『密着!どもマリ24時』(平日編)
after dinner
――― 飯行くか?
誘われたマリコは誘い主の土門と少しだけ酒を嗜み、酔いざましを兼ねて、川縁を散歩していた。
火照った頬に、風が気持ちよかった。
マリコの足取りは軽く、土門もそんなマリコに歩調を合わせてゆったりと歩みを進める。
しかし日中は温かいとはいえ、春先の夜はまだ冷える。
暫くすると、マリコの肩が少しだけ震えた。
「冷えてきたな……」
「そうね、少し」
「そろそろ、帰るか?」
「……ええ」
そのまま無言で二人は大通りへ向かう。
「明日は非番だな。お前は?」
「私も同じよ。だからお酒に付き合ったんじゃないの……」
マリコは『忘れたの?』と可笑しそうに笑う。
「そう……だったな」
そういうと、土門はちょうどやって来た空車のタクシーを停める。
「榊、乗れ」
マリコは大人しく後部座席の奥におさまった。
続けて土門が隣に滑り込む。
「お客さま、どちらまで?」
「×××××まで」
ミラー越しに訪ねる運転手に土門が告げたのはマリコの自宅ではなく、自身のマンションの名前だった。
土門は気遣うように、うかがうようにマリコを見る。
しかしマリコは眠るつもりなのか、目を閉じ、土門の肩に寄りかかる。
「榊?」
土門の呼びかけに、いらえは無かった。
けれども……。
少しだけひんやりとした手が、温もりを求めて土門の手をぎゅっと握りしめた。
「「………」」
静かな車内はほんの少しの情熱と……、優しさに充ちていた。
fin.
――― 飯行くか?
誘われたマリコは誘い主の土門と少しだけ酒を嗜み、酔いざましを兼ねて、川縁を散歩していた。
火照った頬に、風が気持ちよかった。
マリコの足取りは軽く、土門もそんなマリコに歩調を合わせてゆったりと歩みを進める。
しかし日中は温かいとはいえ、春先の夜はまだ冷える。
暫くすると、マリコの肩が少しだけ震えた。
「冷えてきたな……」
「そうね、少し」
「そろそろ、帰るか?」
「……ええ」
そのまま無言で二人は大通りへ向かう。
「明日は非番だな。お前は?」
「私も同じよ。だからお酒に付き合ったんじゃないの……」
マリコは『忘れたの?』と可笑しそうに笑う。
「そう……だったな」
そういうと、土門はちょうどやって来た空車のタクシーを停める。
「榊、乗れ」
マリコは大人しく後部座席の奥におさまった。
続けて土門が隣に滑り込む。
「お客さま、どちらまで?」
「×××××まで」
ミラー越しに訪ねる運転手に土門が告げたのはマリコの自宅ではなく、自身のマンションの名前だった。
土門は気遣うように、うかがうようにマリコを見る。
しかしマリコは眠るつもりなのか、目を閉じ、土門の肩に寄りかかる。
「榊?」
土門の呼びかけに、いらえは無かった。
けれども……。
少しだけひんやりとした手が、温もりを求めて土門の手をぎゅっと握りしめた。
「「………」」
静かな車内はほんの少しの情熱と……、優しさに充ちていた。
fin.
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