冬の晴れた日に



休暇を利用してアメリカから一時帰国していたマリコは、半分を実家で過ごし、残りを京都で過ごすために懐かしい地に戻ってきた。
横浜に比べると京都は冷え込みが厳しい。今も曇り空からは時折、ちらちらと白いものが舞っている。

待ち合わせのセルフカフェでマリコが本を読んでいると、ふっと光が遮られた。
顔を上げると、そこには自分を京都へ呼んだ人が立っていた。

「待たせたか?」

「ううん。そんなことない。久しぶりね、土門さん」

「ああ」

返事をしながら向かいの椅子に座る土門の顔は、最後に会ったときよりシャープになったようだ。

「少しやつれたみたい」

「お前の方こそ、ちゃんと食ってるのか?」

そう聞くと、土門はニット越しにマリコの二の腕に触れた。
マリコは不意打ちにドキリとする。

「相変わらず細いな。もう少しふっくらしたほうがいいぞ」

「別に。誰にも迷惑かけてないでしょ」

心臓の鼓動を誤魔化すために、マリコはふいと横を向く。

「いや。俺にかけてる」

「どういう意味?」

思わず顔を戻したマリコが見たのは、優しげに苦笑する表情だった。

胸が締めつけられる。
今まで毎日のように見ていた表情、向けられていた視線が、こんなに自分を戸惑わせるなんて思ってもみなかった。

どうしてこんなに大切なものを手放すことができたんだろう?

マリコは京都を離れてから、目の前の人の存在の大きさを痛感していた。

「ふっくらしてるほうが、触り心地がいいからな」

からかわれていると気づき、マリコは頬を膨らませる。
完全に土門のペースだ。

「怒るなよ。多分はしゃいでいるんだ」

「え?土門さんが?」

「悪いか?これでもお前に会えて、気分が舞い上がってる」

『こんなことを言う人だったかしら?』

土門と会ってから、マリコの心臓のボルテージは上がりっぱなしだ。
今からこんな状態で、残りの休暇中、自分の心臓はもつのだろうか……。


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