日常の一コマシリーズ





宇佐見は鑑定の手を一旦休め、壁時計に目をやる。
定時をかなり過ぎていた。
今日はクリスマスイヴで、マリコは明日非番に当たっているはずだ。
「マリコさん、あとはやっておきます。もう上がってください」
「え?でも……」
「土門さんとお約束があるのでは?」
「土門さんと?いえ、特にありませんけど」
「そう、ですか?」


同じころ、捜査一課では……。
「あの、土門さん。定時かなり過ぎてますけどいいんですか?」
「何がだ?」
「いえ、マリコさんが……」
「榊?榊がどうかしたのか?」
「あの…、マリコさんと何かお約束とかは?」
「榊と約束?いや、何もないぞ?」
「あ……。そ、そうですか」



それから1時間後。
蒲原は、科捜研で宇佐見のいれてくれたお茶のお相伴にあずかっていた。

「そういえば…。さっき、土門さんの車にマリコさんが乗っているのを見たんですよ。俺には約束なんてない、って言ってたんですけどね…。やっぱり約束していたんですね」

蒲原の言葉を聞き、宇佐見は二杯目を注ぐ手をとめた。

「いえ…。本当に約束していなかったんじゃないでしょうか?マリコさんも同じように仰っていました。たぶん、お二人にとって一緒に帰ることは当たり前で、今さら約束にはならないんでしょう」
「それってなんか……さらっと“あてられた”みたいですね」

何とはなしに、二人は気恥ずかしさを感じ、しばし無言で茶を啜る。
「………ウマイです」
「何よりです」
そして、男二人、再び茶を啜る。


そんな科捜研。
クリスマスイヴの一コマである。



■■■ どもマリに、一コマな質問 ■■■
*管…わたくし、管理人でーす(^^)/


(管)表札確認!
『土門』
(管)よぉし!

♪ピンポーン

(管)おはようございまーす!
(土)……………帰れ
(管)うっ。冷たい……
(土)今日、何日だと思ってる?
(管)12月25日です
(土)そうだ。クリスマスの早朝にくだらん質問しに来るような非常識なやつは帰れ!!

(管)あ、靴がある!マリコさんもいらっしゃるんですね♡
(土)………
(管)ぜひ、お二人に甘いイヴのお話を…(ムフッ)
(土)……あいつは、まだ寝てる
(管)きゃー!!!!!(≧▽≦)♡
(土)うるさいっ!o(`^´*)

(管)け、刑事のくせに……暴力反対(T-T)













(管)というわけで、門前払いを食らってしまいました。でもイヴの二人…気になりますよね?そこで今回は、管理人という立場を利用させていただき、後ほど、む、り、や、り、土門さんから聴取してきました!(笑)
(土)職権乱用だっ!
(管)ほほほ…それが何か?では、皆さま、どうぞ……





『星に願いを』




「わぁ!素敵!」
マリコの眼下には、ライトアップされた街並みが広がっている。

「いきなり寄り道しようなんて言い出すから、どこへ行くのかと思ったわ」
府警からの帰り、土門はいつもとは反対方向に車を走らせ、小高い丘の公園にマリコを連れてきた。
凍えるような寒さからか、公園には二人だけだ。

「今日はクリスマスイヴだしな。たまにはこんな寄り道もいいだろう」
「ええ!大歓迎!」
暫く、はしゃいであちこち指差していたマリコだったが、寒くなってきたのか、はぁーと白い息で両手を温める。
すると、ふわりと広げた土門のコートの中に抱き込まれた。

「土門さん?」
「実はクリスマスプレゼントを用意する時間が無かった。すまん」
「ううん。これで十分。私も用意できてないの…。おあいこね」
「そうか…。一応用意してくれる気はあったんだな」
マリコの耳元で土門は意外そうな声をあげた。
「失礼ね!当たり前でしょう」
ぷうと白い頬が膨らむ。

「だったら、ここへ連れてきた礼をくれ。それがクリスマスプレゼントでかまわん」
「え?うーん、お礼ね……」
悩むマリコに、土門の顔が近づく。
気づいたマリコは、目を閉じようとして、あることを思い付いた。
両手を伸ばし、土門の口をふさぐ。
「……!」
何やらもごもごと文句を言っているらしい土門をマリコはじっと見つめる。
「……?」

「土門さん。…………好きよ」

マリコからはめったに聞くことのない言葉と、夜景に溶け込んでしまいそうな淡い微笑みを目にして、土門の理性が振り切れる。

土門はマリコの両手を強引に引き剥がすと、有無を言わさず冷たい唇を温める。
今度はマリコもただそれに従った。


どうか…。
どうか、この先もずっと。

澄んだ夜空を流れる星に。
この想いよ………………届け。




fin.




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