日常の一コマシリーズ
『密着!警察24時』
(ナレーション)
最近の科学捜査の進歩は目を見張るものがあるが、それでも犯罪はなくならない…。捜査員とは違う手法、視点から犯人を追い詰める。そんな使命を持ち、犯罪に立ち向かうスペシャリスト集団…『科学捜査研究所』、通称、科捜研の仕事に密着する。
この日、事件発生の一報に駆けつけた所員は2名。
一人はカメラを片手にご遺体、周辺の様子などを逐一撮影している。
残る一人は……。
白衣をキリリと着こなし、鋭い眼差しで検視を行う女性だ。
大量の血液や、腐乱した遺体にさえ臆することなく、どんな特徴や証拠も見逃さないように目を光らせている。
その様子はまるで……。
「あの、少し静かにしてもらえませんか?」
「あ!すみません……」
マリコの要求に男は首を竦めながら、1歩後ろへ下がった。
「誰?」
蒲原が隣で撮影した画像を確認する呂太にたずねる。
「テレビの撮影の人だよ。科捜研の密着取材するんだってー」
「へぇ?」
「でもさぁー。殆ど一日中マリコさんにベッタリで、これじゃぁ、科捜研じゃなくて、マリコさんの密着番組みたいだよ……」
「…………」
呂太の言葉に、背後に立つ土門の耳がピクリと反応する。
「土門さん、ご遺体は洛北医大へ搬送して。早月先生に解剖してもらったほうがいいわね……」
ご遺体の検視を終えたマリコは、土門を見上げて説明する。
「わかった。お前はどうする?」
一方の土門はマリコを見下ろし、たずねた。
「もちろん、立ち会うわ」
「それなら送る。車で待ってろ……」
土門はマリコへ自分の乗ってきた覆面車のキーを渡した。
「マリコさん、移動されるんですか?」
取材班の責任者だという先ほどの男が駆け寄って来た。
「はい、洛北医大で解剖に立ち会います」
「解剖!いいですね…。おい!すぐに大学へ取材許可を取れ!」
男は部下へ怒鳴る。
「では、マリコさん。我々の車で送ります。道中、解剖について詳しくレクチャーをお願いします」
男は、さあ!と言わんばかりにマリコの手荷物を持ち上げようとした。
しかし、スッと一瞬早く別の手が伸び、それを奪い去った。
「榊、行くぞ」
「あの!刑事さんですよね?マリコさんは我々が大学までお送りします。途中、取材もしたいので……」
土門は男を振り返り、足を止める。
「…………榊?」
どうする?と土門は目で問いかける。
二人の視線が一瞬交錯する。
土門は再び歩き出した。
「ごめんなさい。解剖の説明は後でしますね。……土門さん、待って!」
マリコは白衣を翻して、土門の後を追う。
名前を呼ばれた土門が振り返る。
小走りに向かって来るマリコに微笑し、さらにその奥で悔しそうな表情の男に目を向ける。
唾を吐き捨てるその男を、土門はすぅーと細めた目でほんの一瞬睨み付けた。
「ひっ………」
男は金縛りに遭ったかのように、その場を動けなかった。
さぁーと音を立てて血の気が引いていくのを、身をもって体験することになった。
――――― 手を出すな。
土門の背中から陽炎のように立ち上る迫力に、その場に居合わせた全員が道を譲る。
「土門さん?何か……怒ってる?」
「いや?何の話だ?」
当の本人だけは、何も気づかず無邪気にたずねる。
ようやく追い付いたマリコの背に触れ、土門はマリコの姿を隠すように車へと誘導して行った。
『触らぬ神に祟りなし』の一コマである。
fin.
■■■ どもマリに、一コマな質問…など(笑) ■■■
*管…わたくし、管理人でーす(^^)/
(マ)あ、土門さん。テレビ始まったわよ
『密着!警察24時』
(マ)あら?放送って意外とカットされるのね~。あんなに長い時間取材してたのに……
(土)そうなのか?
土門の眉がピクリと持ち上がる。
(マ)ええ。出勤風景とか、ランチの様子とか…。日常も取材させてください、って言うから……。そういえば、一度だけうたた寝してるところを見つかっちゃったの……
(土)💢💢💢!!!
あの男……もう少し懲らしめておくべきだったと、土門は後悔した。
(土)榊!
(マ)なあに?
(土)お前も問題だぞ!?
(マ)え?何のこと?
(土)無防備に寝顔を晒すな!
(マ)あ…うん。いい歳して恥ずかしいわよね……
マリコは両手で染まる頬を包む。
(土)そうじゃなくてだな……
ボソボソっと耳元で土門が囁いた言葉に、マリコはさらに顔を赤らめる。
(管)ふっふっふっ。今日の撮れ高はなかなか……(  ̄▽ ̄)♥
こうして、管理人の『密着!どもマリ24時』は日々増えていくのであった。
ただし、公開日は未定である。