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「マリコさん!」
「まあ、泰乃さん!」
再会は突然に。
この日、カフェで土門少尉を待っていたマリコは、偶然、女学校の後輩に再会した。
吉崎泰乃は物静かだが、聡明な女性だった。出会って以来、マリコが卒業するまで慕ってくれていた。マリコもまた、何かと目をかけていた後輩だった。それでも女学校卒業後は段々と疎遠になってしまっていた。
「マリコさん、お元気でしたか?」
「ええ。泰乃さんも元気そうでよかったわ」
「マリコさん。先ごろ、ご結婚されたそうですね。おめでとうございます」
「ありがとう。でも誰に聞いたの?」
「皆、知っていますよ。マリコさんは女学校代から憧れの的でしたもの」
「まさか…」
全く信じていない様子に泰乃は苦笑した。
実にマリコらしい。
この美しく頭脳明晰な女性は、自分の魅力には無頓着なのだ。
「泰乃さんはどうしているの?」
「私も縁あって、昨年結婚しました」
「そう!おめでとう」
「ありがとうございま………………」
「泰乃さん?」
泰乃はうっと呻くと、ハンカチで口元を押さえ苦しそうに息をしている。
「泰乃さん、大丈夫?人を呼びましょうか?」
「だ、大丈夫です。少しすれば落ち着きますから」
「でも………」
泰乃は静かに自分のお腹を撫でた。
「もしかして?」
「はい」
「まあ!重ねておめでとう。あ、でも本当に大丈夫?」
「はい。もうすぐ迎えが来ますから」
泰乃は窓の外を確認すると、ゆっくり立ち上がった。
「泰乃さん?」
「主人の車が着いたようなので帰りますね。あの、マリコさん。今度お時間を作ってくれませんか?」
「ええ。いいわよ」
「ゆっくりお話したいです」
「私も」
「今日はお会いできて嬉しかったです。また連絡しますね」
「お大事にね」
「はい」
泰乃が店を出ると、背広姿の男性が駆け寄ってきた。ご主人なのだろう。泰乃が彼に寄り添うと、二人は並んで車へ向った。
翌日、早速マリコのもとへ泰乃から電話が掛かってきた。二人は約束通り、次の休みに会うことにした。
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