Weather

Sunny




太陽サンサンな午後。
太陽に2回も“さん”付けして何になるん?……そんな“?”なことを考えてしまうほど、アリスの心は浮足立っていた。
ずっと雨降りが続いていた梅雨の合間の貴重な晴天。
急ぎの締め切りもなく、となりの恋人も今日は休暇…となれば、アリスでなくとも心は晴れやかだろう。

「アリス。本当に行くのか?」
本日2度目の火村の問いかけに、アリスは、あたりまえやん♪と、いそいそと出かける支度を始める。

半年前に雑誌で目にしてから、ずっと行きたいと思っていたスイーツ食べ放題の割引券を、アリスは知り合いの編集から奇跡的にゲットしたのだ。

何着てこ?暑くなりそうやし、もう半袖がええかなぁ…、と独り言をつぶやきながら、タンスから夏物を引っ張り出す。

「俺はお前と家でくつろぎたい…」
ソファに腰かけたままの火村は、横目で楽しそうなアリスをじっとり眺める。
「そんなん、帰ってきてからゆっくりすればええやろ。せっかくのお天気やし……ずっと行きたかってん。ダメか?」
下からのぞき込むように、くりっとした瞳に見つめられては嫌とは言えない。
もっとも、初めから火村にNOという選択肢はない。

アリスはベッドの上に、ネイビーの解禁シャツとグレーのタンクトップを広げる。
ようやく服が決まったらしい。
よっ、と一声あげて、着替えを始めた。
両腕でTシャツを持ち上げ、頭を引き抜く。
火村の目には、白くて滑らかなアリスの背中がまぶしく映る。
腕の動きに連動して上下に移動する肩甲骨が艶めかしい。

「アリス」
何?と振り向いたときには、アリスはベッドの空いている部分に押し倒されていた。

「ちょお、火村!?」
「スイーツはもう少しお預けだ。食べ放題なんだろ?だったら、がっつり腹を減らしてから行った方が“もとが取れる”ぜ?」
「君……。大阪人の痛いとこついてくるなぁ」
本気でうーんと考え込んだアリスを見ると、可笑しくて笑いが漏れそうになる。
だが、そんなことをしては、この作家センセイはへそを曲げてしまうだろう。
アリスが考え込んでいる間に、火村はせっせとコトを進めることにする。

――― チャンスをものにする男は、1秒足りとも無駄にはしない。




fin.



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