たかが3音。されど3音。
土門はデスクに捜査資料を全て広げると、見落としていることがないか、改めて事件を整理してみた。
被害者は
「…………」
最後までしっくりこないことが一つ。
それは、やはりマリコのペンケースのことだ。
いつ、マリコの手から離れたのか?
いつ、被害者の手に渡ったのか?
「…………いつ?」
土門は重要なことを思い出した。
それは一昨日の昼間、屋上でマリコと別件の捜査について話をしていたときのことだ。
マリコがいつも胸ポケットに差しているペンの本体を左右に何度も回していた。
「壊れたのか?」
「ライトの電池が切れたみたいね」
そのペンは先端に小型ライトが仕込まれており、暗闇の中でも文字がかける仕様になっていた。
「明日にでも電池を替えてもらうわ」
ガタン!
土門が勢いよく立ち上がる。
周囲の捜査員たちの視線が土門に集まる。
本人はそんなことは気にも止めず、捜査一課を飛び出して行った。
「失礼します!遺留品は?」
ダッシュで科捜研へ現れた土門は、挨拶もそこそこに亜美へ詰め寄る。
「え?え?」
「遺留品だ!どこにある?」
「遺留品ならここですよ」
落ち着いた声で、宇佐見は青いボックスを土門の目の前に置いた。
「ありがとうございます」
土門は箱の中を漁ると、目当てのペンを見つけた。
そして本体を右に回した。
「……ついた」
「土門さん、そのペンが何か?」
日野も鑑定室から出てきた。
「榊はこのペンのライトが電池切れだから、昨日、交換へ行くと言っていました。そして今、ライトはついている……」
「つまり、電池交換を終えた後でこのペンは被害者の手に渡った?』
「そうなります。所長。おそらく榊が電池交換へ立ち寄ったのは○○百貨店です。以前もそこで交換してもらっているはずです。すぐに防犯カメラの映像を取り寄せます」
「わかりました。みんな解析の準備を!」
「はい!」
にわかに科捜研が活気づく。
もしかすると、マリコの無実を証明できるかもしれないのだ。
「映像、持ってきました!」
蒲原はCDを抱え、科捜研へやってきた。
土門を含め、待っていた全員が一斉に解析に取りかかる。
「あれ?縣さんは?」
今は一人でも多く手がほしいのだ。
「縣くんは別の事件の鑑定だよ。元々彼はそっちの担当なんだ。こっちはヘルプ」
「そうでしたか」
「あ。見つけました!」
亜美が手を上げる。
「マリコさんです」
モニタのマリコはちょうど百貨店に入ったところだ。時刻は18時40分。
「榊が科捜研を出たのは?」
君嶋がログを確認する。
「18時20分です」
映像を追い続けると、その足でマリコは文具の階へ向かった。店員と何事か会話を交わし、その場を去る。これが18時55分のことだ。
その後、マリコは再びエスカレーターで下の階へと向かう。
「帰るんでしょうか?」
しかしマリコは1階を過ぎ、地下へ向かう。
「電池交換が終わるまで、待っているのかもしれんな。早送りしてくれ」
「はい」
マリコはデパ地下を巡り、パンと惣菜をいくつか買い込む。30分ほど経っただろうか。マリコは腕時計を確認すると、エレベーターへ向かった。
エレベーターにもカメラはついている。マリコは文具の階で降りた。
再び定員と会話をした後、紙袋を受け取り、マリコは下りエスカレーターに乗った。土門がモニタを確認すると、時刻は19時40分だった。
そして1階に着くと、マリコは百貨店を出た。
「このあとの榊の足取りを追えるところまで追ってください」
「わかりました。土門さんは?」
「この店員に話を聞いてきます!」