お嬢の事件簿
京都駅構内の公衆トイレで男性の変死体が発見されたのは、早朝のことだった。
始発前に見回りをしていた駅員が発見し、通報した。
所持品から被害者の身元はすぐに判明したのだが…。
被害者は現職の北海道警の警察官だった。
すぐに京都府警から北海道警へ協力要請がなされた。
そこで白羽の矢が立ったのが、捜査一課の五条聖子警部補だった。
聖子は非番を利用して、婚約者の吉村大地と川辺へバーベキューにやってきていた。
北海道の海の幸、山の幸が次々と鉄板の上で良い香りを漂わせる。
「聖子、飯にしないか?」
大地が呼びかけると、待ってました!とばかりに聖子は釣りざおを椅子に立てかけ、大地のもとへ戻ってきた。
「う~ん、良い香り!」
「ほら」
大地が、食べ頃のホタテを聖子の皿に乗せる。
醤油をひとたれして、聖子はホタテにかじりつこうとした。
「いただきま……」
プルプル……と、テーブルのスマホが着信を知らせる。
見れば、相手は指導員の片桐警部だった。
無視できない相手に、仕方なく聖子は電話をうけた。
「はい、五条です……」
片桐の電話から1時間後、聖子の姿は北海道警にあった。
慌ただしい足音と共に、片桐が現れる。
「お嬢、非番のところすまない。すぐに京都へ飛んでくれないか?」
”五条”だから”お嬢”といつもは揶揄う片桐が、いつになく焦った様子を見せていた。
「京都?何があったんですか?」
「道警の
「!」
「応援は後から送る。すまないが、頼むぞ!」
「了解しました!」
聖子も表情を引き締めると、さっそく準備に取りかかった。
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