たかが3音。されど3音。
マリコの拉致現場から採取した微物の鑑定や、防犯カメラ映像の解析についての報告が出揃った頃、縣が顔を見せた。
「遅れてすみません。別件で捜査会議に呼ばれていました」
縣はこの場にマリコが居るのを見ると、少し驚いたようだ。
「榊さん、もう復帰されたんですか?」
「ええ。怪我もないし、退院してそのまま戻ってきたの」
「そうですか。でもあまり無理はしないほうがいいですよ。及ばずながら、私も手伝わせていただいてますから」
「ありがとうございます」
「それで、榊さんの監禁場所から何か手がかりは見つかりましたか?」
「いえ。最近付いたと思われる指紋やゲソコンは、マリコさんのもの以外ありませんでした。毛髪の類も見つかっていません」
「そうですか」
縣は宇佐見の返事を特に残念そうでもなく、淡々と聞いている。
「そうなると、殺人事件の方から犯人を見つけ出すしかありませんね」
「それが、そうとも限らないの」
「え?それはどういう意味ですか?」
「まだ鑑定中だから。結果が出たら縣さんにもお伝えしますね」
「わ、わかりました」
「あ、それと縣くん」
「はい」
日野に呼ばれ、縣は振り返る。
「君はもとの仕事へ戻ってもらって構わないから」
「え?」
「こっちを手伝ってもらってしまったからね。担当していた事件……まだ鑑定途中のものもあるでしょ?ほら、何かの培養も途中だって話してたじゃない」
「しかし……」
「あとはマリコくんがいるから、こちらは問題ないよ」
「…………そうですか。わかりました」
ちらりとマリコを見ると、縣は自分の研究室へ戻っていった。
「マリコくん。これでよかったのかい?」
「所長、ありがとうございます。みんな、見てほしいものがあるの……」
マリコの号令に、改めて宇佐見、君嶋、亜美がマリコの手元に集中する。
「まず、この映像なんだけれど……」
そこには、京都医科歯科大学の防犯カメラ映像が映し出されていた。