お嬢の事件簿





関空へ降り立った聖子は、その足ですぐに京都府警へ向かった。
捜査協力の件は、すでに上の者の間で了承済みのはずだ。
聖子は府警の受付で来訪の目的を告げ、取り次ぎを待っていた。


朝一番で検察への用事を済ませ、府警へ戻ってきた蒲原は、受付に見慣れた背中を見つけた。
「風丘先生」
背後から声をかけるが、その人は振り向くどころか何も反応しない。
聞こえなかったか?と、もう一度、名前を呼んだ。
しかし反応は変わらない。
蒲原は受付に向かい、背後からその人の肩を叩いた。
「風丘先生?」


「え?」
振り向いた聖子の背後には見慣れない男性が立っていた。
「あの、どちらさま?」
「はっ?風丘先生??」
「風丘?どなたかと勘違いしていませんか?私はこういう者です」
聖子は目の前の男性へ警察手帳を見せた。

「五条聖子……警部補!?」
し、失礼しました!と蒲原は姿勢を正す。

「あの……」
そんな様子の二人へ、受付の婦警がおずおずと声をかけた。
「お客様、そちらの蒲原刑事は捜査一課所属ですが?」
「えっ?そうなの?ラッキーだわ」
聖子は改めて蒲原の顔を見る。
「何か?」
「北海道警捜査一課の五条です。こちらで起きた道警警察官殺害の件でやって参りました」
「道警の!?そうでしたか…。では捜査本部へご案内します。こちらへ」
合点のいった蒲原は聖子を伴い歩き出した。



「風丘先生」
「?」
「そんなに私に似ているんですか?」
「失礼しました……」
蒲原はばつが悪そうに頭を下げる。

「怒ってるわけじゃないですよ。興味があったから聞いてるんです」
「はぁ…。似てます……というか瓜二つです」
「へぇー。先生って言ってましたけど、弁護士さんとか?」
「いいえ。監察医の先生です」
「お医者さんかぁ。会ってみたいなぁ」
「科捜研に時々いらっしゃるので、会えるかもしれませんよ?」
「そうなんですね。…ところで、今の時点で事件について分かっていることを教えてもらえますか?」



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