アリスの顔はほんのり赤い。
言ってしまってから、自分でもよからぬ想像をしていたことを火村に見抜かれて、アリスは居心地悪いことこの上ない。
「もう、はよ帰るで」
「待ちきれないからか?」
「………」
アリスは火村のタイをぐいと引き寄せると、その耳元にいたずらを仕掛ける。
「そうや!…て言うたらどーする?」
目一杯艶っぽく囁いて、火村の耳朶を食む。
「大歓迎だな。このままキスしていいか?濃厚なやつ」
「明日から無職になってもええんならな!」
「なんだ。うちの生徒が後ろにいること、気づいてたのか?」
「当たり前や!キスなんてしたら、傘さしてても丸分かりやろ」
お前の濃厚なやつは特にダメや!とプリプリ怒っている。
「はいはい。帰ってからに期待しておくよ、びしょ濡れアリス」
ぺしっ、と頭を叩かれる。
それすら愛しいと、火村の顔は緩みっぱなしだった。
fin.