「すみません、榊さん。こんなことお願いしてしまって……」
「私は大丈夫よ。それより、同期の子、具合は大丈夫なの？」
「ええ。もうしばらくすれば戻ると思うんですが………」

三月三日のひな祭り。
京都府警ではポリスまろんとポリスみやこの着ぐるみが雛人形に扮し、子供向けのイベントを行っていた。

しかし、ポリスみやこに入る予定の婦人警官が腹痛を訴え、医務室へ薬を貰いに行ってしまったのだ。
その間のピンチヒッターとして、たまたま近くを通りかかったマリコが頼まれることとなった。

「イベントに参加してくれた子供たちに、このグッズを配ればいいのね？」
「はい。あと写真撮影もお願いします」
「分かったわ」

マリコはポスッとポリスみやこの頭を被ると、少しよろめきながら会場へ向かった。

土門が所轄から戻ると、府警の入り口付近に子供たちが集まっていた。
ポリスまろんとポリスみやこの着ぐるみと写真撮影をしたり、記念品を貰ったりしている。

『そういえば、今日は雛祭りイベントがあったな…』と、土門はその光景を横目に通り過ぎようとした。
しかし、予想に反してその足を止めた。

土門の視線の先にはカメラをもった中年の男がいた。
先程からずっとポリスみやこの側に寄り添っている。
さらによく見ると、時おり着ぐるみを撫でながら、繋ぎ目に手をいれようとしているようだ。
そのたびにポリスみやこが少しずつ男から離れようとするが、子供たちに捕まり、結局また男が近づく。

「土門さん！」
広報課の婦人警官が土門を見つけて走り寄ってきた。
「なんだ？」
「あのカメラ男、何とかしてもらえませんか？何度注意してもポリスみやこにくっついて離れないんです！あいつ、いつもポリスみやこ担当の同期にストーカー紛いの事していて……」
「今日もだろう？さっきも中に手を入れようとしてたぞ……」
「本当ですか？どうしよう……。榊さん、大丈夫かな？」

「なに！？」
キラーンと土門の目が光る。

「どういうことだ？」
地を這うような重低音に、婦人警官がおののく。

「あ、あの……。同期がお腹が痛いというので、医務室に薬を貰いに行っている間だけ榊さんに入ってもらって……。え？土門さん？？」

みなまで聞く前に、目をつり上げた土門はポリスみやこに近づくと、むんずとカメラ男の首根っこを掴む。
そしてそのまま、ずるずると外まで引きずり出した。

マリコはその様子を着ぐるみの中から覗き見ていた。
つきまとう男がいなくなったことに、ほっとしたが、何だか様子がおかしい。
土門に連れ出された男は、しばらく何事か土門と話していたようだが、突然顔面を蒼白にして後ずさると…一目散に逃げ出した。
「？？？」




その夜、土門のマンションにやって来たマリコは、その時の事を土門にたずねた。
しかし、なんの事だ？と土門はしらを切る。

「私見てたのよ、土門さんが………むぐっ！」
いつまでも閉じないマリコの口に、土門は何かを放りこんだ。
サクッと軽い歯触りだが、砂糖の優しい味がする。

「……甘い」
「雛あられだ。広報の婦警に貰った」
「うん！美味しいわね。土門さん、もっとくれない？」
「いいぞ。ほら、あーんしろ」
「………自分で食べられます！」
雛あられの袋を奪おうとするマリコの手をかわし、土門は袋を高く持ち上げる。

「土門さんってば！」
『ねぇ……』と伸ばすマリコの手を土門は捕まえる。
「俺の分はないのか？」
「え？」
「俺にもよこせ……」
そう言うと、土門は一足先に甘いものをいただいた。

「雛あられと、どっちが甘いだろうな？」
そうい言いながら眦を下げて笑う土門に、マリコの頬は雛あられと同じ桜色に染まるのだった。


雛祭りの一コマである。



fin.



■■■　どもマリに、一コマな質問　■■■
＊管…わたくし、管理人でーす(^^)/


♪ピンポーン
……………しーん。

（管）お留守ですかね？せっかく不○家のケーキ持って来たのに…

『…………』

（管）あれ？何か聞こえますね……


管理人、『スケスケ望遠鏡』を取り出す。
――― 説明しよう！
『スケスケ望遠鏡』とは、透視と集音を兼ねた秘密道具である。


（管）さすがにプライバシー保護のため、音だけにしとこーっと！どれどれ……？

（土）『お前はいつも余計なことに首を突っ込むな！』
（マ）『何よ！困ってたんだもの。少しの間だったし、手伝って何が悪いの？』
（土）『結局、変な男に付きまとわれることになっただろうがっ！』
（マ）『それは私じゃなくて婦警さんじゃないの！』

（管）ひえ～！ケンカしてますね……

（土）『とにかく、心配かけるな……』
（マ）『だって……』

（管）おや？仲直りかな？(笑)

（マ）『ちょ、ちょっと、土門さん！』
（土）『なんだ？』
（マ）『どこ触ってるのよ！』
（土）『ここだな』
（マ）『そうじゃなくて！何してるのっ！』
（土）『何って……ナニだ（ニヤリ）』
（マ）『もぉ！土門さ…………！！』

（管）あ～、またしても。仲のおよろしいことで…
♪灯りを消しましょ、寝室の～










ちなみに…。
ストーカー男に土門さんが言った言葉は。
「ケ〇の“ピー！”から腕“ピー！”して、奥〇ガタガタ言わしてやる！」
だそうです。
（一部不適切な表現を含むため、自主規制させていただきます(￣▽￣)）